◇第95回◇
小泉政治(公約)の中間検証(T)
小泉内閣が発足して、今年4月で満4年を迎える。
「聖域なき構造改革」や「規制緩和」をはじめとする国民期待の公約を掲げ、自民党をぶっ潰してでもやると言い切った小泉さんは、国民の圧倒的支持を集めて総理大臣に就任した。私も期待した一人だった。
4年間あれば相当なことができる。この辺で期待された小泉さんの政治姿勢や公約の進捗状況を検証してみたい。
総理就任後最初にめぐってきたのが、8月15日の靖国神社参拝の公約だった。
靖国神社参拝公約に国民が期待したのは、予想される中国や韓国の内政干渉的な反発を 毅然として撥ね退け、公約通り 8月15日に参拝してくれることだった。
ところが、中国や韓国が異議を唱えだすと、参拝日を8月13日に変更した。翌2002年は4月21日(春季例大祭)に、2003年は1月14日に、2004年は元旦に参拝日を変更している。8月15日参拝の公約は一度も実現していない。
中国の抗議に対して小泉さんは「戦没者の供養と不戦、平和のための誓いを込めて参拝するもの」と弁解するが 相手は納得しない。
小泉さんは、何故はっきり内政干渉だと言わないのだろうか。先方があくまで内政干渉を止めないなら、こちらも言いたいことは沢山ある。場合によっては、中国の誤った歴史認識や反日教育についても抗議すべきだ。
参拝日を変える等の姑息な手段や曖昧な態度は、相手方に いつまでも外交カードを与え続けることになる。
靖国参拝に中国や韓国が抗議することは、事前に分っていたはずだ。外国の理不尽な内政干渉に毅然たる態度が取れないのであれば、最初から靖国神社参拝を公約にすべきではない。
このような小泉さんの曖昧な姿勢は、外交に限らず、内政問題にも随所に見受けられる。
「聖域なき構造改革」「構造改革なくして景気回復なし」という言葉は、当初 国民に大いに受けた。
しかし、これまでに どんな構造改革がなされたのだろう。見るべきものは ほとんどない。
あれだけ注目を集めた道路公団も、今年度中には 民営化されることにはなったが、民営化とは名ばかりで、結果的には族議員達の思惑通りになってしまった。
不採算道路建設に対する歯止めの役割も期待できなくなる等、民営化に期待された構造改革には程遠く、骨抜きになってしまった。
このため、道路公団民営化推進委員会では 猪瀬直樹、大宅映子両氏以外の委員は、嫌気がさして辞めてしまった。
要するに、族議員や官僚の抵抗がある構造改革は、全く実現していないということだ。
構造改革でも 族議員や官僚の抵抗がない民間の不良債権処理には、政府は随分力を入れた。
特に銀行への公的資金の投入に当たっては、経営者の責任を問うという厳しいものであった。
政府の民間部門(銀行等)の不良債権問題への介入が、果たして景気回復に役立ったかどうか 甚だ疑問だと思う。
むしろ不良債権処理の名のもとに行われた民間への介入は、景気回復の脚を引張った面が多かったのではないかと思っている。
一時銀行の貸し渋りが問題になったが、これなどは 明らかに政府の金融政策がもたらしたもので、銀行が責めらる筋合いのものではない。
昨年から景気が多少よくなってきたが、これは民間の企業努力と好調な中国経済等の外的要因によるものであって、政府の経済政策によるものでないことだけは確かだ。
産業再生機構の制度にも、賛同できない。表現は悪いが、特定の危ない企業を国が乗っ取って、税金や権限を使って再生して売り払うというもので 政府の行き過ぎた介入は、民間の経営努力や意欲を阻害し、好ましくない。また、官僚のポストを増設するだけだし、税金の無駄使いだ。
要するに民間企業は、自らの生き残りを賭けて懸命に経営努力をするのだから、政府はあまり介入すべきではない。
民間企業では、不況克服のため、厳しいリストラ (人員整理や賃金引下げ) を実施してきたのに、公務員の人員削減や給与引下げの話は聞かない。公的部門の不祥事が報じられても、責任は誰も取らない。
国民が求めている構造改革とは、民間部門に対するものではない。政府、地方自治体等の親方日の丸的な公的部門 (含特殊法人) の改革、即ち行政改革こそが求められている。
特殊法人の不良債権や郵政事業の不良債権の実態がどうなっているのかさえ 国民には明らかにされていない。
行政改革については、族議員や官僚の既得権擁護の抵抗の前に 小泉さんは手も足も出ないようだ。自民党をぶっ潰してでもやると言った当初の意気込みは何処へ行ったのだろう。
小泉さん自身が、本当に必要な構造改革とは何かということを理解しているのだろうか。それとも「聖域なき構造改革」とは初めからジェスチヤーだったのか。
本当に必要な構造改革は全く実現していない。
小泉さんが声高に叫んだ規制改革(緩和)も、見るべきものはない。
例えば、郵便事業の公社化に伴い規制を緩和すると言いながら、封書やハガキの信書便の集配は、信書の秘密を理由に民間宅配業者には 厳しい規制を設けて 事実上認めなかった。これは、公社の郵便事業を守るため以外の何ものでもでもない。
信書の秘密は 郵便局が守れて、民間宅配業者が守れないと言う理屈はない。
民間業者にも信書便の取扱を自由に認めれば、創意工夫と企業努力で効率的でよりよいサービスが生れるはずだ。
宅配業者にもやらせてみればよい、その結果、郵便局がいいのか、宅配業者がいいのか、それはユーザー(国民)が選択する。
これは一例に過ぎないが、族議員や官僚の既得権や利権に影響が及ぶ規制緩和は実現できない。逆に既得権や利権を守るために規制を強化する傾向は、以前と少しも変わっていない。
これまでのところ、小泉さんの規制改革(緩和)は、掛け声だけだったと言わざるを得ない。(2005.02.01)
次回は(第96回)
「小泉政治(公約)の中間検証(U)」(2005.02.15)
【出来事】
- 1月18日 国連防災世界会議開幕 於神戸(22日まで)
- 1月20日(日本時間21日未明) 米ブッシュ大統領就任式(2期目) 於ワシントンD.C
- 1月21日 第162通常国会召集(会期 6月19日までの150日間)
- 1月23日 大相撲初場所千秋楽 横綱朝青龍が全勝優勝
- 1月24日 北京の日本人学校に 北朝鮮から逃れてきた脱北者8人が韓国への亡命を求めて駆け込む
- 1月26日 最高裁(大法廷)判決 日本国籍を有しないことを理由に東京都が管理職試験の受験を拒否したのは合憲
- 1月30日 イラク国民議会選挙投票日
|