◇第109回◇
郵政民営化で揺れる自民党
去る8月8日、郵政民営化法案は、参院本会議で否決され、廃案になってしまった。
これは野党の反対に加え、与党自民党から造反議員が多数出たからだ。
改革の本丸と位置づけられる郵政民営化法案が否決されたことは、これからの改革路線に大きなブレーキになり、我国の将来に陰を残すことになる。
反対票を投じ、改革に背を向ける政治家に対しては、我国の将来についてどう考えているのか詰問してみたい程だ。
このままだと、郵政民営化は、当分実現不可能になってしまう。
小泉さんの郵政民営化に対する執念は、今始まったものではない。1992年に彼が郵政相に就任した時も、大臣の郵政民営化の考えは、省内で大きな波紋を呼び 反発を招く程だった。
小泉さんは、2001年に自民党総裁に選出され 総理に就任した時も、郵政民営化をはじめとする聖域なき構造改革を強く訴え、国民の圧倒的支持を得た。自民党もその彼を支持した。
2003年9月の自民党総裁選挙でも、郵政民営化等の構造改革を掲げて 圧倒的な支持を得て当選しているし、小泉政権下で行われた国政選挙でも郵政民営化は、党の公約になっている。
郵政民営化が、いよいよ現実味を帯びてくると、郵政族議員らの反発が大きくなった。
自民党総務会で郵政民営化法案は多数決で了承され、久間総務会長が党議拘束が掛かっていると明言しているのに、反対派は全会一致でないので党議拘束は慣例に反し、党議拘束は掛かっていないと勝手に解釈し 叛旗を翻した。
党則に則って 党で決めた方針は、党所属議員 皆が守らなければ政党政治は成り立たない。
郵政民営化法案に反対票を投じた議員達は、反対の理由について色々言っている。
例えば、小泉さんの政治手法が悪い。やり方が民主的でない。委員会で親切、丁寧な説明がなかった。否決なら解散だと脅しをかけるやり方は強権政治だから賛成できない…等々である。
改革に正面から反対と言い切れる造反議員は居なかった。民営化法案に反対票を投じながら、堂々と郵政民営化自体に反対だと言える議員も少なかった。
改革(含、郵政民営化)に反対では、今や世間に通らないから、色々な反対の理由作って 誤魔化しているに過ぎない。
大部分の造反議員は、郵政民営化自体に反対しているものと見るべきだ。
これは特定郵便局との癒着構造(議員から見れば集票マシン)によるもので、身分が安定し 恵まれている公務員の地位を守りたいという郵政職員側(含 特定郵便局)の利益代弁に過ぎない。
政治に携わる国会議員たるものは、あくまでも政策や法案の中身を問題にすべきだ。それが、国家、国民のためになるか、ならないかで判断すべきことは当然だ。
法案は、読めば理解できるはずだ。小泉さんの政治手法が悪いからとか、説明が不親切、やり方が民主的でないから等と言うのは言いがかりだ。
それは、あいつは顔付が悪いから、あいつには反対する、あいつは言い方が悪いから、あいつの言うことには 全て反対すると言うのと同じだ。そんな考え方の人は、国会議員としては失格だ。
小泉さんのやり方が非民主的だと言うが、これはリーダーシップの発揮と表裏一体の問題だ。
千差万別の意見を一つ一つ聞いていたのでは、何もできない。
否決なら解散だと脅しをかけたと言うが、これは認識が甘いし、総理大臣の憲法上の権限を良く理解していない。
先に述べたように、小泉さんの郵政民営化に対する熱意や執念を甘く見ていた。
郵政民営化法案が否決されたら、国会(衆院)を解散するかもしれないということは、誰でも予想できることだ。否決すれば解散だと脅されたと言うが、それを脅しと受取る方がどうかしている。
郵政法案が衆院で可決された時、造反議員亀井静香氏は、今度は参院で否決して 小泉さんをノックアウトすると言い切った。所属党の方針に堂々と叛旗を翻す程の信念を貫くなら、除名覚悟で、いや離党してやるべきだ。
参院が否決したのに、可決した衆院を解散するのは、理不尽だという意見がある。
憲法上総理大臣は、いつでも衆議院を解散できることになっているのだから、解散は法的に問題はない。
衆 参で意見が違ったこと、また これまでの経緯(郵政民営化は国民の支持を得てきたこと、与党自民党の公約になっていること等)に照らしても、ここで郵政民営化について民意を問うことは良い方法だ。
衆院で可決した重要案件を参院が否決して廃案にすることの是非、今回は参院の在り方にも一石を投ずることになった。(憲法上 国会は衆院優先の考え方が採られている)
今度の総選挙(9月11日投票)で、自民党は郵政民営化に賛成する者だけを公認候補とし、郵政民営化の是非を国民に問う選挙だと位地づけ、自民、公明で過半数獲得を目ざしている。
自民党は衆院選の政権公約(マニフェスト)に再度郵政民営化を掲げ、自公で過半数が取れたら、国会に再提出して郵政法案の成立を目ざす方針だ。
造反した参院議員も、総選挙の結果、郵政民営化が国民に支持されたとなれば、反対はできなくなるだろう。
自民党の造反議員達は、小泉さんを甘く見ていたことは確かだ。
造反者達は内心では「こんなはずではなかった」と後悔している者が多いに違いない。
去る8月17日、造反議員の綿貫民輔氏や亀井静香氏等5人は、新党「国民新党」を旗上げした。(代表 綿貫民輔、幹事長 亀井久興)
また、8月21日には、造反議員の 小林興起氏や荒井広幸氏ら4人が田中康夫長野県知事を担いで新党「新党日本」を旗上げした。(代表 田中康夫 代表代行 小林興起)
これは、選挙対策のために作られたもので、政党としての意義も価値もない。世間では選挙互助会だと言っている。
小泉さんは、郵政民営化法案を通すまでは と低姿勢を貫いてきたが、否決された時点から、攻守ところを変えた。
造反議員に対して、これ程強硬な姿勢を取るとは、予想しなかった。
しかし、良く考えてみると、小泉さんの一見強硬な措置は、極めて当然である。
戦争に例えれば、味方の一部が寝返って、敵と一緒になって攻撃してくるのだから、軍法会議では銃殺刑ものだ。除名されないだけ まだ ましだとも言える。
現時点(8月31日)では、郵政民営化を目ざす自民党が優勢で、自民 公明が過半数を制する可能性が強いとマスコミは、予想している。
しかし、9月11日の選挙結果については、予断を許さない。自民 公明が、過半数割れになったら小泉政権は終焉を迎える。
いづれにしても 今回の解散劇が、自民党のぬるま湯的性格に一石を投じたことは間違いない。
仮に自民党が敗北しても、長い目で見れば、一時野に下ることは、自民党の旧態依然たる体質に改革をもたらし、新生自民党に脱皮する好機会になるかもしれない。
小泉さんが、郵政民営化の実現という政治信念を貫き、最後には毅然たる姿勢を示したことが成功するか、或いは公約?通り 自民党をぶっ潰す結果になるか。今回の小泉さんの評価は、歴史が判断するだろう。
(2005.09.01)
次回は(第110回)
「第44回総選挙」(2005.09.15)
【出来事】
- 8月16日 東北地方で強い地震(宮城県南部で震度6強)
- 8月17日 自民党造反議員等5名で「国民新党」旗上げ △代表 綿貫民輔(衆) △幹事長 亀井久興(衆)△亀井静香(衆)△長谷川憲正(参)△田村秀昭(参民主党離脱)
- 8月18日 元衆院議員鈴木宗男氏 北海道地域政党「新党大地」を結成
- 8月20日 第87回全国高校野球甲子園大会決勝戦 駒大苫小牧(南北海道)が京都外大西(京都)を5対3で破り史上6校目の2連覇 夏連覇は第30回〜第31回(昭和22年〜23年)の小倉(福岡)以来57年ぶりの快挙
- 8月21日 自民党造反議員等5名で「新党日本」旗上げ △代表 田中康夫(長野県知事) △代表代行 小林興起(衆) △滝実(衆) △青山丘(衆) △荒井広幸(参)
- 8月26日 台風11号 早朝千葉市付近に上陸 茨城県南部を通過して太平洋へ
- 8月26日 最大級のハリケーン「カトリーナ」 米フロリダ州南東部を直撃 更に29日には米国南部(メキシコ湾沿岸のルイジアナ州など)に再上陸 ニューオーリンズが壊滅的状況に陥るなど記録的な人的物的被害をもたらす
- 8月30日 第44回総選挙公示(投票日9月11日)
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