◇第111回◇
6カ国協議と拉致問題
去る8月8日から中断していた北朝鮮核開発をめぐる第4回6カ国協議が、9月13日に再開され、9月19日 土壇場でようやく合意に達し、共同声明を採択した。
〈共同声明の骨子〉
- 6者協議の目標は、朝鮮半島の検証可能な非核化
- 北朝鮮はすべての核兵器および既存の核計画を放棄する。核不拡散条約(NPT)、国際原子力機関(IAEA)の保障措置に早期に復帰することを約束
- 北朝鮮は原子力の平和利用の権利を持つ旨を発言。他国はその発言を尊重する旨を述べ、適当な時期に軽水炉提供問題について議論することで合意
- 米国は朝鮮半島で核兵器を持たず、北朝鮮を核兵器や通常兵器で攻撃、侵略する意図はないことを確認
- 米朝は、相互の主権を尊重し、平和に共存し、関係正常化のための措置をとる
- 日朝は、平壌宣言に従って過去を清算し懸案事項を解決し、国交正常化のための措置をとる
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日、米、韓、露、中の参加各国は、北朝鮮との関係では 夫々立場が違う。
中国、ロシアは、北朝鮮とは同盟、友好関係にあるし、韓国の親北朝鮮派 盧武鉉大統領も、北を同じ民族として同盟国のように考えているようだ。
北朝鮮は、核問題を経済援助を得るための駆け引きに使い、特に核の平和利用を主張し、軽水炉型原発の提供を求めた。
しかし、米国は、1994年の北朝鮮との核の平和利用に関する枠組み合意(朝鮮半島非核化、その見返りとして軽水炉型原発の提供やそれまでの間 50万トン/年の重油の提供等々)を一方的に破棄され、北朝鮮が核兵器開発を始めたという苦い経験があるため、核の平和利用と言えども、北朝鮮を信用して簡単に受け容れられないのは当然である。
これに対し、中、露、韓の親北朝鮮国は、核の平和利用は認めてもよいという考えのようだし、日米とは大きな温度差があった。
今回の共同声明では、核の平和利用の権利を認め、軽水炉型原発提供の道が開けるなど、北朝鮮にとっては 核を武器に したたかな戦術が功を奏した形だ。
6カ国協議の目的が朝鮮半島の非核化にあるならば、5カ国が結束して圧力をかけてでも無条件に核兵器開発を断念させるべきではないか。北朝鮮の見返り要求に沿った形での共同声明は遺憾だし、今後に問題を残す結果になった。
日朝間には、拉致問題がある。
政府は、核、ミサイル、拉致問題を包括的に解決すると言っているが、我国は この基本原則を貫き通せるか。
会議冒頭 我国は、6カ国協議で拉致問題を取り上げるよう提案したが、参加各国(中、露、韓)に、北朝鮮を刺激し 6カ国協議に悪影響を及ぼすとして反対されて、我国代表は これを引っ込めてしまった経緯がある。
我国が拉致問題を如何に重要視しているかを 十分アピールしたとは言えない。
6カ国協議で5カ国が合意に達しても、拉致問題が解決するまでは、我国は態度を留保せざるを得ないと強く主張すべきだった。
共同声明には、参加5カ国のエネルギー支援の意向についても言及しているが、我国としては、拉致問題が解決するまでは、支援には応じられないはずだ。
軽水炉型原発提供の我国の負担分についても同様だ。
北朝鮮は、拉致問題は既に解決済みという態度を堅持している。
北朝鮮の不誠実極まりない姿勢に、我国では経済制裁の世論が高まっている今日、北朝鮮に1円たりとも経済援助をするわけにはいかない。当然だ。
拉致問題の解決とは、一体何だろう。
先ずは真相究明を行うことだと言う。(同時に被害者を帰す)
しかし、金正日が自ら指示して行った国家犯罪の真相を北朝鮮政府が明らかにするはずがない。日本の捜査機関が大挙して北朝鮮に出向き 捜査しない限り不可能であろう。
責任者や犯人の引渡しを求めても、真相がはっきりしなければ これも不可能だ。
損害賠償についても、相手方が逆に経済援助を求めているのだから、北朝鮮がまともな賠償に応じるはずがない。
政府は拉致問題についてどのように考えているのだろうか。政府の考えが国民には伝わってこない。
このまま曖昧にしてしまおうと思っているのではないかと勘ぐりたくなる。
小泉さんは、口癖のように「対話と圧力」と言う。しかし、北朝鮮は対話に応じてこなかった。圧力をかけるどころか、逆に工作員を支援したとみられる朝鮮総連に祝辞のメッセージを送る始末だ。これは、国益に反し、国民の気持を逆撫でする行為だ。
国内で、善良な市民が 外国に誘拐拉致されるという前代未聞の国家犯罪、これ程の主権侵害はない。
北朝鮮による誘拐拉致を未然に防止できなかっただけでなく、今だに被害者を救出できないでいる。国家として この責任をどう考えているのか小泉さんに問うてみたい。
小泉さんは日朝平壌宣言を高く評価しているが、北朝鮮政策の間違いの根源は この日朝平壌宣言にある。
[参考]⇒「日朝平壌宣言」(クリック)
北朝鮮に対するお詫びだとか経済支援等相手方の主張のみが書かれ、金正日が認めたという拉致の「ら」の字も出てこない 一方的な文書であり、屈辱的な文書と言わざるを得ない。
しかも、日朝平壌宣言は、既に北朝鮮によって破られている。
例えば、北朝鮮は今年になってからも、核開発を進めていると宣言している。また、小泉さんが言うように拉致問題が日朝平壌宣言に書かれているとするならば、拉致問題は解決済みという北朝鮮の一貫した主張は明らかに日朝平壌宣言違反である。
これらのことから見ても、日朝平壌宣言が、北朝鮮によって 一方的に破棄されていることは明白である。
にも拘わらず、小泉さんは、北朝鮮が日朝平壌宣言を守っているので経済制裁はできないと言い、また「お互いに日朝平壌宣言を誠実に履行する努力を続けていく必要がある」等と言い続ける小泉さんは、支離滅裂、何とおめでたい人だろう。
更に小泉さんは、北朝鮮との国交正常化を早期に実現したいようだが、とんでもない話だ。
国交正常化は、我国には何のメリットもない。北朝鮮を利するだけだ。
こんな信用できない国とは 2年や3年で国交正常化をすべきではない。いや、金正日政権下では、国交正常化はあり得ないと言うのが正しいだろう。
今回の6カ国協議の共同声明には、「日朝は 平壌宣言に従って 〜 国交正常化のための措置をとる」と書かれているが、ここにも拉致の「ら」の字も出てこない。これは日朝正常化に固執する小泉さんの意向に沿った内容かもしれないが、国益や国民感情を無視した不適切な内容だ。
私には、横田めぐみさんをはじめ 多くの拉致被害者を見殺しにしたまま、加害者北朝鮮との国交正常化を図る等は、日本国民として到底許せない。
小泉さんは、総理としての国家観に欠け、外交面特に北朝鮮政策は、国民を裏切り失格と言わざるを得ない。
今回の共同声明には、先行き不透明な部分が多い。(特に核廃棄と軽水炉原発提供の時期をめぐっては、大きな火種を残している)
共同声明発表の翌20日には、北朝鮮は、軽水炉の原発提供が先だ、軽水炉原発の提供が行われるまでは、核兵器廃棄に応じないと一方的な発表をしている。盗人猛々しいとはこのことだ。
次回の第5回6カ国協議は、11月上旬に予定されているが、今から激しい対立と紛糾が予想される。
我国も、国交正常化を前提にせず、拉致問題を梃子に 巻き返しを図り、国民の期待に応える強力な外交を展開してもらいたい。
北朝鮮に振り回される6カ国協議は、程々にして、国連に付託して 国際圧力によって北朝鮮の核兵器廃棄を実現するのが本筋だ。
(2005.10.01)
次回は(第112回)
「前原党首と民主党」(2005.10.15)
【出来事】
- 9月17日 民主党代表選挙で前原誠司氏が当選 (前原誠司氏96票 菅直人氏94票 任期は岡田前代表の残存期間2006年9月まで)
- 9月19日 北朝鮮核問題をめぐる6ヵ国協議 合意に達し共同声明を採択
- 9月21日 第163特別国会召集(議長に河野洋平氏 副議長に横路孝弘氏を選出 会期は11月1日までの42日間)
- 9月21日 第3次小泉内閣発足 (全閣僚再任)
- 9月24日 大型ハリケーン「リタ」米南部に上陸 テキサス ルイジアナ両州で約300万人に避難命令
- 9月25日 大相撲秋場所千秋楽 横綱朝青龍が優勝(13勝2敗で並んだ関脇琴欧州を優勝決定戦で下し6連覇達成)
- 9月25日 2005年日本国際博覧会「愛・地球博」(愛知万博) 半年の会期を終えて閉幕 (入場者2,204万9,544人)
- 9月29日 阪神タイガース セ・リーグ優勝決める
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