◇第112回◇
前原党首と民主党
先の総選挙で大敗を喫した民主党では、岡田党首の引責辞任に伴い、9月17日に代表選挙が行われ、前原誠司氏(43)が党首に選出された。
当初、有力者による話合いで党首を決める案も囁かれたが、前原氏が出馬表明をしたため選挙になった。
話合いで決めれば、多分、小沢、菅、鳩山各氏の中から選ばれ、前原氏の線はなかっただろう。
前原氏が立候補して選挙になったことは、大変よかったと思う。
選挙は しこりを残すという意見もあるが(鳩山由紀夫氏)、
話合いで党首を決めれば、密室談合の謗りは免れないし、まあまあ主義に陥りやすい。やはり選挙で はっきりさせた方が、党首の指導力は発揮し易くなる。
選挙では、前原氏、菅氏の一騎打ちになり、僅か2票差とは言え、前原氏が当選したことには大きな意義がある。
党内実力者と言われる小沢氏、鳩山氏、菅氏らは、言わば守旧派で変わり映えがしない、民主党を変革することはできない。
また、鳩山氏を幹事長にしたのも、党内とりまとめ役としては正解だったと思う。
小沢氏は代表代行を断ったし、菅氏も役員就任を断ったようだ。彼らの真意は分らないが、前原氏は、自らの意思で党役員を選任することができたし、党首としてリーダーシップを発揮するためには、むしろ良かったのではないか。
前原氏が打出した政策には、今までの民主党では とても考えられないものがあり、新鮮で好感が持てる。
例えば、
前原氏は、政府が出す重要法案には、ただ反対するのではなく、対案を出すと言っている。反対のための反対では何も得るものはない。対案を出すことによって審議が深まり、国民にも分りやすい。
憲法第9条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】を改正し、同条第2項の「戦力の不保持、交戦権の否認」は削除し、自衛権を明記すべきだと言っている。 参考⇒日本国憲法(クリック)
自衛権には、個別的自衛権、集団的自衛権の区別はなく、一定の範囲内で集団的自衛権も認めるべきだと主張している。
個別的自衛権は有しても、集団的自衛権は認められないとする自公連立政府の非常識な立場に比べると、まことに常識的である。
公務員改革の一環として、公務員の身分保障を廃止し、その代わり、警察、自衛隊等特殊な部署を除いて公務員に労働三権を認めると言う。労働組合 特に官公労とのしがらみを絶つ姿勢を明確にしている。
外交や安全保障については、与党とあまり変わらないではないか、というマスコミの質問に対し、前原氏は、外交や安全保障で政府と大きく対立することは、国民にプラスにはならないと言っていた。見識ある態度だ。
また、前原氏は今次特別国会の代表質問でも、次のように述べている。
国民の利益になることであれば政府・与党に協力する。反対のための反対はしない。
政府・与党の間違った政策、問題先送り、看板倒れの改革には厳しく対峙する。
重要な政策課題には対案を示し、自らが政権与党であればどう対応するかという視点に立って真の改革を競い合う。
いづれも、これまでの民主党では見られない立派な態度表明だ。
今次特別国会で政府再提出の郵政民営化法案に対して、民主党は対案を出し 否決された。
対案の内容は準備不足もあり、十分なものとは言えなかったかもしれないが、対案を出したことは評価すべきだ。
また、民主党が政府案の欠陥を指摘したが、指摘内容には、政府案よりも前向きで建設的な部分もあった。
民主党は、旧社会党から自民党まで さまざまな考え方を持つ人の寄せ集めだと言われてきた。また、労働組合とのしがらみも強い政党だ。
このため、党内では 左にも右にも、労働組合にも、当たり障りのない議論しかできなかった。これでは思い切った政策は打出せない。これが先の総選挙惨敗の大きな要因でもある。
今回、前原新党首は、この雰囲気を打ち破り、自らの考えを大胆に打出した点は 大いに評価したい。
しかし、前原新党首の試練はこれからだ。例えば
憲法第9条改正では、旧社会党系の左派グループからの反発は必至だろう。
前原氏は、厳しい公務員改革を主張しているが、官公労からの強い抵抗が予想される。
現に、去る10月14日、民主党は 国家公務員の給与引き下げにつながる国家公務員法改正案を衆院に提出したが、党内には 批判や反対意見が相次ぎ、これからの党運営にも前途多難を思わせる。
これらにどう対処し、所信を実現していくか、簡単にはいかないだろう。
小沢氏や菅氏が、前原新体制にどの程度協力するかも未知数だ。
前原新党首は、民主党を闘う政党にしたいと言っている。それも結構だが、同時に党内でも闘う前原になってもらいたいものだ。
小泉さんではないが、前原改革への抵抗勢力には、民主党をぶっ壊してでもやるという強い気構えが必要だろう。
その姿が国民に見えてきた時に、民主党は生まれ変わり、政権を獲得できる。
(2005.10.15)
次回は(第113回)
「民 意」(2005.11.01)
【出来事】
- 10月1日 インドネシア バリ島で同時自爆爆破テロ 23人が死亡(内自爆テロ犯3名) 負傷者130人以上 (日本人1名死亡 4名負傷)
- 10月8日 パキスタン北部でM7.7の強い地震 被害はインド アフガニスタンにも及び死者は日本人2人を含む42,000人以上(CNNニュース) 負傷者は51,000人以上の見込み(正確な犠牲者数把握は困難 更に増える見込み)
- 10月11日 政府再提出の郵政民営化関連法案 衆院本会議で可決(賛成338反対138) 参院へ送付
- 10月12日 中国 有人宇宙船「神舟6号」(2人乗り)打ち上げに成功
- 10月13日 TBSの発行済み株式総数の15.46%を取得し(12日現在) 筆頭株主となった楽天が TBSに共同持ち株会社設立による統合を申入れ
- 10月14日 郵政民営化関連法案 参院本会議で可決成立(賛成134票 反対100票)
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