◇第118回◇
財政再建と社会保障費
今、我国の財政再建が喫緊の課題になっている。
国、地方の2005年度末の長期債務残高は774兆円と言われているが、これには「財投債」や「短期国債」も含まれていないし、実は国民の目に晒されない隠れ借金がもっともっとあるらしい。
774兆円を人口で割ってみると、国民1人当たり約610万円借金していることになる。
これでも 国だから持ちこたえているのであって、私企業なら とっくに破産、倒産している。
最近になってようやく財政再建問題が真剣に議論されるようになったのは、遅きに失したとは言え、当然のことだ。
小泉内閣が取り上げる改革は、ほとんどが財政再建に資するものであり、これからは増税も避けて通れない。
我国の将来を考えると、小さな政府、効率的な政府作りのために必要な改革は 確実にやり遂げ、財政再建を達成しなければならない。
国の歳出の中で最も大きいのが、医療、年金、介護等の社会保障費である。
平成18年度一般会計予算政府案で見ると 一般歳出46兆3,660億円の内、社会保障費は20兆5,739億円、一般歳出の実に約44.4%を社会保障費が占めている。
社会保障費は、少子高齢化が進むにつれて著しく伸びてきたし、これからも大幅に伸びていく。
社会保障費の問題が、財政再建の大きなカギを握っていることは間違いない。
高齢化に伴う社会保障費の自然増は致し方ないとか、医療費の引下げは医療の質の低下を招く等と言って、社会保障費にメスを入れることは、これまで憚られてきた。
しかし、実態は、圧力団体や族議員の抵抗と問題の先送り主義に起因している。
医療費(診療報酬)を例にとると、デフレ不況に喘ぐ一般企業が リストラや賃下げをしている時も、診療報酬は ほぼ毎年引上げられていた。これは医師会や厚生族議員が医療の質を保つために必要だと政府に強い圧力をかけてきたからだ。
財源がない時は 薬価引下げ分を、国民に還元せずに、診療報酬本体の引上げに回した程だ。
来年度の政府予算案では、診療報酬を3.16%引き下げることになっている。( 診療報酬本体 1.36%、薬価等 1.8%、合計 3.16% )
診療報酬の僅か1.36%の引下げについてさえ、医師会は 医療の質を低下させるものだと言って猛反対している。これでは まるで国民に対する脅しだ。
また、今後実施予定の高齢者(70〜75才)の患者負担増(1割負担⇒2割負担へ)等にも反対している (1割負担⇒2割負担等は2008年度から)。これは 高齢者の患者減、即ち医師の収入減に繋がるからだ。
自分達の利益だけしか考えない圧力団体医師会が、厚生族議員と結託して政府に圧力をかけてきた。
これが我国の医療保険制度改革の癌であったと言っていいだろう。
一般歳出の半分近くを占める社会保障費にメスを入れることなくして、国の財政再建は考えられない。
社会保障制度も、決して改革の埒外ではあり得ない。
前述の医師会のような考え方を貫けば、医療保険制度は破綻し、崩壊してしまう。それは医師会にとっても自殺行為だ。
将来に亘って持続可能な社会保障制度を構築するためには、徹底した改革が必要である。
超高齢化社会を迎える中で、それには大きな痛みが伴う。保険料のアップや増税で国民負担は増える。医師等関係する人々や企業、団体も痛みを分担しなければならない。
それがいやなら、年金制度や医療保険制度が 財政的に破綻して消滅するのを覚悟すべきだ。(年金制度がなくなれば、各人が老後に備えて蓄えておかねばならない、病気したら医療費は全額自己負担になる)
社会保障費に手をつけることは、福祉の切捨てだなどと言っていたら、我国の社会保障制度は崩壊し、福祉どころではなくなる。
それにしても、少子高齢化も社会保障制度の財政問題も、随分前から分っていたことだ。
事なかれ主義、先送り主義という政治の怠慢が今日の事態をもたらしている。
ここで社会保障制度の改革を 更に先送りすれば、もはや耐えられない程の負担を 将来 国民に強いることになる。(2006.01.15)
次回は(第119回)
「“ほりえもん”逮捕の波紋」(2006.02.01)
【出来事】
- 1月6日未明 仙台市の病院で生後11日の乳児誘拐事件発生(身代金目的) 8日早朝解放され無事保護 容疑者3人を逮捕
- 1月8日 大相撲初場所初日(両国国技館)
- 1月9日 小泉首相トルコ訪問 セゼル大統領 エルドアン首相と会談(10日) 13日帰国
- 1月14日 新潟県等日本海側を中心とする記録的な大雪の被害で 昨年12月以降の死者が17道県で累計90人に達する(雪害は今後更に増加する見込み)
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