◇第125回◇
偽メール問題で露呈した民主党の体質
去る2月16日の衆院予算委員会で、民主党元議員永田寿康氏は、元ライブドア社長堀江貴文氏が自民党の武部幹事長の二男に3,000万円を振込むようメールで指示していたとして 政府 自民党を追及、このメールが事実無根の偽ものであったため、民主党は、国民の信頼を失墜し 執行部が総退陣に追い込まれる等 窮地に陥った。
民主党に大きな危機をもたらし、国会を混乱に陥れた張本人は永田氏だが、ここまで民主党のダメージを大きくしたのは、前原代表(当時)をはじめ 執行部のぶざまな対応である。その裏には 党の欠陥体質がある。
当初 民主党執行部は、永田氏の情報の真偽を十分確かめもせずに 永田氏の言動を党の方針として扱った。
前原代表は、2月22日の党首討論で、メールの信憑性には確証がある、国政調査権を発動して調べよ と強気で総理に迫って更に傷口を深くした。
民主党のメール問題検証チーム報告書によると、前原代表は、既に党首討論前の2月19日頃には メールの信憑性に疑問があることを党内幹部から知らされていたというのに、何故このような言動に出たのか。分っていたけど、成り行き上 致し方なかったのか。そうだとすれば、あまりにも非常識、無責任だ。
行き詰まると永田氏を入院させ(2月23日) 雲隠れさせた。卑怯なやり方だ。
永田氏を党員資格停止6ヶ月間という軽い処分にしたのは、責任が党執行部に及ぶのを避けるためだったのだろう。
自民党は、この噂を事前に察知し、これが事実に反することを 既に調べ上げていたようである。
したがって、永田発言は、小泉首相から「ガセネタ」だと一蹴され、勝負は初めから決まっていた。
本件に対する自民党の反応から、民主党も事実の再確認が必要であることには すぐ気付いたようだ。しかし、対応がまずかった。
民主党が、迅速、的確に対応し、間違いを率直に認め、永田氏を除名処分にして謝罪していたら、問題は片付いていたはずだ。
1ヶ月半も経過した3月31日になって、やっと執行部総退陣、永田氏の議員辞職では最悪のシナリオになってしまった。
しかも、偽メールが 誰によって 何のために作られたのかという肝心な点が闇の中では、決着したとは言えない。
前原氏は、昨年党首就任に際して、政府が出す重要法案には、ただ反対するのではなく 対案を出す等と抱負を述べ、多くの国民が新党首に期待した。
しかし、前原氏の党首在任中、対案を出して政府に迫るという場面はほとんどなかった。
これは、党としての統一した方針や政策を まとめきれなかったからで、左から右までの寄せ集め政党の欠陥を露呈したものだ。
したがって、相変わらず政府与党のあら捜しで、存在をアピールするしかなかった。
勿論、政府の失政を追及することは、野党の大切な任務だ。
しかし、今国会で 当初 民主党が掲げた「4点セット」(ライブドア事件、耐震データ偽装事件、米国産牛肉輸入問題、官製談合事件)では、政府追及の決め手にはなり得ない。
敵失(相手のエラー)頼りでは、いつまで経っても政権獲得はできない。
敵失頼りや敵失探しで墓穴を掘ったのは、今回が初めてではない。
2004年 菅直人党首(当時)が、国民年金保険料未納の閣僚3人を名指しして「未納3兄弟」だと 政府を追及した件は、まだ耳新しい。
この件は、菅氏本人も未納であったことが判明して党首辞任に追い込まれた。後任代表に小沢一郎氏が、決まりかけていたが小沢氏も未納であったため、これまた代表就任を辞退した(結局 岡田氏が就任)。
これは菅氏が自ら蒔いた種であり、軽率、愚かのそしりは免れない。
鳩山由紀夫氏も、ライブドア関係の投資事業組合に 自民党国会議員が関わっていた可能性が極めて濃いと虚偽の発言をして、後日謝罪している。軽率だ。
永田元議員の偽メール事件も、民主党のこのような体質を考えると、起こるべくして起こったと言うべきだろう。
4月11日に発足した民主党の新しい執行部の顔ぶれは、党首が 前原氏から小沢氏に変わったことと、菅氏が代表代行に就任しただけで、鳩山幹事長以下の役員は 概ね再任となった。結局 前原氏を切っただけに終った。
新執行部発足に際し、小沢代表、菅代行、鳩山幹事長らは 異口同音に挙党体制の重要性を強調した。
昨年9月前原誠司氏が菅直人氏を破って党首に就任した時はどうだっただろうか。
前原氏は、小沢氏や菅氏に党首代行や党の要職への就任を要請したが、両人ともあっさり断っている。
前原党首の中国脅威論発言に対して、小沢氏らは それは党の意見ではないと言ったり、今回の偽メール事件で党が苦境に陥っている時でさえ 敢えて傍観者の立場に立つ等、小沢、菅両氏は前原執行部に対して冷淡であり、挙党体制どころか、前原体制追い落しのような印象さえ感じさせた。
小沢氏は、今 党首になって 挙党体制を強調しているが、いかにも白々しい感じしかしない。
小沢氏と菅氏は、政治姿勢や考え方が根本的に違う。今、この二人は、夫々の思惑で親密振りをアピールしているが、いづれ破綻すると見なければならない。
小沢新党首は、政権交代こそが真の構造改革だと言っているが、この発言はナンセンスだ。党の体質や政策が国民に受け容れられる政党になることが先決だ。口先だけで強がりを言っても政権は転がって来ない。
自らの党の改革ができなければ、政権交代どころか党の再建もおぼつかない。小沢党首をはじめ 民主党の議員達は、このことをよく肝に銘じることだ。
去る4月23日の衆院千葉7区補欠選挙で、民主党候補者が僅差で自民党候補者を破った。これは昨年の総選挙で惨敗し、更に偽メール事件で致命的な打撃を受けた民主党に対する同情や最近の自民党の勢いに対するブレーキ心理も働いたのだろう。とりわけ連日マスコミが、小沢民主党再生問題を取り上げた効果は大きかったと思う。
しかし、一補選の結果だけから、民主党が国民の信頼を得たと言うのは早計だ。
民主党が本当に政権を目ざすならば、党としての外交、安全保障、憲法改正等 国の基本方針を明確にし、国会審議の場で具体的な民主党案(対案)を以て 政府 与党と堂々と論戦する姿を国民に見せなければならない。
しかし、民主党の政権与党への道は、まだまだ一向に見えてこない。
(2006.05.01)
次回は(第126回)
「愛国心アレルギー(教育基本法改正問題)」(2006.05.15)
【出来事】
- 4月20日 行政改革推進関連5法案 衆院本会議で可決 参院へ送付
- 4月21〜22日 竹島周辺海域での日本の海洋調査に韓国が反発している問題で日韓外務次官会議(谷内正太郎外務事務次官:韓国外交通商省柳明桓第1次官)於ソウル
韓国は6月にドイツで開催予定の海底名称に関する国際会議で韓国名の提案をしない 日本は今回の海洋調査を中止する 両国の排他的経済水域(EEZ)の境界画定交渉を5月中にも再開することで当面合意
- 4月23日(日本時間24日) 額賀防衛庁長官と米ラムズフェルド国防長官との会談で沖縄の米海兵隊グアム移転経費問題で合意 〔総額102億7000万ドル(約1兆2000億円)の内 日本側が59%60億9000万ドル(約7100億円)を負担〕 於ワシントン
- 4月27日(日本時間28日未明) 横田めぐみさんの母親 早紀江さんらが 米下院国際関係委員会小委員会の公聴会で拉致問題について証言 翌28日(日本時間29日未明)には、ホワイトハウスでブッシュ大統領に面会 拉致問題を訴える
- [参照]⇒【横田早紀江さんの米下院公聴会陳述書】(クリック)
|