◇第137回◇
北朝鮮の核実験
去る10月9日、北朝鮮が核実験を行ったと発表し、国際社会に大きな衝撃が走った。
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が 昨年11月から中断していた中で、北朝鮮は今年7月5日に日本海に向けてのミサイル発射実験を行い、更に 10月3日 外務省声明で 核実験を行うと予告していたが、その6日後にそれが現実のものとなった。
当日 観測された地震波は 核実験にしては微弱なものであったが、米軍機が 大気中から微量の放射性物質を検出し、米国は 核実験が行われたことを公式に確認した。
北朝鮮は核実験は成功したと述べているが、実験が本当に成功したのかどうか、外部からは まだ確認されていない。実験失敗説もある。
北朝鮮の核実験は国際社会の大きな反発を招き、10月14日、国連安全保障理事会は、北朝鮮に対する制裁決議を 全会一致で採択した。
採択に至る過程では、より強い制裁を求める日米と軍事的措置につながる制裁に反対する 中露韓との対立があった。
中国、ロシア、韓国は、制裁によって金正日体制の崩壊だけは、何としても避けたい意向だ。
北朝鮮の政権崩壊は、難民の発生流入等、隣接国に大きな困難をもたらす。また、更に中国には、北朝鮮に投資をしたり、利権を持っている等の理由がある。
結局、制裁決議は妥協案となり、国連憲章7章41条(非軍事的措置)に基づく措置に限定する表現になった。
このため 制裁は 経済制裁に限定され、当初の米国案より かなり 後退したものになった。
参照⇒「北朝鮮制裁決議1718(要旨)」(クリック)
しかし、強制力を持つ国連憲章7章が適用されたこと、中国、ロシアが制裁決議賛成に回り 北朝鮮に大きなインパクトを与えたことは評価すべきだろう。
北朝鮮は、この制裁決議を全面的に拒否すると言明している。北朝鮮の出方次第では、更に厳しい制裁措置(7章42条の軍事的措置等)が必要になる。
北朝鮮の核で最も脅威に曝されるのは、日本である。
北朝鮮の周辺国と言えば、中国、ロシア、韓国、日本であるが、その中で 北朝鮮が核で威嚇し、 核攻撃の対象に考えているのが日本であることは間違いない。
仮に、今回の核実験が失敗であったとしても、日本を攻撃できる核搭載ミサイルを完成させるのは 時間の問題だろう。
我が国は、北朝鮮の核について もっと深刻な危機意識を持ち、対応に万全を期すべきだ。
アメリカが最も恐れているは、北朝鮮の核の拡散(テロリスト等の手に渡る)だが、我が国にとっては、核攻撃に直接曝されるという もっと深刻な事態と認識すべきだ。
今回の北朝鮮の核実験への対応は、単に国連の制裁決議やアメリカに協力するというものではなく、直接 我が国の安全が脅かされる事態への対応と捉えるべきである。
遥か遠いオーストラリアでさえ、全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止措置を打ち出し、臨検(船舶検査)にも参加する用意があると言っている。
最も脅威を受ける日本が、最も厳しい対抗策を取るのは、当たり前のことだ。
最近の北朝鮮のミサイル発射実験、核実験等一連の行為を放置すれば、我が国に対する直接の武力攻撃に至る恐れは十分考えられる。したがって、周辺事態法に言う“我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態”即ち“周辺事態”に該当する。
米軍等が行う臨検の後方支援活動等は 当然実施すべきだし、我が国独自で強制力を持った臨検もできるよう必要な法改正も急ぐべきだ。
ここにきても、北朝鮮の核実験だけでは、周辺事態に当たらないと主張する政治家は、国の安全に関して極めて無責任な態度と言うべきだ。
民主党の三役は、北朝鮮の核実験を周辺事態にすると、過去に核実験を行ったロシア、中国の場合も周辺事態になるので、北朝鮮の核実験は周辺事態とは認められないと主張している。
経済制裁を宣戦布告と見做す等と豪語する北朝鮮を、ロシア、中国と同一視する考え方には 唖然とした。
民主党には、国の安全に対する危機意識が全く感じられない。こんな無責任な政党に 国政を任せる訳にはいかない。
こういう事態に直面すると、国の防衛手段を自らの法律で縛っている現状を見直す必要を痛感する。集団的自衛権の問題等は真っ先に見直さねばならない。
我が国のミサイル防衛システムの確立を一層迅速化しなければならないし、また 必要な防衛力の見直し、整備も急がれる。(含、核ミサイル攻撃の危機が目前に迫った緊急時の敵基地先制攻撃論)
北朝鮮の核実験に対し、国連は強制力を伴う制裁決議を採択したが、今後の見通しは全く分からない。
北朝鮮に最も影響力を持つ中国の対応が注目されるが、従来からの中国の柔軟姿勢は 基本的には変わらないと思われる。
今回の制裁措置によって、北朝鮮が核兵器廃棄に応じることは考えられないし、北朝鮮が 更に事態をエスカレートさせる可能性も強い。
次の段階では、国連は 軍事的措置を含む より厳しい制裁決議を採択すべきだと思うのだが…。
今回の核実験によって、6カ国協議は もはや その意味を失ったと見るべきだろう。
これまで 6カ国協議は、北朝鮮の核開発のための時間稼ぎに利用され、今 振り返ると 北朝鮮主導型で行われてきたようだ。
仮に北朝鮮が6カ国協議に応じても、北朝鮮が核の放棄や廃棄に応じることは考えられないし、米国の核の移動、拡散阻止の要求に対し、北朝鮮は経済制裁解除を求め、核保有国としての主導的色彩をますます強めるだろう。
北朝鮮に求められているのは、核の再実験の中止ではなく、核の放棄、廃棄である。
北朝鮮核問題の根本的な解決は、金正日体制の崩壊以外にはないと思われる。
それは、中国が金正日を見限り、対決姿勢に転じる時が来るのかどうか、中国の対応如何にかかっている。
【中川氏の核保有議論発言について】
先日、自民党の中川政調会長が、我が国の核保有の議論はあっても良いと発言したことが批判された。中川氏は 核を保有すべきという趣旨の発言をしたわけではないし、批判される筋合いのものではない。
今 この種の議論は タブーになっているが、将来日米安保条約が解消され、我が国がアメリカの核の傘から外れたら、我が国の核保有の議論は 避けて通れない。その時の国際情勢にもよるが、自衛のため 抑止力としての核保有が 必要になることは十分考えられる。
それよりも、「核保有の議論」と言っただけで、その発言の真意も聴かず バッシングして言論を封殺することこそ、言論弾圧につながる危険な風潮と言うべきである。民主主義社会では、どんな議論も タブー視すべきではない。
(2006.11.01)
次回は(第138回)
「責任の所在」(2006.11.15)
【出来事】
- 10月14日(日本時間15日未明) 国連安全保障理事会 核実験実施を表明した北朝鮮に対し国連憲章7章に基づく制裁決議案を全会一致で採択 (北朝鮮制裁決議の要旨⇒クリック) 北朝鮮国連大使は同制裁決議を全面的に拒否
- 10月18日 ライス米国務長官来日 北朝鮮問題について麻生外相らと会談 19日安倍首相と会談→韓国へ
- 10月19日 日米韓外相会議 於ソウル
- 10月26日 プロ野球日本シリーズ 北海道日本ハムファイターズが対中日ドラゴンズを4勝1敗で制して優勝
- 10月31日 米 中 朝 6カ国協議再開で合意
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