◇第140回◇
2006年を振り返って
今年の国内ニュースでは、小泉さんの自民党総裁任期満了に伴う安倍政権の誕生(9月26日)を まず挙げねばなるまい。
安倍さんは、総裁選で 麻生、谷垣両候補を大差で破り、国民からも高い支持を得た中で新政権を発足させることができた。
また、総理就任直後に 中国、韓国を訪問したことは、中国とのギクシャクした関係を改善したとして頗る評判がよかった。
だが 安倍さんの中国、韓国に対する姿勢は、小泉さんと大差ない。安倍さんも靖国神社に参拝しないとは言っていない。
これまで中国側は 靖国参拝問題を外交カードに使って圧力をかけてきたが、小泉さんがこれに屈しなかったため、中国側は日中首脳会談をやりたくてもできなかった。今回、中国側は、日本の総理大臣の交代を契機に 首脳会談の実現に踏み切った。首脳会談は 中国側の変化によるもので、安倍さんの対中姿勢が小泉さんと違っていたからではない。
しかし、安倍さんが、靖国参拝についての意向を曖昧にしたことは、将来に大きな問題を残すことになった。これは、安倍さんが言う“主張する外交”に矛盾する。
今年は 年明け早々、時代の寵児として もて囃されたライブドアの“ほりえもん”(堀江貴文元社長)が 証券取引法違反容疑で逮捕され(1月23日)、今度は一転して大悪人にされてしまった。
これには、思わぬ付録が付いた。それは、2月に起きた民主党永田元議員による自民党武部元幹事長攻撃のための偽メール事件である。この事件で 民主党は、前原執行部が責任を取り退陣に追い込まれる等、大きな痛手を蒙った。
【偽メール事件とは】
民主党永田寿康元議員が、元ライブドア社長堀江貴文氏が自民党の武部元幹事長の二男に3,000万円を振込むようメールで指示していたとして、政府 自民党を追及したが、このメールが偽ものと判明したもの
前原氏の後継代表には 小沢一郎氏が就任したが、安倍内閣の好調な滑り出しの影響もあって、民主党の影が薄くなった感じがする。
最近の民主党には、共産党や社民党と共闘してまで 政府との対決姿勢に固執する等、あせりの色が見受けられる。
共産、社民両党と共闘した沖縄県知事選挙、教育基本法改正の国会審議ボイコットは、いづれも国民の支持を得られず、民主党は醜態ぶりを露呈した。
それでも小沢氏は、野党共闘継続を強調しており、民主党は、政策なき抵抗野党に変わったようだ。
今年10月、北朝鮮は とうとう核実験をやってしまった。最も北朝鮮の核の脅威に曝されるのが日本であることは間違いない。
北朝鮮に核開発の放棄を求めるための6カ国協議は、もはや意味を失ったと思う。
今までの6カ国協議は一体何だったのか、時間稼ぎをされる等、うまく北朝鮮に利用されたのではないか。
12月18日に 6カ国協議が再開されるとのことだが、今度は核保有国という強い立場で、北朝鮮は臨んでくるだろう。
協議による北朝鮮の核廃棄が不可能だとすれば、これから関係各国は6カ国協議に何を求めるのか、特に米国や中国の出方が注目される。
11月に行われたアメリカの中間選挙では、与党共和党が大敗し、上下両院とも野党民主党が過半数を制した。
この結果 米ブッシュ政権のイラク政策の見直しが余儀なくされ、成り行きが注目される。更に、対北朝鮮政策にも変化があるのか、あるとすればどう変わるのかは 我が国にとって重大関心事である。
今年は、公務員の組織的な不祥事が目立った。
社会保険事務所が国民年金保険料未納者に対し、本人の手続きなしに勝手に保険料免除措置を行う等、社会保険庁は不祥事により 大量の処分者を出した。政府、与党は、度重なる同庁の不祥事に鑑み、社会保険庁組織改革を見直し、非公務員型の新組織(民間会社)にする方向で検討している。
同じ厚生労働省傘下の全国の労働局では “カラ出張”や“カラ雇用”による裏金づくり等の不正経理が発覚し、多数の処分者を出している。
また、防衛施設庁でも、発注工事をめぐる官製談合事件が発覚し 摘発された。
福島県、和歌山県、宮崎県では、収賄や発注工事に関する談合が発覚し、知事らが逮捕され、刑事責任が追及されている。
岐阜県庁では、組織ぐるみの多額の裏金作りが発覚し、多数の処分者を出した。長崎県でも裏金作りが発覚した。
奈良市では、過去5年間に僅か8日しか出勤しなかった職員に、その間の給与を満額支給していたというあきれた事件が発覚した。本人は 懲戒解雇され、職務強要の容疑で逮捕されたが、これを放置してきた市の責任は極めて大きい。
地方自治体の度重なる不祥事は、強く叫ばれている地方分権推進の足を引っ張るものであり、体質改善が強く求められる。
今年 教育界では、高校の必修科目の未履修問題と学校での いじめによる自殺が大きなニュースになった。
必修科目 世界史等の未履修該当校は、全国で660校を超え、未履修生徒は10万人以上と言われている。
決められたことを守るという初歩的な社会規範を、教育現場が破るとは由々しき問題だ。
大学入試に関係がないからと 必修科目を履修させなかった学校側に責任があるのは当然だが、これだけ多くの高校で必修科目の未履修があったにも拘わらず、これを見過ごしてきた文部科学省の責任は重大と言うべきだ。
学校に於けるいじめが原因で子供が自殺する事件が相次ぎ、社会問題になっている。
いじめを放置したとして もっぱら学校側の責任が問われている。いじめが発覚した学校の校長先生の自殺もあった。
政府の教育再生会議での緊急提言では、いじめた子供には 別教室で教育指導をする等毅然たる対応が必要とし、場合によっては出席停止処分も必要との意見も出ている。
しかし、子供の世界で、一方だけを絶対悪と決め付け、毅然たる対応が必要と言うのは、行き過ぎではないか。子供社会では、いじめる側に回ったり、いじめられる側になったりするものだ。
別教室で指導されたり、出席停止処分を受けた子供が、それを苦にして自殺したら 今度はどうする?
いじめる側が悪いのは当然だが、いじめられて自殺する側にも問題があると思う。
自殺する子供は、いじめに抗することができない極めて弱い精神の持ち主に違いない。いじめた側からすると“なんだ、あんなことで自殺したのか”というケースも多いだろう。
自殺にしか逃げ場がない ひ弱な子供に育てた親の責任、自殺の気配を察知して対応できなかった家庭にも大いに問題はある。
勿論、いじめっ子側の親の責任、いじめや自殺を防止できなかった学校に責任があるのは当然だ。
自殺は、最も卑怯な行為で罪悪だという教育も必要だろう。しかし、校長先生が自殺するようではどうにもならない。
いじめは昔からあったし、これを完全になくすことはできない。
このいじめ自殺の社会現象も、甘えの構造をもたらしたこれまでの教育問題に帰するようだ。
もっと厳しい教育によって、心身ともに頑強な子供に育てることが求められる。
昔は いじめられて泣いて帰ってくると、親から「そんな弱虫では駄目だ。殴られたら殴り返して来い !」と叱られたものだ。
今は 「悪いことしてないのに いじめられたの? 可愛そうに。誰がいじめたの、学校に言いつけてやるから」と子供を慰める親が多いようだ。これでは強い子には育たない。
今年の流行語大賞には『品格』(藤原正彦さん=“国家の品格”の著者 お茶の水女子大教授 数学者)と 『イナバウアー』(荒川静香さん=2006年トリノ五輪フィギュアスケートの金メダリスト)が選ばれた。
また、日本漢字能力検定協会は、今年の世相を表す漢字を『命』と発表した。(2006.12.15)
次回は(第141回)
「2007年を迎えて(T)」(2007.01.01)
【出来事】
- 12月1日(日本時間2日) 第15回アジア競技大会開会式(15日閉会) 於カタール ドーハ(ハリファ競技場)
- 12月4日 自民党党紀委員会 平沼赳夫氏を除く郵政造反組の無所属議員11人の復党を決定
- 12月8日 安倍首相 フィリッピンアロヨ大統領との会談(9日)のためマニラに向け出発 10日帰国 (予定されていた11日からのASEANプラス3首脳会議 東アジア首脳会議は台風のため延期)
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