◇第144回◇
問題になった政治家の発言
昨年、自民党政調会長中川昭一氏が、我が国の核保有の議論はあっても良い と発言したことが問題になった。
中川氏本人は、自分は核保有論者ではないと言っているのに、核保有推進論者のごとく伝えられ 非難の的になった。
このように 有無を言わせず一方的に決め付けて発言を封ずる風潮こそ、まさに恐ろしい言論封殺社会の到来ではないのか。
核保有反対の意見を主張することは 勿論自由だ。しかし、核の「議論」そのものをタブー視することは 思考停止に陥ることだ。そんな思考停止の政治家に、国を任せるわけにはいかない。
国の安全保障については、変化する国際情勢に対応して 常に真剣に考えておかねばならない。その中で核問題についても議論を深めることは大切なことだ。
今、我が国が 核を持つ必要がないのは、日米安保条約により 日本がアメリカの核の傘のもとにあるからで、日米安保条約がなくなれば、我が国の非核の根拠は 根底から崩れる。
中川氏の発言は、我が国の将来の安全保障を見据えて、核保有論議という極めて重要な問題を 国民に提起したもので、責任ある政治姿勢として評価すべきだ。
麻生太郎外相が中川氏の発言に同調したため、野党は 攻撃の的を麻生氏に向けて 大臣辞任を迫ったが、支持を得られず 不発に終わった。当然だ。
久間章生防衛相は、日本政府は アメリカのイラク戦争を公式に支持していないと発言し (この発言は 翌日本人が事実誤認として撤回)、その後も、イラクとの開戦は ブッシュ大統領の判断ミス等と言って問題になっている。また、米軍普天間基地の名護市への移設をめぐっても、日米政府間の合意があるに拘らず 「アメリカはあまり偉そうなことを言ってくれるな。日本のことは日本に任せてくれ」等と発言したと伝えられている。
これら一連の発言は、アメリカ批判と受け取られ、米政府当局者は 度重なる久間発言に、強い不快感を示している。(我が国の防衛省が 非公式に打診した日米防衛首脳会談開催が 米 国防総省から断られている。来る2月20日に来日予定の米チェイニー副大統領は、久間防衛相とは会談しないことになっているらしい。これらは いづれも久間発言が原因と言われている)
久間発言は、いづれも政府の見解や方針に反し、明らかに閣内不統一発言である。
日本政府は アメリカのイラク戦争を公式に支持していないと言う発言に至っては、ボケているとしか言いようがない。彼は 防衛相として、自衛隊のイラク派遣についてどう考えているのだろうか。
久間発言からは、日米安保条約に依存しなければならない我国安全保障の現実を 正しく認識しているとは思えない。
久間氏は防衛相としての適格性を欠いている。
昨年12月 麻生外相は、北方領土返還問題に関して、面積での2等分案について言及している。これは、我が国の四島一括返還の原則を崩すものであり、ロシアに誤解を与えかねない 国益に関わる軽率発言である。
また、去る2月5日にも、彼は、アメリカのイラク占領政策を、非常に幼稚だ とアメリカ批判とも受け取られる発言をして アメリカに不快感を与えた。誤解を与える発言は、舌足らずによるものだとは思うが、外相として軽率であり、言わずもがなの不適切発言のそしりは免れない。
柳沢厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言が、マスコミや政界で大騒ぎになった。
女性を機械に例えたのが、誤解を与えたとすれば いささか適正を欠いたかもしれない。
しかし、柳沢発言に対する風当たりは、感情的で 全く理性を欠いたバッシングだと思う。
発言の前後の文脈は無視され、ただ「女性は産む機械」という言葉だけが一人歩きしている。
柳沢さんは、女性は産む機械だという意味で言ったのではない。「機械と言っては何だけど…」「機械と言っては本当に申し訳ないんだけども…」「機械といってごめんなさいね」等と言いながら 一般の人々に分かり易いように 例え話をしただけだ。
厚労大臣として、女性に できるだけ沢山子供を生んで下さいよ とPRするのは当然であり、それは職務の一環でもある。
これでは うかつに演説もできない。
こんな他愛もない発言に 大騒ぎをする日本は 確かに平和だが、何かが狂っている。言葉尻を捉えて 針小棒大に報道して煽り立てるマスコミも問題だ。
民主党をはじめ野党は、政府攻撃の絶好の材料と捉え、柳沢大臣の辞任を求めて 国会審議までボイコットした。
このため、平成18年度補正予算は、衆参とも与党のみの審議採決での成立を余儀なくされた。
今回の柳沢発言問題を通じて、野党 特に民主党は、国民のための政策よりも、党利党略のみに走る姿を見せつけた。
政治家本来の仕事である国会審議を放棄する政党を 国民は決して支持しない。
問題があれば、国会審議の場で、堂々と主張し、議論すべきだ。それを国民が見て評価する。
柳沢氏は、発言の不適切を自ら認め、謝罪している。安倍総理も、柳沢発言を極めて不適切な発言と評して陳謝した。
しかし、私は極めて不適切とは思わない。誤解を与えたとすれば、いささか軽率な発言だったという程度に受け止めたい。また、首相が 陳謝すべきものではなく、更迭すべきでない理由を堂々と述べるべきだった。
更にまた、去る2月6日の記者会見で、柳沢氏が、今の若者達は「結婚もしたい、子どもは2人以上持ちたいという健全な状況にある…」と発言したことも 野党は 問題にしている。
「結婚したくない、子どもは2人以上持ちたくない」と考える者が 不健全であるかどうかは別にして、少子化対策を推進する立場からは、好ましくない考え方であることは確かだ。
若者が結婚したいと思う気持は、まことに健全である。子供を2人以上作りたいと思うことが健全でないはずがない。
この当然な発言を否定することこそ、極めて不健全で 少子化を助長する極めて不適切な言動だと断じたい。
民主党の菅直人氏は、去る1月18日、名古屋での演説の中で「愛知も東京も景気が良い、生産性が高いと言われるが、愛知も東京も 1、2を争うほど、子供を産むという生産性が最も低い」と述べたことについて、公明党斉藤鉄夫政調会長らが厳しく批判していた。
菅氏の「子供を産む生産性」発言と柳沢発言は 大同小異、いづれも 目くじらを立てるほどのことではない。
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最近、相次ぐ閣僚の問題発言等に鑑み、安倍内閣のたがが緩んでいるのではないかとの声が聞かれ、支持率も低下している。
安倍さんの若さが露呈し、指導力に いささか問題ありと国民は感じているのかもしれない。
しかし、国民は安倍さんの若さに期待したはずだ。
総理は、自らの考えを はっきり示すことが重要で、迎合的な姿勢や曖昧な態度からは 国民の支持は生まれない。
内閣の方針に反したり、結束を乱す閣僚の更迭を ためらってはならない。
今、安倍さんは 参院選を意識すべきではないし、内閣支持率低下を気にする必要もない。
強固な信念に裏打ちされた政治姿勢を貫徹すれば、支持の世論は後からついてくる。
それは、郵政民営化で見せた小泉前総理の執念で実証済みだ。(2007.02.15)
次回は(第145回)
「大相撲と外国人力士」(2007.03.01)
【出来事】
- 2月2日 衆院本会議 平成18年度補正予算案を与党のみで可決 参院へ送付 (野党側<民主 共産 社民 国民新>が女性は産む機械等と発言した柳沢厚労相の辞任を求めて出席を拒否したため 野党側欠席のまま衆院予算委員会及び衆院本会議で可決したもの)
- 2月6日 参院本会議 平成18年度補正予算を与党のみで可決成立(5日の参院予算委員会も野党4党欠席のため与党のみで可決)
- 2月8日 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議再開 於中国北京
- 2月13日 6カ国協議 共同文書を採択して閉会 初期段階措置として北朝鮮は寧辺の核関連施設の稼働停止やIAEA(国際原子力機関)による査察受入れに同意 見返りとして5カ国が5万トンの原油提供 核施設廃棄などの段階に応じ最大で重油100万トン相当の支援提供等が柱
- [参照]⇒「6カ国協議の共同文書の骨子」(クリック)
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