◇第152回◇
格差社会とは言うけれど(T)
最近、格差社会という言葉をよく耳にする。格差が拡大してきたとして 問題視する論調が盛んだが、私には ピンとこない。
格差社会が強調される裏には 政治的なものを感じる。
特に野党陣営は、格差社会は 規制緩和政策で競争を助長した小泉内閣失政の置き土産のように言っているが、全くの的外れだ。
これでは、これからも進めねばならない構造改革や規制緩和を否定することになってしまう。
民主党の小沢一郎党首は、我が国は 世界一の格差社会だと言ったことがあるが、とんでもない話だ。事実に反する無責任発言と断じたい。
世界の中でも、日本は、最も格差が少ない部類に入る。英国等欧米先進国では、今だに貴族階級や上流階級という身分制度の残滓が随所に残っている。ましてや中国や印度等後進国の貧富の格差は言うまでもない。
我が国では、江戸時代の士農工商という身分制度は 明治維新で跡形もなく消滅した。一労働者の子弟であっても努力や能力如何では社長にも、総理大臣にだってなれる可能性はある。これは、世界にも誇り得る点だと言ってよい。
人は生まれながらにして平等と言われる。しかし、それは 法的には平等であり 差別をしてはいけないと言うだけである。
実際には、人は生まれながらにして平等ではない。優秀な遺伝子を持って生まれる子、中には障害を持って生まれてくる不幸な子供もいる。
松坂大輔、松井秀喜選手らに代表される有名野球選手が稼ぐ莫大な収入をどう見るか。
マスコミや芸能界に登場する有名人は、一般庶民とは桁外れの高所得を得ている。とてもそれだけの値打ちがあるものとは思えないのだが…。これこそ格差の典型と思うが、これに異議を唱える者は あまり居ない。
格差なき社会はあり得ないし、格差を悪と決め付けるのは間違いだ。
格差社会否定論者は、競争が格差社会をもたらす元凶だと言うが、非常識な発言である。
競争こそが、社会の発展の原動力であり、競争なき社会は、衰退を辿るのみだ。
民主主義を誤解した「平等至上主義」「競争否定主義」は、これまで 社会に随分弊害をもたらしてきた。特に、これが学校教育に与えた影響は大きく、今日の問題社会をもたらした原因の一つになっていると思う。
格差をなくす、即ち落ちこぼれを無くすために、ゆとり教育の美名のもとに、全体のレベルを下げる教育も行われた。今になって青少年の学力低下が問題になっている。
運動会の徒競走で横に手をつないで一斉にゴールさせて、1等2等の序列をなくすやり方も行われた。これでは一生懸命に走る者は いなくなる。
こんな間違った教育は、子供達が本来持っていた競争心を喪失させ、これが社会人になってからの落ちこぼれ、即ち格差社会の典型と言われるニートやフリーターを作り出している。
格差社会を否定する「平等至上主義」「競争否定主義」が、実は格差社会をもたらしていた張本人だったとは皮肉なことだ。
格差社会を過度に強調する風潮は、良いことではない。
自分の非や努力不足は棚に上げて、全てを格差社会のせいにし、格差社会を作り出した政治が悪いからだ等と 責任を他に転嫁する風潮は、諦めムードや無気力を助長することになり 決して良いことではない。
社会の発展には競争原理が不可欠とは言っても、無秩序、無制限な競争は許されない。
競争にはルールがあり、法律や行政によって多くの規制が設けられている。
しかし、健全な自由競争のためには、撤廃した方が良い規制も まだまだあるようだ。規制緩和が叫ばれる所以である。
格差にも色々な種類がある。貧富の格差、地域格差、男女格差、官民格差、企業間格差、教育格差…等々。
最近 問題になっているのが 貧富の格差と地域間格差のようだ。
格差が許容範囲を超えるようになると、格差是正のための政策が必要になる。
個人の所得や貧富の格差是正のためには、累進課税による所得の再配分や生活保護制度等が講じられている。
地域(地方自治体)間格差には、地方交付税の配分によって地方公共団体間の財源の不均衡を調整する制度が採られている。
最近、地方財政が悪化し、危機的状況に陥っている自治体も少なくない。
これは、バブル経済が崩壊したのに、自治体が 必要な財政改革を怠り、旧態依然たる放漫財政運営を行ってきた結果と言うべきである。即ち、お役所体質、親方日の丸的体質がもたらした面が大きい。(財政が破綻して財政再建団体に認定された北海道夕張市も、炭鉱閉山の影響を受けたとは言え、例外ではない) 地方自治体間の格差是正を論じる時は、自治体側の財政改革への取組み姿勢も併せて考慮しなければならない。
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これら格差問題をめぐっては、政治課題として与野党間の論争にもなっている。
格差の許容範囲、格差是正の在り方等をめぐっては、さまざまな考え方があり 簡単ではない。
格差の本質にまで遡って考える必要がある。(2007.06.15)
次回は(第153回)
「格差社会とは言うけれど(U)」(2007.07.01)
【出来事】
- 6月1日 赤城徳彦氏が農林水産大臣に就任(死亡した松岡利勝氏の後任)
- 6月1日 九州南部が梅雨入り
- 6月2日 青森県深浦町の深浦港沖合で小舟に乗った北朝鮮からの脱北者とみられる4人を発見保護
- 6月5日 安倍首相 第33回主要国首脳会議(G8サミット 6〜8日 於 ドイツハイリゲンダム)に出席のためドイツに向けて出発(9日に帰国)
- 6月13日 九州北部(含む山口県) 四国地方が梅雨入り
- 6月14日 中国 近畿 東海 関東甲信地方が梅雨入り
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