◇第161回◇
期待できるか福田内閣(T)
安倍政権下で 参院選に大敗した自民党は、安倍前首相とは 距離を置いてきた福田康夫氏を、最も無難な人物として首相に選んだ。
福田首相の性格や考え方は、これまでの彼の数々の言動や国会答弁から見て取れる。
小泉、安倍前政権に比べて どういうスタンスを取るのかが注目される。
小泉さんは 総理就任に際し、聖域なき構造改革という大きなビジョンを示し、国民から絶大な支持を受けた。安倍さんも、小泉構造改革路線に加えて、戦後レジームからの脱却、主張する外交等、次元の高い目標を掲げて登場し、約70%という高い支持率のもとで内閣を発足させている。
一方、福田首相の口からは、「国民の声に耳を傾ける」「誠意を持って話し合う」等の言葉がよく聞かれるが、福田さんからは目指すべき「国家像」が見えてこない。
福田さんは 改革
は継続するとは言っているが、小泉、安倍内閣に比べると 構造改革路線は かなり後退するだろう。
例えば行政改革に関しても、政権安定のために官僚機構と協調し、霞ヶ関に配慮する姿勢を示している。福田政権下では、行政改革は失速しそうである。
また、教育改革についても、彼からは 積極的なの姿勢は見えてこない。安倍前総理時代に設置された教育再生会議も後退するとの見方が多い。
福田さんは、格差問題は構造改革がもたらしたという認識に立ち 「構造改革の結果 生じた影の部分に光を当てる」と述べているが、これは これまでの構造改革路線の転換を意味する。
厳しい国家財政の中、しかも少子高齢社会が一層進む中で、構造改革を停滞させることは、問題の先送りであり、責任ある政治姿勢とは言えない。
安倍さんの戦後レジームからの脱却は、福田内閣のもとでは、棚上げされてしまうだろう。
憲法改正に必要な国民投票法、教育基本法の改正等は、安倍さんの貴重な置き土産になったが、福田政権下では憲法改正が政治日程に上ることはあるまい。
安倍さんが進めようとした集団的自衛権の見直し問題についても、福田さんは消極的である。
これは、我が国防衛にとって極めて重要な問題である。日米安保条約を実効あらしめるためには、集団的自衛権の見直しは是非必要であるのみならず、我が国の国際的な立場にも影響する問題である。
(「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」<座長・柳井俊二前駐米大使>から、集団的自衛権の見直しのため、憲法解釈変更の必要性を求める報告書が提出されても、福田総理は これを封印してしまうだろうと言われている)
今 我が国が抱える政治課題は、山積している。例えば内政問題では、将来に亘る年金や医療等の社会保障問題、少子高齢化対策、格差問題、経済…等々。
しかし、多くの政治課題の実現は 財政再建が前提になると言っても過言ではない。
それは 国が何をするにも、まず財源がなければ 何もできないからである。
国、地方の長短期の借金は 今や1,000兆円を超えている。最近の国家予算(総額約80兆円程度)は、毎年30兆円前後の国債を発行して帳尻を合わせて編成されているのが実態だ。
このまま累積債務が増え続ければ、国の財政は破綻し、国債の暴落、激しいインフレになれば国民生活に致命的な悪影響をもたらすであろうことは、経済専門家でなくとも容易に推測できる。
福田内閣は、小泉、安倍政権が重視した財政再建路線を踏襲し、深刻な国家財政に対応した政策を取るだろうか。
福田首相には、徹底した財政支出削減の政策は 期待できないと思う。
例えば、伸び続ける老人医療費に対処するため、来年4月からの高齢者の自己負担率引き上げ(70〜74才の自己負担現行1割を2割へ引上げる)や75才以上の後期高齢者からの保険料徴収等が 既に決まっていたのに、福田内閣では、これを1年程度凍結する方針のようである。凍結に要する財源 (約1500億円)は、今年度の補正予算に計上するようだ。これは、自公の選挙対策以外の何ものでもなく、社会保障費の抑制方針を後退させることになり 無責任と言うべきであろう。
このように、小泉、安倍政権が敷いた財政再建路線は 後退しつつある。
福田さんは、所信表明演説で“ぬくもりのある政治
”“格差問題への対応”等を強調しているが、それが具体的にどういう政策を意味しているのか さっぱり分からない。
“ぬくもりのある政治
”とは、弱者救済を意味するのだろうか。それには財源が必要になる。福田さんが強調する「国民の声に耳を傾け」という言葉からは、ばら撒き政治のニュアンスしか見えてこない。
“格差問題への対応”についても同様だ。
地域間格差(地方の衰退)是正対策としては どんな政策が考えられるだろうか。福田さん流の「地方の声に耳を傾け」という言葉からは 地方救済策の特効薬、公共事業の拡大を連想させる。
しかし、安易な公共事業こそが、財政悪化の元凶であり 色々な弊害を生んできたことは周知の通りである。
調整型といわれる福田さんは、族議員達からの財政出動の圧力を 毅然として撥ね付けるタイプではなさそうだ。
福田総理の外交姿勢は、安倍前総理の“主張する外交”とは随分違うようだ。
靖国問題に関し 福田さんは、就任早々「相手が嫌がるようなことはしない」と靖国神社を参拝しないことを表明した。
外交と言うのは、恒に国益と国益のぶっつかり合い
の中で、主体性を貫き 如何に我が国の国益を守るかである。
「相手が嫌がるようなことはしない」では、我が国の国益を守る外交を最初から放棄したようなもので不適切発言だ。
また、これは靖国神社に対する価値観の問題でもあり、福田さんは、小泉さんや安倍さんに比べると靖国神社を重視していないことになる。
北朝鮮の問題では「拉致問題は 私の手で解決する」と言い切っているが、福田首相に特別な秘策があるとも思えない。
これまで北朝鮮に対しては 対話と圧力と言われてきたが、福田さんは 圧力より、対話重視に見える。
拉致問題に対する認識は、安倍さんとは 違う印象を受ける。(2002年10月15日、蓮池薫さんら拉致被害者5人が帰国した時、日朝国交正常化交渉を重視する立場から、これは一時帰国だから、5人を再度北朝鮮に戻すべきだと主張したのが当時の福田官房長官だった)
拉致問題も 相手の言い分をそのまま受容れれば 簡単に解決する。まさか福田さんが拉致被害者を裏切るようなことはしないと思うのだが…。
北朝鮮との国交正常化は、相手側には 大きなメリットがあるが、我が国に メリットはないということを十分認識すべきだ。
北朝鮮との国交正常化は成り行きに任せるべきで、こちらから積極的に推進する必要は微塵もない。
福田さんは、中国寄りの外交を重視しているようだ。
安倍さんは、日米の緊密な関係を基盤に、中国との関係も重視したが、同時に インド、豪州との関係も重視した。そこには中国の覇権主義に対する牽制の意図もあったはずである。
さて福田外交は?。毅然とした外交を期待したいのだが 果たして…。
(2007.11.01)
次回は(第162回)
「期待できるか福田内閣(U)」(2007.11.15)
【出来事】
- 10月18日 [パ・リーグ クライマックスシリーズ]パ・リーグ優勝の北海道日本ハムファイターズがレギュラーシーズン2位の千葉ロッテマリーンズを3勝2敗で破り日本シリーズ出場権を獲得
- 10月19日 パキスタンのカラチでベナジル・ブット元首相(前日 約8年半ぶりに帰国)の車両の近くで起きた爆発テロにより 死亡者約140人以上 負傷者500人以上(ブット元首相は無事)
- 10月20日 [セ・リーグ クライマックスシリーズ]レギュラーシーズン2位の中日ドラゴンズがセ・リーグ優勝の読売ジャイアンツを3勝0敗で破り日本シリーズ出場権を獲得
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