◇第162回◇
期待できるか福田内閣(U)
参院選で惨敗したからとは言え、福田自民党は 一挙に弱気になった印象を受ける。
福田さんは、野党とは誠意をもって話し合うと言っており、確かに低姿勢振りが目立っている。
彼は、総理大臣就任当初、衆院の解散についても 野党と話し合うと言っている。軽率、不適切な発言だと思う。
内閣総理大臣の衆院解散権とは、内閣が 議会と対立し 行き詰まった時に、国民に信を問うために 憲法が行政の長だる総理大臣に与えている権限である。首相の伝家の宝刀とも言うべき憲法上の権限を 最初から 放棄するに等しい無責任な発言と言われても仕方がない。
野党に対する低姿勢は 福田政権の政策を実現するための戦術というより、野党との妥協政治に見える。
去る10月30日と11月2日の両日、福田(自民)-小沢(民主)党首会談が行われた。
党首会談では、自民、民主の連立政権についても話合われた。
2人だけの密室会談であったため、会談の内容は明らかにされず、色々な憶測を呼んでいる。
小沢さんの説明によると、“連立政権ができるなら、自衛隊の海外派遣は、小沢さんの持論である 国連決議による活動への参加に限るとし、特定の国の軍事作戦は支援しない、その場合 新テロ特措法案の成立には こだわらないことに 福田首相が同意した”と 言う。
一方、福田さん側は 自衛隊の海外派兵問題についての議論はあったが、今 政府が 一番重視しているインド洋での自衛隊の給油活動を止めることになる小沢さんの主張に 同意するはずがないと これを真っ向から否定している。
結局小沢代表は、会談の内容(自民との連立政権構想)が党の役員会で拒否されたため、辞表を提出した。
しかし、11月6日、小沢さんは 党の強い説得に応じて、辞表を撤回した。本人は恥を忍んでと言ったが、確かに こんなぶざまなことはない。
福田さんとしては、衆参のねじれ国会による国政の停滞を打開する選択肢として 民主党との連立も考えたと思う。
しかし、安全保障等、国の基本に関わる重要問題を、野党党首と二人だけで密室の中で決めるというのは如何なものかと思う(今回は 不調に終わったが)。民主国家の総理大臣が採るべき手法ではないだろう。
総理大臣の資質として、よく リーダーシップが強調される。
閣内におけるリーダーシップ、党内におけるリーダシップは当然だが、最も大切なのは国民に対するリーダーシップである。
「国民の声に耳を傾ける」と言ってみても 人々の考えは千差万別、夫々の立場や利害、その時々のムードにも左右される掴みどころがないものだ。しかも目先のことに捉われた無責任なものが多い。
「国民の声に耳を傾ける政治」と言えば、聞こえはいいが、それは実態のない言葉のごまかしに過ぎない。
ここで重要なのが、国民に対するリーダーシップである。
国民に対するリーダーシップとは、時の政権、とりわけ総理大臣が、目指す路線や政策を十分説明し、国民の理解と支持を得て、
実行することである。その典型は、小泉元首相が郵政民営化実現のために発揮した国民に対するリーダーシップに見ることができる。
国民に対して、「どうすべきでしょうか」ではなく、「こうしたいと思います。如何でしょうか」と国民に十分説明して 理解と支持を得ることである。そこで初めて 国民の声や民意が 具体的なものとして見えてくる。
福田さんからは、現状を何とかうまく乗り切って行こうというだけで、彼が目指す路線や政策、国家像が伝わってこない。
調整型と言われる福田総理に 強力なリーダーシップを期待するのは無理かもしれない。
先の参院選で大勝した民主党は、政権獲得を目指し 次期衆院選での過半数獲得を最大の眼目にしている。
このため民主党の政策は、国民に対する迎合的な色彩が強い。
例えば、民主党が今国会に提出した農業者戸別所得補償法案は、1兆円と言われる財源も曖昧で 無責任な ばら撒き政策である。この政策が、農家からの集票を狙った人気取りにあることは明白だ。
与党自民党は、このような民主党とは一線を画し、票集めのための人気取り政策を 民主党と競うようなことは 絶対にあってはならない。それは、自民党の自殺行為につながるのみならず、我が国の政治にとって 取り返しがつかない禍根を残すことになるからだ。
先の参院選での与党の敗因は、「年金記録漏れ問題」、「政治とカネの問題」、「閣僚の失言問題」に対する国民の怒りの現れであって、小泉、安倍前政権が掲げた
構造改革路線、戦後レジームからの脱却、主張する外交等が国民から否定されたものではない。
小泉政権当時の高い支持率や安倍政権が方針を掲げて発足した当時の高い支持率から見ても、小泉、安倍路線は 国民から高い評価を得ているものと考えるべきである。
自民党が国民の信頼を回復するためには、小泉、安倍路線の原則を明確にし、その上に立って福田カラーによるリーダーシップを発揮して国民の理解を深めることであろう。
国民から政権を負託されている内閣は、与えられているあらゆる手段を駆使して 政策を実現する責任がある。
新テロ特措法案のごとき重要法案は、参院で否決されても 衆院で3分の2以上の多数で堂々と再可決すればよい。
憲法に明記されている手続きに従うのに躊躇する理由はない。(憲法第59条【法律案の議決、衆議院の優越】第2項 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
)
国民の目に、自民党が弱々しい頼りない政党に映れば、国民の信頼は失墜するだろう。頼れるのは強い民主党ということになってしまう。(2007.11.15)
次回は(第163回)
(2007.12.01)
【出来事】
- 11月1日 プロ野球日本シリーズ 中日ドラゴンズが北海道日本ハムファイターズを4勝1敗で破り優勝
- 11月2日 自民・民主党首会談で連立政権問題が議題に 民主党は拒否回答
- 11月3日 パキスタンのムシャラフ大統領 全土に非常事態を宣言 憲法を停止
- 11月4日 民主党小沢一郎氏 党代表辞任を表明(福田首相との党首会談での連立政権構想をめぐる党内混乱の引責)
- 11月6日 民主党小沢一郎氏 党代表辞任の撤回を党に伝える 辞任撤回の正式表明は7日
- 11月9日 第168臨時国会の11月10日までの会期を12月15日まで35日間延長することを衆院本会議で自民、公明の賛成多数で議決
- 11月11日 大相撲11月(九州)場所初日(福岡国際センター)
- 11月11日 「KONAMI CUP アジアシリーズ2007」(日本 韓国 台湾 中国のプロ野球リーグ代表チームによる王者決定戦)決勝戦 中日(日本)がSK(韓国)を6:5で破り優勝 於東京ドーム
- 11月13日 新テロ対策特別措置法案 衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決 参院へ送付
|