◇第166回◇
立法府のシステム欠陥がもたらしたねじれ現象
今、国会は、衆議院では与党が、参議院では野党が多数を占める 所謂ねじれ現象のため、半ば機能不全に陥っている。
衆参のねじれ現象の中で、与野党が妥協なき対立を続ければ、国政は麻痺し、国益を著しく損なうことになる。当然国民生活に しわ寄せが来る。
衆院の意思と参院の意思が対立し、お互いに民意を代表していると主張して譲らなければ 身動きが取れなくなってしまう。
この矛盾は、立法府(国会)の意思決定システムの欠陥によるものと言うべきだ。
現行憲法は、ねじれ現象をも想定して、国会議決の手続きを定めているように見える。
それは、解散⇒総選挙がある衆院の方が、より民意を反映しているという前提に立って 衆院の優越を定めている点だ。
例えば
[総理大臣の指名]=参院の指名が 衆院と異なる場合や10日以内に参院が指名しなかった場合は 衆院の指名を優先する
[予算の議決]=予算は衆院が先に審議する、これを参院が否決した場合又は30日以内に参院が議決しなかった場合は衆院の議決を優先する
[条約の国会承認]も、予算の議決に準じ 衆院の議決を優先する
[法律案の議決]=衆院で可決した法律案を参院で否決した場合は、衆院で3分の2以上の多数で再可決すれば成立。参院が受け取った法律案を60日以内に議決しなかった場合は、否決したと見做す⇒衆院で3分の2以上の多数で再可決 成立
[衆議院の内閣不信任]=衆院が内閣不信任案を可決した場合は、10日以内の衆院解散又は内閣総辞職
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等々である。詳細については
「日本国憲法」(クリック)参照
憲法では、衆参のねじれ現象の混乱を避けるため、このように衆議院の優位制を採っているが、これでは十分ではない。
衆参両院が夫々異なる議決をした場合、これを調整するため、両院協議会の制度を設けているが、これがうまく機能したことはない。
ねじれ現象は、与野党の勢力が伯仲している場合が多く、政権をめぐって与野党が激しく対立、対決する状況になる。
特に政権の責任を負っていない野党は、あらゆる手段を使って現政権を倒して、政権を取ろうとする。
これが昂じてくると、政権奪取が全てに優先し、国益や国民よりも 党利党略的な姿勢になりがちで、これでは国会本来の機能は麻痺してしまう。
民意を問うためには、衆院を解散して総選挙を行うしか手立てがない。
しかし、現在のように 野党が参院を支配している場合は、(衆院の)総選挙で与党が負けなければ、ねじれ現象は解消しない。与党が総選挙で勝っても、3年とか6年後の参院選で 野党が負けて過半数を割るまでは、いつまでも ねじれ現象は続くことになる。
憲法では 解散がある衆院優越の原則を採っているのに、解散がない参院は、議員の任期までは 参院の優位性が保障されることになり、憲法の精神に反する結果になってしまう。
このような矛盾や不都合は、衆参両院からなる立法府の議決システムの欠陥によるものと言わざるを得ない。
参議院不要論や廃止論は 政界ではタブーになっているが、現状のままでは、参議院の存在意義はない。参議院の存在が 国会の意思決定の障害になってしまう。
よく参議院は良識の府と言われるが、実態は解散がないだけで衆議院と何ら変わらない。ねじれ現象下にある現状は、与野党が所を変えて対決し合っているだけで、とても良識の府とは言えない。
現在の参議院は、戦前の貴族院を引き継いだものだ。我が国の貴族院は、英国議会の貴族院(House of Lords)をモデルに作られている。戦前の貴族院は、文字通り 皇族、華族、勅任議員(多額納税者・学士院会員・勅選議員…)等、言わば特権階級で構成されていた。
戦後、アメリカが示した憲法草案では一院制だったが、我が国政府の強い要請により、従来の貴族院を参議院として残すことになったと言われている。同時に、参議院の構成議員も全て公選制にしたため、同じ性格の議院が並存することになってしまったのである。
戦前の貴族院は、それなりの存在意義はあったと思われるが、現在の参議院は、その生い立ちからみても、存在意義は疑問と言うべきである。
将来に亘って二院制を維持するならば、現在の議決システムの欠陥を是正しなければならない。
そのためには、解散総選挙がある衆議院の優越性を もっと高める必要がある。
例えば、衆院で可決した案件を 参院が否決したり 可決しなかった場合は、再度 衆院で過半数の多数で可決すれば成立する等が考えられる。
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国会の制度上の欠陥を根本から是正するためには、憲法改正を待たざるを得ないが、今 憲法を改正できる状況にはない。
したがって、 政党や国会議員は、国家、国民のために在るという本旨に立ち返り、国会のシステムの欠陥を克服していかねばならない。
有権者も目先の近視眼的なことに捉われず、もっと大局的な立場から 政治を見る目を養うべきであろう。
国会のねじれ現象の中で、与野党が激しく対立し 国政が停滞する状況は、国家国民にとって まことに不幸である。
日本丸という大きな船に、お互いに対立する船頭が2人いて舵を奪い合っている。日本丸は 右に行ったり 左に行ったり、進んだり 後退したり、浅瀬に乗り上げて沈没するかもしれない危ない船に 国民は乗ってはいられない。
国民がそう思った時に民主主義は破綻する。
政治家はもとより、国民一人一人がよく考えるべき大切な問題である。(2008.01.15)
次回は(第167回)
「期待外れの福田施政方針演説」(2008.02.01)
【出来事】
- 1月11日 新テロ対策特別措置法案 衆院本会議で可決成立(前日参院で否決されたため、衆院で3分の2以上の多数で再可決したもの)
- 1月13日 大相撲初場所初日(両国国技館)
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