◇第167回◇
期待外れの福田施政方針演説
去る1月18日、第169通常国会の冒頭、福田総理は、恒例の施政方針演説を行った。
演説の内容は、消費者、生活者重視や環境問題に重点が置かれ、多岐にわたって耳障りの良い言葉が並んでいたが、いづれも具体性を欠き、新鮮なものはなかった。
福田さんは、基本方針として次の5項目を挙げている。
●「国民本位の行財政への転換」
政治は行財政に限らず、全て国民のために行うものであるのに、ここで わざわざ“国民本位の行財政への転換”と言う意味が分からない。これでは、自民党は これまで国民のために政治を行ってこなかったことになる。
民主党は、昨年の参院選の時から「国民の生活が第一」を掲げているが、福田さんの言い方は 民主党の二番煎じだと言われても仕方がない。
食品表示偽装問題への対応等のため、消費者行政担当大臣を置き、消費者庁?を新設する考えを表明した。
確かに食品表示偽装は、消費者を欺くもので許されない。取締りを強化して 再発防止を図らねばならない。
しかし、これまで 食品表示偽装による腹痛、食中毒等の実害は、一件も報告されてない。
食品表示偽装対策は、総理大臣が施政方針演説で取り上げるべき 国政上 重要な問題とは とても思えない。
もっと差し迫った重要な問題が、沢山あるはずだ。
また、担当大臣を置き、新組織(消費者庁)を新設するというのは、行政改革や規制緩和にも逆行するもので、愚策と言うべきだ。
●「社会保障制度の確立と安全の確保」
既に国民が承知している現状を説明しただけで、具体的な政策については触れられていない。
例えば、国民年金の基礎年金の国庫負担については、現在の3分に1を 2009年までに 2分の1にすることが決まっているのに、その財源措置の具体策についての説明もない。
福田さんは、“社会保障を持続可能な制度にするために安定した財源を確保しなければならない。消費税を含む税体系の抜本的改革の早期実現が必要である。このため、各党が胸襟を開いて話合いが行われることを望みます”と述べるにとどまっている。
経団連も、基礎年金は将来消費税で全額国庫負担でやるのが望ましいという提言をしているのに、福田さんは この差し迫った問題について、まるで評論家のような言い方をしている。福田さんは、自らの考え方や具体的な方針を説明して 国民の理解を得るべきなのに、これでは無責任の謗りを免れない。
●「活力ある経済社会の構築」
●「世界の平和と発展に協力する外交の推進」
●「低酸素社会への転換」
いづれも、抽象的であり、美辞麗句の作文の域を脱しない。福田さんが目指すビジョンや具体的な政策を国民は知りたがっているのに、これでは、国民に訴えるものがない。
また、国会対策については、話合い重視の立場から 政策を分かりやすく丁寧に説明し、野党の意見も積極的に取り入れながら政治を遂行すると言っている。
野党民主党は、政権を獲得するため、一層 与党との対決色を強めて、衆院を解散に追い込もうとしている。民主党に、話合いや協調姿勢が微塵もないのに、福田さんが野党との協調路線を強調するのは、白々しい感じしか受けない。
国民には、主体性も自信もない総理という印象しか与えない。
憲法改正問題については、“改正するとすれば、どのような内容かなど、すべての政党の参加の下で、幅広い意見を求めて真摯な議論が行われることを強く期待しております”と述べるにとどまっているが、これでは福田さんは 憲法改正を必要と思っているのかどうか さえ分からない。“すべての政党の参加の下で…”と言うが、憲法改訂反対を貫く社民党や共産党が議論に参加するはずはない。
福田さんが、憲法改正に前向きでないことだけは、はっきりしたようだ。
大田経済財政相が、経済演説で「もはや日本は『経済は一流』と呼ばれる状況ではない」と敢えて言及したように、今 我が国は、経済面でも大きな課題を抱えている。
まず第一に、膨大な債務を抱える国の財政再建問題を挙げねばならない。最近、政府目標の平成23年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化は、困難と言われるようになってきた。
アメリカのサブプライム 問題(低所得者向け高金利住宅融資の焦げ付き)の影響もあって、株価は大幅に下落している。更に石油価格の高騰とも相俟って我が国経済には、暗雲が漂い始めている。
スタグフレーション(不況の中でのインフレ)に陥る懸念も 囁かれている。
福田施政方針演説からは、このような差し迫った現実に 正面から向き合おうとする姿勢は 察せられない。
財政再建と経済発展は不可分な関係にある。
我が国が直面している問題への対応は、構造改革しかない。
財政再建のためには、行政改革により徹底した歳出削減を行うべきである。それでも不足分は増税も考えねばならない。
総理としては、政府の歳出削減策を十分説明し、不足財源のための増税(含 消費税)は 率直に国民に訴えるべきではないか。
経済発展のためには、規制改革は不可欠であり、今後一層推進していく必要がある。
小泉内閣時代に、規制緩和の重要性が 叫ばれたのに、最近は逆行する動きがある。
最近、住宅建設着工戸数が激減し、これが不況の一因にもなっている。これは耐震強度偽装対策として、まだ体制も整わないのに、建築基準法による規制を 過度に強化したためである。これは明らかに官製不況であるのに、政府は非を認め、改めようともしない。
こんな規制が消費者行政だと言うのなら、それは とんでもない間違いだ。
今回の福田総理の施政方針演説の中に、構造改革という言葉は見当たらなかった。福田さんからは、構造改革に対する熱意は ほとんど感じられない。
「聖域なき構造改革」を高く掲げて登場した小泉内閣が、圧倒的な国民の支持を得たことを 思い返してもらいたい。
福田さんからは、目指すべき国家像、政治理念や国民に対するリーダーシップは、全く感じられず、一国の指導者としての施政方針演説として、評価できる内容とは とても言い難い。
福田さんの施政方針演説を聞いて、これでは、自民党も民主党も50歩100歩だと感じた国民も多かったのではないか。
福田総裁の下での総選挙で、果たして自民党が過半数を取れるかどうか、あやしくなってきた。
(2008.02.01)
次回は(第168回)
「杉並区立和田中夜スペ」(2008.02.15)
【出来事】
- 1月15日 第168臨時国会(再延長国会)閉会
- 1月18日 第169通常国会召集(会期 6月15日までの150日間)
- 1月24日 インド洋での補給活動再開のため護衛艦「むらさめ」が横須賀基地を出航 補給艦「おうみ」は25日佐世保基地を出航 2月中旬から補給活動再開はの予定
- 1月26日 福田首相 G8サミット(洞爺湖サミット)の議長の立場から 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席して 地球温暖化や世界経済をテーマに特別講演
- 1月27日 大相撲初場所千秋楽 横綱白鵬が14勝1敗で優勝
- 1月27日 大阪府知事選 橋下徹氏(38才 自民府連推薦 公明府本部支持)が当選
- 1月30日 衆参議長の斡旋により 与野党が「ガソリン税などの暫定税率を10年間維持するとした税制関連法案について年度内に一定の結論を得る」等で合意 このため与党側は提出予定の暫定税率などの期限を2か月延長する法案(つなぎ法案)を取下げ
- 1月30日 中国製輸入冷凍ギョーザに混入していた有機リン系農薬による意識不明の重症を含む中毒患者が千葉 兵庫県等で多数発生していたことが判明
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