◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2008/03/01】



◇第169回◇
毒入り餃子と食の安全

 最近、食品偽装表示が多発して 問題になっていたところに、今度は 中国製輸入冷凍餃子による食中毒事件が発生し、食の安全が大問題になっている。
昨年 相次いで発覚した食品偽装表示の不祥事は、不二家、ミートホープ、白い恋人の石屋製菓、赤福、マクドナルド、船場吉兆等 老舗と言われる有名企業による産地や賞味期限の偽装表示であったが、腹痛等 健康に関する実害は起きていない。
 一方、中国製冷凍餃子中毒事件は、多くの人々に健康被害をもたらしている。
中毒事件発覚の発端は、千葉、兵庫両県で市販の中国製冷凍餃子を食べた3家族 10名が、直後に 吐き気や腹痛、下痢等の中毒症状を訴え、重症患者や意識不明の重体を含む9名が入院していたことが判明して 事件が明るみに出た(1月30日)。
いづれも 高濃度の有機リン系農薬「メタミドホス」が検出されており、製造元は中国河北省の「天洋食品」であり、輸入したのは「JTフーズ」であった。
その後、被害は全国に及んでいたいたことが判明、天洋食品の冷凍食品を食べて 保健所等へ健康異常を訴えた人は 約3000人に上り、医療機関を受診した人は 1000人近くに達していたのである。
 尚、天洋食品製の冷凍食品からは、メタミドホス以外にも、ジクロルボスや毒性の強いパラチオン等の農薬も検出されている。

 多くの中毒患者を出した毒入り餃子事件は、実害がなかった食品偽装表示事件とは、全く性格を異にし、“食の安全”ということで 同じ範疇で論ずべきものではない。
食品偽装表示は、取締りを強化し、再発を防げばよいが、毒入り冷凍餃子の方は そうはいかない。
 問題の冷凍餃子から検出された農薬の濃度は異常に高く、残留農薬とは考えられない。何者かの手によって故意に農薬が混入されたものと思われる。不特定多数の人命を狙った悪質な殺人未遂事件であり、毒入り食品テロとも言うべきものだ。
今回の毒入り餃子を食べて一時意識不明の重体に陥った千葉県の幼女(5才)は、幸いにも一命を取り止めたが、もっと大量の餃子に致死量の農薬が混入されていたら…、病原菌やウイルスが混入されていたら…等と想像すると恐ろしいことだ。
 然るに、政府には 危機意識が あまり感じられない。
舛添厚労相は、横浜の検疫施設を視察した福田首相からの指示を受け、輸入加工食品の検疫体制を強化するため、全国の検疫所の食品衛生監視員を増員する考えだと言う。勿論、中国産食品から 多数発見される残留農薬対策は 強化しなければならない。
しかし、今回の毒入り餃子事件は、残留農薬の問題ではない、即ち 衛生管理や検疫の問題ではないだろう。
日本人の命を狙った悪質な犯罪、食品テロとも言うべき重大な刑事事件だというのに、横浜検疫施設を視察する福田さんの神経を疑う。パフォーマンスも いい加減にしてもらいたいものだ。

 事件の背景、犯行の狙いや意図はどこにあるのだろうか。
この事件で、直接損害を蒙るのは、製造元の天洋食品である。当分 操業は困難になり、信用失墜は 会社に致命的な打撃を与える。
中国政府にとって、中国製食品の国際的な信頼を損なうことは 大きなダメージになる。特に北京オリンピックを控え、中国の食の安全への信頼失墜は 何としても避けたく、対応に苦慮しているものと思われる。
天洋食品を捜索した中国当局者は、製造工程に問題はなく、同工場内で農薬が混入されたとは考えられないと表明した。また日本側と協力して調査したいとも述べている(2月15日)。
これを受けて 天洋食品側も、我々こそ最大の被害者だと述べる等、工場内での薬物混入を強く否定している。

 科学警察研究所の鑑定によると、餃子から検出されたメタミドホスには 一定の不純物が含まれており、この種のメタミドホスは我が国には存在しないことが確認されている。日本には 研究機関で試薬として使われる高純度のメタミドホスしか存在しない。
また同鑑定の結果、袋の外側から薬物が浸透する可能性はない、また、袋には 再密封の形跡もないことが判明している。
これらのことから、日本の警察当局は、殺虫剤「メタミドホス」は中国国内で混入されたとの見方をしている。
 これに対して、中国側は、メタミドホスは 袋の外側から内側に浸透すると日本側の鑑定結果を否定する等、中国で混入されたものではないと表明し(2月28日中国側記者会見)、日本の警察当局と真っ向から対立している。
中国政府としては、農薬の混入は 中国々内で行われたものではないことを 強くアピールして、毒入り餃子事件の幕引きを図りたいと思っているようだ。
中国側の捜査の背景に 特別な意図があるとすれば、毒入り餃子事件の真相解明は困難になる。
しかし、それでは 中国産食品に対する不信感は いつまでも解消しない。

 JTフーズをはじめ、冷凍食品各社は、天洋食品の冷凍食品を いち早く自主回収したし、スーパー等小売店も 店頭から撤去した。当然の措置だ。
政府(厚労省)は、全国の関係業者に対して、天洋食品の製品の販売中止と輸入自粛の要請を行うにとどめている。
 米国牛のBSE(狂牛病)問題では、米国政府の度重なる輸入再開の要請にも拘らず、日本政府は 長期間に亘って 米国産牛肉の輸入禁止措置を解かなかった。(我が国では、BSEによる人への健康被害は皆無だったし、米国民は、不安なく自国の牛肉を食べていた)
 一方、今回の中国製餃子中毒事件では、意識不明の重体、重症患者を含む多数の中毒患者が出ているのに、政府は なぜ天洋食品の冷凍食品の輸入禁止措置を 直ちに打ち出さないのか。事件の全容が解明され、再発の危険が完全に解消するまで、禁輸措置を取ることを 中国政府に通告すべきではないか。
日本政府は、米国に対しては あれほど強い姿勢をとったのに、中国に対しては弱腰である。
米国には 強く出ても 相手は大目に見てくれるが、中国に対しては 相手の反発を恐れているようだ。
こんな外交姿勢では、米国とも 中国とも 対等な関係は築けない。

 日本では、中国製冷凍食品の安全性に対する信頼は 失われてしまった。
中国産食品は 日本人の食生活に大きく浸透していただけに、今回の冷凍餃子中毒事件は、国民生活にも大きな影響を与えている。
しかし、このままでは、我々は 中国製食品を安心して口にすることはできない。
一刻も早く 事件の全容が解明され、中国製冷凍食品への信頼回復が待たれる。
そのためには、夫々の思惑に捉われず、両国の捜査当局の緊密な協力による徹底した捜査が求められる。それが 日中双方の利益に叶うものだ。(2008.03.01)

 次回は(第170回)「イージス艦と漁船の衝突事故」(2008.03.15)
  【出来事】
  • 2月17日 セルビア南部のコソボ自治州議会 セルビアからの一方的独立宣言を採択(セルビア政府は反撥 ロシアも反対)
  • 2月19日 海上自衛隊イージス護衛艦「あたご」(7700t)が房総半島沖太平洋で漁船に衝突 漁船乗組員2名が行方不明
  • 2月19日 東芝 新世代DVD「HD-DVD」事業からの全面撤退を表明
  • 2月21日 海上自衛隊の補給艦「おうみ」 インド洋で新テロ特措法に基づく給油活動を再開
  • 2月23日 三菱重工業 超高速インターネット衛星「きずな」(宇宙航空研究開発機構と情報通信研究機構が共同開発)を搭載したH2Aロケット14号機の打ち上げに成功 於種子島宇宙センター
  • 2月25日 韓国 李明博新大統領(66才ハンナラ党)の就任式 福田首相と李明博新大統領が日韓首脳会談 於ソウル
  • 2月29日 衆院本会議 2008年度政府予算案と予算関連の税制関連法案を自民 公明両党の賛成多数で可決 参院に送付(共産党以外の野党は欠席)