◇第173回◇
頼りない福田内閣(U)
福田首相の支持率低下の最大の理由は、総理としての政治理念が 国民には さっぱり見えてこないからである。
言い換えると、総理として どんな国家を目指し、国民をどう導こうとしているのか、その辺が 福田さんからは、伝わってこない。
小泉元首相は、聖域なき構造改革という大目標を掲げ、規制緩和、財政再建、特殊法人の民営化、地方分権の推進等、小泉さんが目指す政治目標が 国民の高い支持を得た。特に 郵政民営化では 確固たる信念に基づく執念を見せつけた。
小泉路線を引き継いだ安倍前首相は、戦後レジームからの脱却、主張する外交等の指標のもとに、短命内閣だったにも拘らず 大きな実績を挙げている。例えば、憲法改正手続きに必要な「国民投票法」の制定、「教育基本法」の改正、防衛庁の省への昇格等々は 歴代内閣が成し得なかった課題であった。
福田さんの間違いは、昨年の参院選での自民党の大敗は、小泉⇒安倍政権の路線や政策が 国民に否定されたものと受け止め、これを転換しようとしたことである。
安倍前政権の支持率低下や参院選惨敗の原因は、社会保険庁の公的年金5,000万件の記載漏れの発覚に尽きる。更に付け加えるならば 閣僚の不適切発言や不祥事である。
郵政民営化に代表される小泉さんの聖域なき構造改革、戦後レジームからの脱却を目指した安倍さんの政策や実績が否定されたわけではなかった。
福田内閣から見えてくるのは、構造改革の後退や族議員の復活台頭であり、また 旧体質の官僚機構の温存である。
福田さんからは、「国民の目線で」「消費者が主役」等という言葉がよく聞かれる。いづれも耳障りはいいが、中味は何もない。
「国民の目線で」とは どういう目線なのだろうか。千差万別の国民の目線とは?。一国のリーダーたる者は、国や国民全体を大所高所から見る視点が必要で、国民の目線では困るのである。
「消費者が主役」というが 国民は全て消費者であると同時に、生産者であったり、サラリーマンや自営業等 社会のさまざまな側面を担っている。
国民の消費の側面のみを重視する政治は 片手落ちであり、間違いだ。
また、施政方針演説では「国民本位の行財政への転換」と述べている。
今までは 国民本位でなかったことになる。では、これまで 誰のための行財政をやってきたのかと問うてみたい。どの政党も国民のための政治と言うだろう、当たり前ではないか。
最近、「後期高齢者医療制度」の呼称が「長寿医療制度」に変わったそうだが、これは福田総理が舛添厚労相に指示したものだという。「後期高齢者医療」だろうと「長寿医療」だろうと、どうでもいい話だ。こんなつまらんことに気を使う暇があったら、もっと大きなことを考えてもらいたい。(長年使ってきた言葉「後期高齢者」の方が実態をよく表していると思う。「長寿医療」という言葉は あまり普及していないようだ。)
これらの言葉は、国民に媚びた言葉の誤魔化しである。こんな言葉では 国民は信頼のしようがない。
これまで福田さんが発した言葉を拾ってみると 首を傾げたくなるものが 多々ある。
「衆院の解散についても 野党と話し合う」と福田さんは 総理大臣就任の時に述べている。
内閣総理大臣の衆院の解散権は、内閣が 議会と対立し 行き詰まった時に、国民に信を問うために 憲法が 総理大臣に特別に与えている権限である。首相の伝家の宝刀とも言うべき憲法上の権限を、最初から 放棄するに等しい 総理大臣にあるまじき発言と言わざるを得ない。
低姿勢振りをアピールして野党の協力を得たいと思ったのだろうが、これでは野党から足元を見透かされ、軽く見られるだけだ。
「私は相手(中国、韓国)が嫌がることはしない…」と言って 昨年9月 総裁選の時、早々と靖国神社に参拝しないことを表明した。
しかし、中国は 東シナ海で ガス田の一方的な採掘を強行し、韓国は 竹島を不法に実効支配している。我が国固有の北方領土は、ロシアが 長年不法占拠している…等々。
中国や韓国等にも、相手が嫌がることはしないように言ってもらいたいものだ。
中国や韓国が、日本の総理大臣に “靖国神社を参拝するな”と言っていることを 福田さんはどう思っているのだろうか。これこそ 最大の内政干渉ではないか。
外交はお互いの国益のぶっつかり合いだ。相手が嫌がることでも 国益に関わることなら これを如何にうまく実現するかが外交だ。
この福田発言は、外交の最高責任者としての自覚を欠く不適切発言だ。
「中国側は、日本と共同して、しっかり調査したいと言っているんじゃないですかね。非常に前向きですね」。これは、中国からの輸入毒入り餃子事件に関して、中国が日本側の鑑定結果を否定して、農薬は中国で混入されたものではない(言い換えると日本で混入されたもの)と表明した(2月28日)ことに対する福田さんのコメントである。
一方、警察庁の吉村長官は、中国側の発表には、“看過出来ない部分がある”“理解できない”と強い調子で反論している。
福田さんの発言は、これでも日本の総理大臣の発言か、中国側の発言ではないかと思わせるものだ。
福田さんが いかに親中派とはいえ、中国に媚びた発言であり、総理としての見識を疑わせるものだ。
最近 世界の注目を集めているチベット問題では、世界各地で抗議行動が行われ、先進諸国首脳は こぞって中国批判を展開している。
しかし、我が国政府は、中国によるチベット人への人権弾圧、チベット騒乱に対する強権措置をどう評価しているのか、福田首相の口からは、中国の主張に配慮した曖昧な言葉しか聞かれない。これでは、日本は 国際社会に対し、人権問題について 誤ったサインを送ることになる。
チベット問題に対する米英仏独の首脳と福田首相の温度差は、歴然としている。
福田さんの外交姿勢は、安倍前総理が目指した“主張する外交”とは180度違う。いづれを国民が支持するか、自明のことだ。
当面、総理としての福田さんの責任は、国家、国民のために必要な法案は、執念をもって成立させることである。それは憲法59条の定める手続き(衆院での3分の2以上の多数での再可決)をフルに活用することだ。
衆参両院の意見が異なる場合、衆院で再可決することは、憲法尊重の観点からも 与党議員の当然の責任である。
与野党が、目先の大衆迎合主義や人気取り政策を競い合うようでは、もはや衆寓政治、明日の日本はない。(2008.05.01)
次回は(第174回)
「 航空自衛隊イラク派遣違憲判決」(2008.05.15)
【出来事】
- 4月20日 李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領来日
21日福田首相と日韓首脳会談
- 4月21日 大型原油タンカー「高山」(15万トン 日本郵船)が中東イエメンのアデンの東約440キロの沖合で不審船から発砲を受け被弾
- 4月26日 長野市で北京オリンピック聖火リレー
- 4月26日 福田首相 ロシアのプーチン大統領 メドベージェフ次期大統領と個別に首脳会談 於モスクワ
- 4月30日 衆院本会議 ガソリン税などの暫定税率を復活させる改正租税特別措置法などの税制関連法が与党3分の2以上の多数で再可決 成立
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