◇第175回◇
朝青龍の“だめ押し”
今年の大相撲夏場所は、琴欧洲が優勝して、5月25日に千秋楽を終えた。
大関琴欧洲が初優勝したのをはじめ、本命と見られた朝青龍、白鵬の両横綱が4敗するなど 波乱も多く、話題の場所となった。
特記すべきは、何といっても琴欧洲の健闘振りだろう。
琴欧洲は、平成17年11月場所後、大きな期待を受けて大関に昇進したが、その後は不振を続け、今後に不安を感じさせていただけに、朝青龍、白鵬を破っての14勝1敗での優勝は、横綱を凌ぐ価値あるものと言ってよい。
横綱昇進問題も話題になっているが、これについて 北の湖理事長は、来場所の内容を見てから…とか、前場所(春場所)までの不本意な成績も考慮する…等と慎重な言い回しをしている。現時点では、当然だろう。
しかし、来場所(7月名古屋場所)、今回と同じ相撲内容で優勝すれば、横綱昇進が現実味を帯びてくることは間違いない。
14日目に 大関琴欧洲が優勝を決めたため、千秋楽の興味は、朝青龍、白鵬の両横綱対決に移った。
結果は、朝青龍が引き落としで勝ったが、両手をついた白鵬の背中を 朝青龍が 押して “だめ押し”をしたことが 問題になった。
テレビ実況のアナウンサーも、即座に朝青龍の“だめ押し”を非難していた。
敗れた白鵬は 起き上がると右肩で朝青龍を押し、一瞬 両者が睨み合った。
マスコミは、朝青龍の“だめ押し”を非難するもの、勝負決着後の両横綱の睨み合い等の行為を非難するものもあった。
北の湖理事長は、朝青龍の“だめ押し”については、勝負の流れの中の動きで 意図的なものではなく 非はない、悪いのは カットなった白鵬だとして 白鵬の師匠、宮城野親方に厳しく指導するよう注意した。
ところが、横綱審議委員会は、白鵬のみに非を認めた北の湖理事長に反発し、相撲協会に 両横綱を呼んで注意するよう進言し、結局 北の湖理事長が両横綱に注意して決着した。
また、渡海文部科学大臣が「横綱は品格が問われる。厳に慎んでもらいたい」と苦言を呈した。大臣が口を挟むべき問題ではないし、発言内容も不適切だ。
この件については、色々意見があるだろう。
私は、北の湖理事長の見解を支持したい。(横綱審議委員会や渡海文科相の意見は、格闘技の本当の厳しさを 知らない素人発言だ)
朝青龍の“だめ押し”は、勝負に徹した技の一連の流れであって、非難さるべき筋合いはないと思う。(引き落としで 前屈みになった白鵬の反撃に備え、朝青龍が咄嗟に<または 本能的に>“だめ押し”をすることは 理解できる)
相撲に限らず、格闘技には、技術と共に勝負に賭けた強い闘志と執念が求められる。
例えば、ボクシングでは、相手がロープに もたれかかり ダウン状態になっても、レフリーがストップをかけるまでは、打ち続ける。相手が倒れても、勢い余って打つこともある。まさに“撃ちてし止まん”の精神だ。
格闘技には、相撲、、レスリング、ボクシング、柔道、剣道…等々多くの種目があるが、いづれも相手を倒すまでは…と言う闘志は不可欠である。
敗れた白鵬が相手を押したり、睨み付けたことも、問題にする程のことではない。勝負が決まった後に…と言うが、勝負が決まった瞬間に 頂点にまで高まっていた闘志を、一瞬に解消することはできない。これも、土俵上で 張り詰めた闘志の残像と理解したい。
日本人力士の優勝は、平成18年初場所の元大関栃東を最後に 途絶えており、今後も当分期待できない。
横綱も、平成15年1月に引退した貴乃花を最後に、外国勢(朝青龍、白鵬 )の独占が5年半も続いている。日本人横綱の誕生は、これまた当分期待できない。
朝青龍の体格は、日本人力士と比べても 決して優れたものとは言えない。
日本人力士より優れているのは精神面の強さだ。極限まで高められた闘志とそれに裏打ちされた技量だ。
土俵上で見せる気迫は、日本人力士には 見られないものがある。
朝青龍から 勝負に対する執念や土俵上での気迫を取り去ったら、あとには何も残らない。
日本人力士には、勝負に執念を燃やし、その流れで“だめ押し”にまで至る力士は、あまり見かけない。
格闘技の原点、強靭な闘志、勝負に燃やす執念という意味では、朝青龍の“だめ押し”には 大いに見習うべきものがある。
今、日本人は、色々言いながらも、物質的には 豊かな生活を営んでいる。反面、精神面では 貧困だ。
昔に比べると、日本人は、我慢、忍耐、根性、執念、闘志…等々 大切なものを失ってきた。
モンゴル勢をはじめ、外人力士に乗っ取られつつある大相撲界の現状は、まさに日本人の精神面の貧弱さを映し出しているようだ。
(2008.06.01)
次回は(第176回)
「民主党の愚」(2008.06.15)
【出来事】
- 5月22日 沖縄 奄美地方が梅雨入り
- 5月24日 G8(主要8カ国)環境相会合(26日まで) 於神戸
- 5月25日 大相撲夏場所千秋楽 大関琴欧洲が14勝1敗で優勝(14日目に優勝決める)
- 5月25日(日本時間26日午前) 米国の火星無人探査機「フェニックス」が火星への軟着陸に成功 (2007.08.04 米航空宇宙局が打ち上げたもの)
- 5月28日 第4回アフリカ開発会議(TICAD4)5月30日まで 於横浜
- 5月28日 九州南部 四国地方が梅雨入り
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