◇第176回◇
民主党の愚
平成20年第169通常国会は、6月15日まで150日間の会期を、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済連携協定(EPA)等 条約の国会承認を得るため、6日間延長して21日に閉会することになったが、衆参ねじれ現象の弊害ばかりが目立つ国会だった。
【注】
条約の国会承認については、予算と同様、先に衆議院で議決した条約を参院が否決したり、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しなかった場合は、衆院の議決を国会の議決とすると憲法で定められている。(憲法第61条)
今回の場合は、衆院で承認された条約議案を野党が多数を占める参院が採決をしなかった。6月21日には、参院が条約議案を受理して30日が経過して 国会の自然承認が得られるため、会期を21日まで延長したもの。
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福田首相は 不人気を極め、支持率は 20%にまで下がった。
一方、民主党は、今こそ国民の支持を集め、政権獲得の足掛かりを作るべき好機なのに、支持率は 横ばいで もたついている。
福田内閣の支持率が ここまで落ちてくると、民主党への支持率は 何もしなくとも、自ずから上がってくるはずなのだが…
民主党の伸び悩みは、参院で過半数を占める野党の権力を、国家や国民のための視点ではなく、政権獲得のための党利党略、専ら 福田内閣打倒のために用いていることに起因する。
国民から見ると、民主党は、政府を困らせることのみに 精力を使っているとしか見えない。行政の停滞や混乱の弊害は、結局国民に しわ寄せがくる。
昨年秋、期限を迎えたテロ特措法の延長に、民主党が反対したため、海上自衛隊によるインド洋での国際給油活動は 一時中断を余儀なくされた。この結果、我が国は、国際的な信用を害し、国益を損なうことになった。
民主党は、国際社会における我が国の立場や日米関係を どう考えて テロ特措法の延長を阻止しようとしたのだろうか。この点についての民主党からの説明はない。国益より 党利党略を優先したもので 無責任である。
日銀総裁人事など 国会同意人事案件に対する民主党の対応も、国民には理解できない。
日銀総裁(副総裁)人事に関しては、大蔵省や財務省出身だからという不可解な理由だけで 政府提案人事を拒否したし、また 政府提示案が、事前にマスコミに漏れたからと言って 政府の提示を 一時拒否した案件もあった。(民主党は、その後 マスコミの批判を受け 方針を変更し、政府の再提示を受けることにした)
政府が同意を求めた池尾和人氏(慶大教授)の日銀政策委員会審議委員への起用案について、民主党は 当初同意する方針だったのに、同人が郵政民営化推進論者だったという理由で反対する国民新党の意向に配慮して 今国会での同意を留保し、更に次期国会では否決することにして、国民新党をつなぎとめた。
このように民主党は、国会同意人事の判断を、適任かどうかの視点ではなく、政局重視の党利党略の観点から決めている。極めて遺憾だ。
民主党の理不尽な抵抗のため、日銀の副総裁と政策委員会審議委員1名の空白は 今だに続いているし、国家公務員の天下りを監視する目的で 10月に新設予定の「再就職等監視委員会」の委員長と4人の委員も民主党の反対で決まらず、このままでは10月からの「再就職等監視委員会」は スタートできなくなる。
参照⇒〔第171回〕「日銀総裁人事問題」
昨年、民主党が国会(参院)に提出した「農業者戸別所得補償法案」は、実施に必要な1兆円の財源の説明もなく 無責任法案と言うべきものだ。
これは、農家の販売価格が生産額を下回った場合、国がその差額を補償するもので、典型的な ばら撒き 人気取り政策だ。我が国農業の国際競争力を益々を低下させるだけで、農業育成には 逆効果である。民主党の考え方は、極めて低次元であり 幼稚だ。
尚、同法案は、今国会 衆院で否決され、廃案になった。
衆院で議決した揮発油(ガソリン)税の暫定税率などを担保する歳入関連法案を、参院では 民主党が採決させなかったため、4月から ガソリンの暫定税率(約25円/L)が 期限切れで失効し、ガソリンの値段が 一時的に安くなった。
しかし、これにより、国、地方の歳入不足が年間ベースで約2兆6,000億円になり、この財源対策についても 民主党は 何ら具体的な説明をしていない。国民にとって 税金は安いにこしたことはないのだが、これは 民主党の無責任な うわべだけの人気取りに過ぎない。
結局 憲法の規定に従い、歳入関連法案が参院に送られて2ヶ月経過後の4月30日、衆院本会議で3分の2以上の賛成多数で再可決され、ガソリン価格は元に戻ったが、民主党の態度は 一時的に 社会を混乱に陥れただけだった。
去る6月6日、民主党など野党は、後期高齢者医療制度廃止法案を 参院本会議で可決した。
従前の老人保健制度では、遠からず制度が破綻することが 目に見えている。これは 民主党も よく分かっているはずだ。
後期高齢者医療制度に反対なら、具体的な対案を示して 国会で十分議論すべきだ。
対案を示すことなく、後期高齢者医療制度を廃止して、取り敢えず以前の老人保健制度に戻すと言うのでは、あまりにも無責任だ。
民主党など野党は、与党が 後期高齢者医療制度廃止法案を 衆院で可決しないことに反発して、福田首相の問責決議案を参院で議決した。
民主党提出法案を 衆院が同意しないことが、どうして総理の問責理由になるのか、まことに非常識であり理不尽である。
参院での首相問責決議は 法的には 何の意味もない。
参院で首相の問責決議を議決した民主党は、少なくとも今国会では 衆参両院での審議拒否を決めているが、これこそ政党の自殺行為である。
民主党は、現在の逼迫した国家財政、財政再建をどう考えているのだろうか。
その他にも、今 我が国には、社会保障、安全保障、外交、経済や産業政策、教育、憲法改正等々、国の将来を左右する重要課題が山積している。民主党からは、これら国の重要課題についての方針や考え方が 何一つ見えてこない。
このような民主党に 政権を任せることには、多くの国民が不安を感じている。
今の福田内閣には 期待が持てない。民主党には、それ以上に期待できないというのが、国民の率直な気持ちだろう。
小泉元首相が構造改革を提唱した時、民主党の鳩山幹事長は、“元々改革は民主党が元祖だ 小泉さんに お株を取られた ”という趣旨の発言をしたことがあった。
今、福田内閣のもとで、改革は停滞し、後退しつつある。これが福田不人気の要因の一つでもある。
民主党が本当に改革政党なら、今が好機。改革を大きく掲げて 目指す方向を具体的に示すことができたら、民主党への国民の期待はもっと高まると思うのだが…。
改革には、ある面で痛みを伴う。今の民主党には、改革路線は到底望めない。
「国民の生活が第一」を 金科玉条の如く掲げ、目先の人気取りに明け暮れ、国の将来ビジョンも描けない民主党には、期待する方が無理だろう。
(2008.06.15)
次回は(第177回)
「タクシー チケットと霞ヶ関」(2008.07.01)
【出来事】
- 5月31日(日本時間6月1日) 米航空宇宙局(NASA) 星出彰彦宇宙飛行士ら7人と日本の有人宇宙施設「きぼう」の「船内実験室」等を乗せたスペースシャトル「ディスカバリー」打上に成功 於ケネディ宇宙センター
- 6月1日 福田首相 独 英 伊の欧州3か国訪問に出発 独メルケル首相 英ブラウン首相 仏サルコジ大統領 伊ベルルスコーニ首相と個別に会談 (5日に帰国)
- 6月2日 近畿 東海 関東甲信地方が梅雨入り
- 6月6日 参院本会議 後期高齢者医療制度廃止法案を民主党等野党の賛成多数で可決 衆院へ送付
- 6月8日 東京秋葉原駅近くの路上で刃物による通り魔事件発生 7人死亡 10人が重軽傷
- 6月10日 九州北部(含む山口県)地方が梅雨入り
- 6月11日 中国地方が梅雨入り
- 6月11日 参院本会議 民主 社民 国民新党提出の福田総理問責決議案を野党の賛成多数で可決 これに対し与党(自民 公明)は 内閣信任決議案を衆院に提出 12日に衆院本会議で与党の賛成多数で可決
- 6月11日 日朝実務者公式協議 於北京 12日まで(北朝鮮は 拉致問題の調査再開 よど号ハイジャック犯の引き渡しに協力を表明 日本側は 日朝間の人的往来規制 チャーター便の乗り入れ禁止措置を解除 人道支援物資運搬に限り北朝鮮籍船の入港容認)
- 6月13日 衆議院本会議 6月15日までの今国会の会期を21日まで6日間延長することを自民 公明両党などの賛成多数で議決
- 6月14日 午前8時43分頃岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強の大型地震発生 死者行方不明20名以上 重軽傷200名以上に達する見込み(震源地は岩手県内陸南部 マグニチュード7.2 「平成20年岩手・宮城内陸地震」と命名)
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