◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2008/07/15】



◇第178回◇
核と拉致(T)

 去る7月10〜12日、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の首席代表会合が 約9ヶ月ぶりに北京で行われた。
これは、6月26日に 北朝鮮が提出した核開発計画の申告を受けて開催されたもので、核開発計画の申告を検証する枠組や北朝鮮が求めている経済・エネルギー支援問題等について話し合われた。
 この会合では、検証の指針とされる “核施設への立ち入り調査” “追加的な記録の提出” “核技術者への聞き取り調査” の3点について、合意に達した。また、IAEA(国際原子力機関)の関与についても同意したといわれる。
北朝鮮へのエネルギー支援は、核施設の無能力化と並行して進め、今年10月までの完了を目指すことで 認識が一致したという。(日本は 環境が整い次第、できるだけ早期に支援に参加する としている)

 しかし、今回の6か国協議によって 北朝鮮の核廃棄が前進したと考えるのは 早計である。
核開発計画申告の検証については、具体的な方法や手順も決まっておらず、円滑に行われるとは とても考えられない。北朝鮮側の引き伸ばし戦術や抵抗も予想され、相当な時間を要するだろう。
何よりも、今回の北朝鮮の核開発計画の申告自体が極めて不完全なものであり、これまでの経過などから 北朝鮮が本気で核の廃棄を考えているとは 思えないからである。

 そもそも 北朝鮮提出の核開発計画の申告には、核兵器の保有状況(どの程度の核兵器を どこに どのくらい保有しているか等)は 含まれていない。高濃縮ウランによる核開発や核拡散問題(シリアの核開発への協力等)も 申告には含まれず、別の文書で取り交わすことになっている。(文書は、ウラン濃縮や核拡散に関しては、米国の懸念を北朝鮮が認識するという程度の内容)
このように、北朝鮮の申告は、全ての核兵器の完全廃棄という基本原則からは 程遠く 不十分なものである。

 北朝鮮の核開発計画の申告は、約束の期限を半年も過ぎて提出され、しかも不十分なものであったにも拘らず、アメリカは、テロ支援国家の指定解除、敵国通商法の適用除外に踏み切った。ブッシュ米大統領は、議会に テロ支援国家の指定解除を通告しており、45日後の8月11日には 指定解除が発効することになっている。

 最近の米朝非公式協議は、北朝鮮ペースで進められていたように見受けられたが、案の定、北朝鮮は 思惑通り、アメリカの大幅譲歩を勝ち取ったと言うべきだろう。
北朝鮮は、核兵器を保有することが、外交上 如何に強力なカードになり得るかということを 自ら実証したわけで、簡単に 核(カード)を手放すとは思えない。
今や アメリカも、北朝鮮の核の完全廃棄を 本気で求めているのかどうかも 疑問だ。
 このままでは、北朝鮮は 核兵器保有国として 近隣諸国の脅威となる可能性が強い。
特に 北朝鮮の核の脅威に 直接曝される我が国としては、今回のアメリカの譲歩は 極めて遺憾であり、拉致問題との関連でも 大きなマイナスであり 残念だ。

 拉致問題に関しては、日朝実務者協議が 6月11〜12日 北京で行われたが、今回の6カ国会議では、日本側の催促にも拘らず 日朝交渉は行われなかった。
6月の日朝協議で 北朝鮮側は、よど号ハイジャック犯の引き渡しに協力する、拉致問題の調査を再開すると表明した。注目されたのは、北朝鮮のこれまでの一貫した姿勢 “拉致問題は解決済み” という主張を 今回は しなかった点であった。
 日本政府は これを一定の前進と評価し、北朝鮮への経済制裁の一部解除の方針を示した。
この程度の協議の内容が、どうして北朝鮮への制裁の一部解除に値するのだろうか。拉致問題については、まだ何も結果が出ていないのに…。
北朝鮮は、再調査をしたが 新しい事実は 出てこなかったと 言い逃れをする可能性が強い。政府の経済制裁の一部解除は、北朝鮮を利するのみで、拉致問題の解決を 一層困難にするだけだ。
 今回の北朝鮮の軟化姿勢は、拉致問題の進展を主張するアメリカを意識した北朝鮮が、表面上 柔軟姿勢を示したもので、日本政府の外交交渉の成果ではない。この点を政府は よく認識しておくべきだ。

 拉致問題が未解決のまま、アメリカがテロ支援国家指定の解除に踏み切ったことは、日本国民に大きな失望感を与えたのは事実だろう。
しかし、日本は、アメリカのテロ国家指定解除に先駆けて、北朝鮮への経済制裁の一部解除を表明しておきながら、アメリカが指定解除に踏み切ったら 拉致問題を置き去りにするものだ等と非難したり 反発しているのは、いささか筋が通らないのではないか。これでは、まさに 自分のことは 棚に上げて…である。
これには、今の日本人に根ざす アメリカへの依存や甘えの精神が 見え隠れするが、アメリカの指定解除を批判するなら、日本は 北朝鮮には 筋を通した厳しい姿勢を貫くべきであった。
我々は、アメリカを批判する前に、政府の理不尽な北朝鮮への対応、即ち 経済制裁の解除表明を問題にすべきである。

 日本政府の北朝鮮への経済制裁の解除表明よりも、アメリカのテロ支援国家指定解除の方が、より大きな失望感を 拉致被害家族や多くの国民に与えた。
これは 国民が、頼りない 脆弱な日本外交よりも、アメリカ外交の強力な影響力に期待していたからであろう。
そこには、国民が 自国の外交よりも、他国の外交に期待するという日本外交の情けない現実がある。
政府の北朝鮮への制裁解除の表明等、最近 拉致被害者家族会は、福田首相や政府に不信感を抱き始めたようだ。
政府、外務省は もっとしっかりしてもらいたい。(2008.07.15) ⇒ 次回(第179回)に続く 


 【ちょっと一言】
 自民党の加藤紘一氏(元幹事長)が 去る7月7日 テレビ(BS11)で、平成14年秋 拉致被害者5人が帰国した際 政府が 5人を北朝鮮に戻さなかったことに関して述べた意見が、問題になっている。
加藤氏は 「当時官房副長官だった安倍前首相を中心に (拉致被害者5人を北朝鮮に)返すべきでないと決めたことが、日朝間で拉致問題を打開できない理由だ…云々」と 5人を北朝鮮に返すべきだったと主張し、当時の政府の対応を批判した。
もし、加藤氏が言うように、5人を北朝鮮に返していたら、北朝鮮側は “5人は、自分の意思で 自発的に帰ってきた” と言って北朝鮮の宣伝に利用されたことは、間違いない。5人は 再び日本に帰れなかった可能性さえあった。
まさに 精神構造を疑わざるを得ない不見識極まりない発言で 言語道断、驚いた。いま時 こんな考えを持つ国会議員がいたとは、しかも、自民党の有力議員の中に。
こんな議員の存在こそが、拉致問題解決を阻害している。
拉致被害者「家族会」「救う会」は、直ちに抗議声明を出した。当然だ。(2008.07.15)

 次回は(第179回)「核と拉致(U)」 (2008.08.01)
  【出来事】
  • 7月2日 鹿児島県奄美地方が梅雨明け
  • 7月4日 四国地方が梅雨明け
  • 7月6日 九州地方(含 山口県)が梅雨明け
  • 7月6日 取材のためのヘリコプターが青森県大間町大間崎沖で墜落(青森朝日放送のアナウンサー カメラマンら搭乗者4人全員死亡の見込み)
  • 7月6日 福田首相 ブッシュ米大統領 日米首脳会談 於北海道洞爺湖町(北海道洞爺湖サミット会場ホテル)
  • 7月7〜9日 第34回主要国首脳会議(G8北海道洞爺湖サミット) 於北海道洞爺湖町の「ザ・ウィンザーホテル洞爺」
  • 7月10〜12日 北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の首席代表会合 於北京
  • 7月13日 大相撲名古屋場所初日 (愛知県体育館)