◇第179回◇
核と拉致(U)
核問題と拉致問題とは、その本質が根本的に違い 同列には 論じられない。
核開発や核兵器保有の権利は、どこの国も 持っているはずだ。米国、ロシア、中国も 核兵器は 公然と持っている。
核兵器は、破壊力が極めて大きく 他国に大きな脅威を与えることから、新たな核開発や核兵器の保有は、国際社会の中で規制していこうということであり、北朝鮮の核廃棄をめぐる6カ国協議も その一環である。
したがって、国際社会の要請に応じて 核を放棄する代わりに、その代償を求めることは 理解できる。即ち、北朝鮮が核廃棄の代償として、核廃棄を求める国々に、相応の経済支援等を求めること自体は 不当とは言えないだろう。(但し、北朝鮮は、国際間の約束を 反故にする等、国際信義を平気で踏みにじり、核をカードに 他国に対する要求を 次々にエスカレートさせる狡猾な態度は、決して国際社会から 受け入れられるものではない)
しかし、拉致問題は違う。北朝鮮による国家犯罪であり、しかも 現在進行中の犯罪である。北朝鮮は テロ支援国家ではなく、テロ国家そのものなのである。
犯罪行為を中止して 元に戻すから、その代償をよこせ という問題ではない。泥棒が 盗品を返すから 金をよこせ と言うのと同じだ。
拉致という国家犯罪に対し、我が国は 経済制裁を科しているいるのだから、北朝鮮の犯罪が完全に解消するまで、即ち 拉致被害者全員の帰国、拉致実行犯人の引渡し、損害賠償や謝罪などが完了するまでは、制裁を解除すべきではない。段階的に解除する問題でもない。
6月の拉致問題に関する日朝協議の結果を受けて、政府が 北朝鮮への経済制裁の一部解除の方針を示したことには、拉致被害者家族をはじめ 国民の間に 批判が高まった。
このため、政府は その後、制裁解除は 北朝鮮側の再調査の着手が条件だ などと弁解がましいことを言っているが、我が国が この時点で 制裁解除の方針を表明したことは、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。
北朝鮮問題に対する福田首相の姿勢が 極めて曖昧である。
政府は 米国に対し、拉致問題の進展がない限り、テロ支援国家の指定を解除しないよう要請していたと言う。
しかし、福田首相は、米国が指定解除を決めたことに関する記者会見で、記者の「指定解除は、日朝交渉を進めるテコを失うことにならないか」との質問に 「全くそのようには 考えていない」と答え、「日米の緊密な連絡」 の必要性を繰り返すのみであった。また 「核問題が解決するならば 歓迎すべきこと」 とも述べて、アメリカのテロ支援国家指定解除に 賛意とも受け取れる言い方をしている。
我が国の指定解除反対の要請を無視して、指定解除に踏み切った米国の対応を “歓迎すべき” と言う福田さんの発言は、アメリカ追従どころか、支離滅裂と言うべきだろう。
米国には、米国の考え方や立場があるだろう。同じように 日本にも 日本の立場や国益がある。
政府は、我が国の考え方や主張は、明確に表明すべきである。こちらの立場を率直に述べることは、それが 相手の意向に反する内容であっても、決して日米の絆を阻害することにはならない。
福田首相の曖昧な態度は 極めて遺憾であり、これでは 相互信頼に基づく 真の日米関係は築けない。
洞爺湖サミットの前日(7月6日)に行われた日米首脳会談時の記者会見で、ブッシュ大統領は「自分は拉致問題を決して忘れない。日本の立場を支持する米国の立場は いささかも変わらない」「米国は 拉致問題を置き去りにすることはない」等と最大限のリップサービスで、日本国民の対米批判の払拭に努めた。
アメリカ国家としての立場とは別に、ブッシュ大統領の拉致問題に寄せる気持ちは 変わらないだろう。
一方 福田首相は相変わらず、北朝鮮の核と拉致の問題は「日米で緊密に連携していきたい」と述べ、全ては アメリカ頼みという頼りない印象のみが残った。
福田首相の考え方は、拉致問題の解決は 日朝国交正常化のために必要というスタンスのようだ。
それは、今年1月の施政方針演説で「全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算し、国交正常化を図る」と述べていることで はっきりしている。
我が国にとって 北朝鮮との国交正常化に メリットは ない、まして こちらから国交正常化を言う必要は 全くない。逆に 北朝鮮は、一刻も早い日本との正常化を望んでいるはずだ。
今は 犯罪国家北朝鮮に 拉致問題の解決を迫るべき重要な時期であり、国交正常化を論じている場合ではない。
今後とも 拉致問題解決には、強い圧力を背景にした対話と説得以外にはない。
国交正常化は、拉致や核問題の解決等、条件が整い、双方 機が熟せば、その時点で考えればいいことだ。(2008.08.01)
【ちょっと一言】
昨年1月の施政方針演説で 安倍前首相は 「拉致問題解決なくして日朝正常化はない」と述べたが、福田さんの表現は 「全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算し、国交正常化を図る」という言い方に変わった。
この両者の言い回しは、根本的に違う。
安倍さんは、拉致問題解決は日朝正常化の必要条件の一つだと言っているのに、福田さんの目標は 日朝正常化であり、そのために 拉致問題の解決が必要と言っている。
福田さんが、わざわざ「…不幸な過去を清算し…」と言っている点も 気懸かりだ。
戦後の反日朝鮮の歴史認識は、日本は朝鮮を侵略し、植民地化して搾取や非人道的行為で 朝鮮人に多大な苦痛を与えたというものである。
福田さんが、反日朝鮮の歴史認識に基づいての清算(謝罪や賠償)を 考えているとしたら 大きな誤りである。
日韓併合条約(1910)は 双方の合意によるものであり、併合後 政府は 朝鮮に莫大な資金をつぎ込み、道路、鉄道等のインフラの整備、産業の近代化、教育の普及振興等に努めた。また朝鮮人も 当時は 同じ日本人であり、非人道的行為等と言うのは 反日的観点からの歴史の捏造だ。
史実に基づいた正しい歴史認識の重要性は 今更言うまでもない。
特に政治家は、よく勉強して 正しい歴史認識を身につけてもらいたいものだ。
参照⇒
〔第51回〜第52回〕「日韓併合問題を考える(その1)〜(その2)」
(2008.08.01)
次回は(第180回)
「63回目の8月」 (2008.08.15)
【出来事】
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- 7月23日 北朝鮮核問題をめぐる6か国協議非公式外相会合 於シンガポール
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