◇第180回◇
63回目の8月
8月は、6日が広島、9日が長崎の原爆忌であり、15日は 63回目の終戦記念日である。
今年も、総理大臣らが出席して 記念式典や戦没者慰霊祭が盛大に行われた。
若い人々にとっては、もはや大東亜戦争も原爆投下も 歴史上の出来事になっているだろう。
原爆忌も終戦(敗戦)記念日も、我が国にとっては 屈辱的な日であるはずだ。
しかし、相変わらず 記念式典等の行事は 毎年盛大に行われている。
大東亜戦争での犠牲者は、戦場で散った軍人に留まらず、婦女子を含む多くの一般民間人にも及んだ。それは、米軍による無差別爆撃、戦場と化した沖縄、朝鮮や満州等にいた在留邦人の戦後に強いられた犠牲等々、近代稀に見る非人道的な殺戮行為によるものであったと言っても過言ではない。広島、長崎の原爆もその一つである。その悲惨さについては、いずれも 優劣はつけられない。
しかし、明らかに国際法に反するこれらの非人道的な 無差別殺戮の責任についての検証は 行われたことがない。
原爆の日や終戦記念日の行事が、純粋に戦没者慰霊のために行われるのなら まことに結構だが、実態は 必ずしもそうではない。
特に、原爆の日には、平和記念式典なるものが催され、この時期には「反戦平和」の言葉が溢れる。
この「反戦平和」という言葉が曲者だ。誰も戦争は望まないし、平和に反対するものはいない。核開発に熱心な北朝鮮の金正日でさえ、平和、平和と言っている。
したがって、「反戦平和」なる主張には 意味がない。「反戦平和」は 政治的に利用されているだけだ。そこにあるのは、反体制、左翼 反米思想である。
この時期になると、反核平和団体と称して、原水協(原水爆禁止日本協議会…共産党系)、原水禁(原水爆禁止日本国民会議…旧社会党系)、核禁会議(核兵器禁止平和建設国民会議…旧民社党系)が気勢をあげる。
この3団体は、反核平和団体とは言いながら、夫々路線が違い、お互いに 対立している。
本当に原爆犠牲者を悼み、平和を願うなら、路線の違いや対立など あるはずがない。原爆の日を利用した 偏った政治思想団体である。
特に、原水協や原水禁は、アメリカに対する核放棄の要求は 声高に主張するが、中国、インド、パキスタンが核兵器を保有した時は ほとんど沈黙していたし、その姿勢は現在も変わらない。
今、国際社会から、核兵器の廃棄を強く求められている北朝鮮の核問題についても、原水協や原水禁から 北朝鮮への非難や抗議の声は聞こえてこない。
原爆犠牲者を追悼すべき原爆の日を、自分達の主義主張の宣伝のために 利用してきた原水協や原水禁が、国民から遊離しているのは当然のことだ。
また、原爆の日の平和式典そのものも、政治的に利用されている面がある。
広島市長の秋葉忠利氏は、平和記念式典の平和宣言の中で、昨年は「…憲法をあるがままに遵守し、米国の時代遅れで誤った政策には“ノー”と言うべき…」などと述べ、憲法改正反対、反米政策を主張している。
彼は、今年も 米国大統領選に関して「…今年11月には、人類の生存を最優先する多数派の声に耳を傾ける米国新大統領が誕生することを期待します…」と述べたのは、いささか意味不明だが 民主党オバマ候補支持の政治的不適切発言と言うべきだろう。
公式な席で 政治的な意見を主張する秋葉氏は 市長として ふさわしくない。また彼は、今問題になっている北朝鮮の核廃棄問題に言及したことは これまで一度もない。
旧社会党出身の秋葉広島市長の言動は、所詮原水協や原水禁と同じものだ。
原爆忌や終戦記念日の行事は、純粋に戦没者を追悼するに相応しいものにすべきである。これを政治的に利用することは 厳に慎むべきだ。
平和式典で北朝鮮核問題に言及しなかったのは、秋葉市長だけではなかった。
福田首相も、平和記念式典挨拶の中で、北朝鮮の核問題には一言も触れなかった。北朝鮮核問題に対する我が国の強い姿勢を 内外に示す好機会であるのに、残念だ。
福田さんは、原爆の日の平和記念式典を単なるセレモニーと考えており、したがって 挨拶の内容は 当たり障りのないものに したのかもしれない。福田さんの曖昧な体質が ここでも現れている。(福田さんは、当日 広島での記者会見では 北朝鮮核問題に触れているようだが、平和記念式典の公式な挨拶の中で述べた方が 強いアピールになる)
現実に目を転じてみよう。
毎年 原爆の日に発せられる“核廃絶”の叫びは、同情はされても、核保有国には いささかの影響も 与えたことはなかったし、これからも 同じだろう。
世界、特に核保有国の常識からは、広島、長崎からの“核廃絶”の声は、犬の遠吠えに過ぎないのかもしれない。
これまで 核保有国で 核を放棄した国はないし、保有国は むしろ増加傾向にあり、保有していると思われるイスラエルや北朝鮮を含めると 既に9カ国にも及んでいる。(米、露、英、仏、中、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)
我が国は、ロシア、中国、北朝鮮という核保有国に囲まれている。核攻撃に対する抑止力は、日米安保条約により 米国の核の傘に頼っているという我が国の現実も 忘れてはならない。
昭和20年8月15日を境に、我が国は、大きく変貌した。
廃墟からの復興を成し遂げ、目覚しい経済発展を実現することができた。そこには 多くの戦没犠牲者の存在を忘れてはならない。
既に 戦後60数年の月日が流れた。この辺で 8月15日の意義や行事の在り方を 少し見直してみては いかがだろうか。
8月15日は、戦没者を偲びつつ、戦後の発展の軌跡を検証し、更に 国の将来を国民全員が考える前向きな日にしたいものである。(2008.08.15)
【ちょっと一言】
原爆症の認定問題
原爆投下から60数年も経っているのに、被爆者の「原爆症」の認定をめぐる集団訴訟が 相次ぎ、国の敗訴が続いている。
最近では、6月に 長崎地裁で 原告27人中20人の病気が原爆症によるものと認定されている。
原爆症に認定されると毎月13万7,000円の医療特別手当が支給されるという。
原告らの病名は、癌、心筋梗塞、肝硬変等 さまざまだが、それが原爆の放射線に起因しているかどうかである。
原告の方々は、もう70才代 80才代の人が大部分であろう。この年になると 一般の高齢者も これらの病気に罹る率は高く、療養中の人も多い。
原爆症特有の疾病なら 容易に認定できるが、日本人の死亡原因として一般的な 癌、心疾患、脳血管疾患等々が、今になって 原爆に起因するものと 科学的に 立証できるのだろうか、極めて疑問である。(被爆後、60数年間 発病しなかったことは、放射線の影響は なかったとの見方もできる)
裁判所は、疑わしきは原告の利益に という考え方のように思われるが、この考え方は 間違っている。(当時被爆していれば、因果関係が立証できなくても、原則として その病気を原爆症に認定するという考え方)
申請して 駄目で もともと、認定されれば 儲けもの…それでは困るのである。国が支出する医療手当等の費用は、税金で国民が負担するからである。
どうも この問題は釈然としない。(2008.08.15)
次回は(第181回)
「毒入り餃子事件その後」(2008.09.01)

北京五輪100m平泳ぎ世界新で優勝した 北 島 康 介 選 手 (2008.08.11) |
【出来事】
- 8月1日 福田首相 内閣改造 自民党役員(4役)人事入替え 幹事長麻生太郎氏 総務会長笹川尭氏 政調会長保利耕輔氏 選挙対策委員長古賀誠氏(留任)
- 8月2日 第90回全国高校野球選手権大会開幕 於阪神甲子園球場
- 8月2日 福田改造内閣発足
- 8月4日 中国西北部の新疆ウイグル自治区カシュガルでテロ事件発生 武装警察部隊にダンプカーが突っ込み投げ込まれた手榴弾等で武装警官16人が死亡 16人が負傷
- 8月8日 北京オリンピック大会(第29回)開会式
- 8月8日 グルジアから分離独立を求める南オセチヤ自治州に進攻したグルジア軍とロシア軍が交戦 戦争状態に入る
- 8月11〜12日 日朝実務者協議 於中国・瀋陽 今秋までを目途に拉致被害者の再調査を終えること 経済制裁の一部を段階的に解除することで合意(13日未明)
- 8月11日 米政府ライス米国務長官 11日の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除見送りを表明
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