◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2008/09/15】



◇第182回◇
福田総理の退陣

 去る9月1日夜、福田首相は、緊急記者会見を開いて 総理、党総裁の辞任を表明した。
総理在任わずか1年足らず、しかも景気対策等 問題が山積する中で、内閣を投げ出すのは 無責任だというマスコミ論調が多かった。
しかし、こと 此処に至った以上、福田首相の辞任は 止むを得ないものとして 評価したい。むしろ求心力を失った福田さんが、国会のねじれ現象のため 必要な政策も実施できず、国政が停滞したまま 総理を続けることの方が、国家 国民にとって不幸であり、余程無責任だと言うべきであろう。

 福田さんを退陣に追い込んだ原因は、一体何か。
 まず 参院で野党が過半数を占める 所謂 国会のねじれ現象が、福田政権政治の大きな阻害要因となり 重圧になっていたことは言うまでもない。
ねじれ現象のもとでは、野党の協力がなければ、内閣は 手足をもぎ取られた形となり 死に体になってしまう。
 ねじれ現象は、国会の議決システムを定めた憲法規定の欠陥によるものであり、誰が首相になっても同じことだ。衆参両院の今の与野党の勢力比が続く限り、ねじれ現象は これからも続く。
ねじれ現象の矛盾を是正するためには、憲法改正しかない。
 《“ねじれ現象”については、〔第166回〕「立法府のシステム欠陥がもたらしたねじれ現象」を参照(クリック)
 福田さんは、総理就任時の施政方針演説(2007.10.01)の冒頭で、「重要な政策課題については 野党と誠意をもって話合いながら国政を進める」と述べて、ねじれ現象を乗り切ろうとしたが、野党 特に民主党は、党利党略を優先して 話合いに応じることは なかった。
また、昨年11月には 小沢民主党代表との間で 大連立構想が持ち上がったが、民主党側の事情で 不発に終わった。福田さんとしては 民主党から 随分裏切られたという思いはあるだろう。

 退陣の原因には、福田内閣支持率の低迷を まず挙げねばならない。当初は、60%ぐらいあった支持率は、20〜30%程度に落ち込み、先月(8月2日)の内閣改造でも 改善されなかった。
 福田さんの不人気の理由としては、福田さんからは、毅然たる姿勢が見えない、指導力がない、曖昧な態度…等々が言われている。
例えば、福田さんが強調した“国民の目線””安心実現内閣”等という抽象的な言葉からは、具体的な政策が 何も見えてこない。
更に、小泉、安倍 改革路線からの転換姿勢は、構造改革に後ろ向きと受け止められ、支持率低下の要因になったと思う。

 福田内閣の支持率低迷に伴い 与党内でも求心力を失ったことが、退陣を決意させた決定的な要因になったのではないか。
福田さんは、最近の不況対策に関しても、自らの考え方を前面に出して 十分指導力を発揮できたとは言い難い。党内に渦巻く 無責任な大幅歳出圧力を抑え切れなかった面も否定できない。

 特に、公明党は、内閣支持率低下と相まって、福田さんに見切りをつけた節がある。
 まず、今秋の臨時国会の会期設定について、福田内閣は 公明党の強い主張に 妥協せざるを得なかった。
福田首相は、来年1月に期限切れになる“新テロ特措法改正案(海上自衛隊のインド洋での給油活動)”の成立を最重要視し、同法案の衆院で3分の2以上での再可決を図るため、今秋の臨時国会を8月下旬に召集し、長い会期を確保したい意向であった。
しかし、公明党は、召集は 9月下旬とし、年末、年始の解散を意図し、会期はできるだけ短くしたいと主張していた。(妥協の結局、召集日は9月12日に内定したが、今回の首相辞任で白紙になった)
公明党は、来年夏に行われる都議選を重視する観点から、国政選挙は早めに行う方が 都議選には有利として、早期解散を主張したものである。
 また、一説によると、元公明党委員長矢野絢也氏が 創価学会から受けたとされる人権侵害の問題が 訴訟で争われており、民主党をはじめ野党は、矢野氏を国会に招致して 公明党と学会の実体を暴きたい意向だと言う。このため 公明党は、国会会期を短くして、野党側に 矢野氏の国会招致の時間を 与えないようにする意図もあると言われていた。
公明党の姿勢は、国政より党利党略を優先するものだと言わざるを得ない。
 最近、公明党の政策は、福田政権と相容れない部分が、かなりあることが分かってきた。
公明党は、政府が 重要課題と位置づけている“新テロ特措法改正案”には 消極的姿勢に転じてきた。野党が反対する同法案の衆院3分の2以上での再可決による成立に 公明党は反対している。
最近 政府は、経済対策の一環として 今年度の所得税、住民税の定額減税の方針を決めたが、当初 政府は、ばら撒き政策だとして強く反対していたものだ。しかし、公明党の強い要求に 政府は 屈してしまった。

 最近の公明党の福田内閣に対する姿勢は、福田さんに見切りをつけたというより、意図的に 福田降ろしに動いたきらいがある。福田内閣のもとでは、総選挙は闘えないという判断が働いたのだろう。
自民党の中にも、公明党の動きに同調する者も出て、福田さんとしては、もはやこれまでと思ったのであろう。
もし、公明党が 与党として 福田内閣を十分支えていたら、福田辞任は なかったかもしれない。
また、自民党議員が結束して強力に福田首相を支えていたら、公明党も反福田的な動きは できなかったかもしれない。

 来る9月22日には、新しい自民党総裁が決まる。
誰が次期総理になっても、事態は全く変わらない。相変わらず 国会のねじれ現象は続くし、自民党は 公明党と連立しなければやって行けない。
 与党側の立場から言えば、新総理は 思い切って 早く解散した方がいい。臨時国会冒頭での所信表明演説、代表質問が終わった時点で、直ちに解散すれば、機先を制して 主導権が取れる。
解散が 延び延びになると 福田さんの二の舞になること必至だ。(2008.09.15)


 【ちょっと一言】
 「福田首相の記者会見で印象に残った言葉」
 9月1日の福田総理の辞任記者会見で、記者が「首相の会見が ひとごとに聞こえる」と言ったのに対し、福田さんは「私は自分自身を客観的に見ることができる。あなたとは違う」と言ってのけた。
この場合 意味深長だが、この言葉には 同感できる。 福田さんは、最後に名せりふを吐いた。
人 皆 こうあって欲しい。特に政治家は、独善的で 自らを客観的に見る能力に欠けている。
政治家、特に指導的立場にある人は、この言葉を見習ってもらいたい。
それにしても、新聞記者は くだらん質問をするものだ。
 福田内閣は短命に終わったが、福田さんとしては、厳しい状況の中で 矢折れ力尽きたという思いだろう。
ご苦労様でしたと言ってあげたい。(2008.09.15)

 次回は(第183回)「ねじれ現象の打開策は解散総選挙」 (2008.10.01)
  【出来事】
  • 9月1日 福田首相 緊急記者会見で総理 党総裁の辞任を表明
  • 9月6日 北京パラリンピック開幕(9月17日まで)
  • 9月6日 パキスタン大統領選 アシフ・ザルダリ氏(53才 暗殺されたベナジル・ブット元首相の夫)が当選
  • 9月8日 日本相撲協会理事会 北の湖理事長が露鵬と白露山の大麻吸引疑惑問題で理事長を辞任 露鵬と白露山を解雇 新理事長に武蔵川理事(元横綱三重ノ海)の就任を決める
  • 9月8日 民主党代表選 小沢一郎代表が無投票で三選果たす 21日の党臨時大会で正式承認
  • 9月10日 自民党総裁選告示 麻生太郎氏(67幹事長) 石破茂氏(51前防衛相) 石原伸晃氏(51元政調会長) 小池百合子氏(56元防衛相) 与謝野馨氏(70経済財政相)の5氏が立候補
  • 9月14日 ロシア・ウラル地方のペルミ近郊でアエロフロートのモスクワ発ペルミ行き国内線旅客機ボーイング737が墜落 乗客乗員88名全員死亡
  • 9月14日 大相撲秋場所初日(両国国技館)