◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2008/10/15】



◇第184回◇
政治の貧困(T)

 今 開会中の臨時国会では、解散日程をめぐり 与野党の駆け引きが活発化しており、実質的には 既に選挙戦が始まっている。
去る9月29日、麻生総理は 所信表明演説の中で、小沢民主党代表に 懸案問題についての賛否や見解を質したのに対し、小沢さんは 麻生さんの問いかけは無視し、質問より 専ら民主党の選挙公約のPRに終始した。今国会は 冒頭から選挙を意識した異例の国会論戦から始まった。
 与野党とも、掲げる選挙公約は 国益よりも 選挙のための集票対策、ばら撒き政策が目立つ。
例えば、民主党の高速道路の無料化(自民党も一部値下げ)、子供手当の創設、農家への戸別所得補償、揮発油税の暫定税率廃止、自民党の所得税 住民税の定額減税、、輸入小麦価格の引き上げ幅の圧縮…等々は、目先に捉われた ばら撒き政策であり、深刻化した世界同時不況の抜本対策と言えるものではない。それは、我が国の逼迫した財政を 更に悪化させるだけである。

 今 我が国の政治には、リーダーシップ(指導力)が欠けている。政治は、国民に対して積極的に説明責任を果たし、国民に 訴えるものがなくてはならない。
例えば
 国の逼迫した財政の実態について 一般国民は どの程度認識しているだろうか。
国債発行残高が 550兆円(国民1人当たり400数10万円)以上にも達していること。
政府予算約83兆円の内、国債費(国債の利払いや償還の費用)が20兆円以上も占め、更に地方交付税交付金約16兆円を差し引くと、使える金は 僅か約47兆円(予算総額の57パーセント)しかない。
今年度の予算編成でも 約25兆円もの歳入不足があり、これは 新たな国債発行(借金)で 帳尻を合わせているのが実態。これを自転車操業と言う。勿論、先進主要国の中では 最悪だ。
厳しい財政の実態を、政府が 丁寧に分かりやすく説明し、国民が大まかにでも実状を理解すれば、ばら撒き政策などが 支持されるはずはない。
 今年4月から始まった後期高齢者医療制度について、政府は、野党の反対、国民の不人気に配慮して 制度の見直しを行うと言いだした。
不満の大半は 制度の趣旨を理解しないで、“75歳で線を引くのは老人差別だ、姥捨て山だ、年金からの保険料天引きは けしからん”等と言っている。
医療費が嵩む後期高齢者の医療を 将来に亘って確保するため、現役世代からの多額の拠出等 国民全体で高齢者を支えていこうという保険制度である。
老人差別どころか、老人に配慮した老人優遇策である。年金からの保険料天引きは、徴収側のみならず納付者にとっても便利であり 反対する理由はない。
政府は、国民医療費や老人医療費の実態を 国民に説明した上で、後期高齢者医療制度の趣旨を十分説明すべきであった。
今になって 政府は、制度の見直しをすると言うが、どこが不具合なのかの説明もない。政府は、国民が納得していないから と言うが、十分な説明もしないで、国民が納得するも しないもないだろう。
これでは、そんないい加減な制度を実施しようとしたのかと 政府に対する不信感は 増すばかりである。
 民主党の主張に沿って 後期高齢者医療制度を廃止して元の制度に戻せば、高齢者全体としての負担は増えるし、将来 老人医療制度が行き詰まることは明白だ。これこそ老人いじめである。

 福田前首相は、“国民の目線”“消費者の目線”という言葉を多用した。しかし、千差万別の国民の目線を、どう捉えるのか、これは 言葉の誤魔化しに過ぎない。
 例えば、漁民が燃料費高騰の苦しさを訴えて 集会やデモをすると、政府は 燃料費の補助を行うことが国民の目線に沿った政策だと考えているようだ。漁民に 一時的に燃料費を補助しても 漁業の安定には繋がらない。むしろ日本の漁業の力を弱めるだけだ。
ここでは、消費者ではなく 生産者の視点に立って、漁民の適正な手取りの確保を考えるべきである。流通の仕組みを改善する等 漁民の手取り確保対策が必要である、それでも駄目なら、政治は 国民によく事情を説明して 末端価格への転嫁策(値上げ)を考えねばならない。
我が国から漁業がなくなれば、国民は 高い輸入水産物を食べねばならなくなる。
 農業についても同じことだ。民主党の農家への戸別所得補償は、我が国農業の力を弱めるだけで意味がない。
我が国農業の問題点は、採算性と深刻な後継者不足であり、そのための改革が必要である。農業の規模拡大や法人化によるコスト削減、企業の農業への進出は 後継者対策にもなる。そのためには規制緩和が必要である。
世界の穀物価格は、これからも 上昇を続けることは間違いない。農業の構造改革を進め 国際競争力をつけることが、我が国食料の自給率アップに繋がる。

 選挙を前にして、民主党の無責任な公約 ばら撒き政策に対抗して、与党自民党の政策も 選挙を意識した ばら撒き的色彩を帯びてきた。 選挙戦は 自民、民主のばら撒き政策合戦の様相を呈している。これでは 我が国の将来が思いやられる。
 政権与党は、野党とは一線を画し、選挙対策ではない真の国家・国民のための政治へ転換させる責任がある。
そのためには、国民への十分な説明責任を果たしつつ、能動的に国民に訴える姿勢が必要であり、国民に対して強いリーダーシップの発揮が求められる。
政府は 国民に対して、避けられない消費税アップ、輸入資源の高騰による物価上昇、世界的な不況の国民生活への影響等、 厳しい現実や痛みも率直に訴えていくべきである。心ある国民は分かってくれる。
これによって 仮に選挙に敗れても、場当たり的な ばら撒き政治から、真に国家・国民ための政治に脱皮できれば良いではないか。
 選挙の集票目当ての政策、党利党略の贋政治は長続きはしない。(2008.10.15)


 【補 足】
 世界を覆う経済不況、金融不安に対処するため、今国会に政府が提出した補正予算案は、予想に反して 民主党が賛成に回り、間もなく成立する見込みである。
また、政府が重要視する“新テロ特措法改正案”(海上自衛隊によるインド洋での多国籍艦船への燃料補給活動)についても、民主党は 早期解散のためなら、その成立を黙認するようである。即ち、参議院でも審議引き延ばしは行わず 採決して結論を出すと言っている。
参院が否決すれば、衆院で3分の2以上の多数での再可決により 法案は成立する。民主党の変貌ぶりは予想外だった。
民主党としては、政府与党が固執する補正予算、新テロ特措法改正案を早く片付けて 早期解散に追い込みたい意向と言われる。また、何でも反対の抵抗戦術は、選挙にマイナスだと判断したのだろう。
それにしても民主党は、昨年 あれだけ反対した新テロ特措法改正案を 今回は いとも簡単に黙認するとは…政策よりも 政局(解散)重視の体質が ここでも露呈された。
 昨年(前回)、民主党は、テロ特措法の延長について、徹底した抵抗戦術を貫き 参院での採決をさせなかったため、政府は 60日間の経過を待って ようやく衆院3分の2以上の多数で法案を成立をさせた。このため インド洋上での給油活動は、2ヶ月半に亘って中断を余儀なくされた。

 麻生総理は、世界的な不況や金融不安が 更に深刻化してきたため、今臨時国会で 追加経済対策(第2次補正予算)を決めたい意向のようだ。
早期解散を主張する民主党の出方が注目される。(2008.10.15)

 次回は(第185回)「政治の貧困(U)」(2007.11.01)
  【出来事】
  • 10月1日未明 大阪市浪速区の雑居ビルの個室ビデオ店で火災 死者15名 重軽傷10名
  • 10月3日(日本時間4日未明) 米国議会下院 修正された金融安定化法案を再採決可決(上院は10月1日可決済み)
  • 10月7日 スウェーデン王立科学アカデミー 2008年ノーベル物理学賞受賞者を発表 ☆南部陽一郎氏(87才 シカゴ大学名誉教授 米国籍)と☆小林誠氏(64才 高エネルギー加速器研究機構名誉教授)☆益川敏英氏(68才 京都大学名誉教授)
  • 10月8日 ノーベル化学賞受賞者を発表 ☆下村脩氏(80才 元米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員 ボストン大学名誉教授)ら3人(他の2人は米国人研究者)
  • 10月10日 読売ジャイアンツ セ・リーグ優勝
  • 10月10日(現地時間) 7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(中川昭一財務金融相 白川方明日銀総裁が出席)
  • 10月11日 米国政府 北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除