◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2008/11/01】



◇第185回◇
政治の貧困(U)

 我が国政治の最近の特徴は、例えば「国民の生活が第一」(民主党)、「消費者重視」(福田前総理)、「生活対策」(麻生総理の不況追加対策)等の言葉が示すように、目先の問題に終始している。言い換えると、大衆への迎合政治、選挙対策のための政策であり、ある意味では 民主主義の欠点を露呈したものと言える。
我が国の政治には、在るべき国家像とも言うべき基本的な視点が欠けている。例えば、外交、防衛、治安、教育、国の将来ビジョン、憲法問題 等々、国の根幹に関わる重要な問題から目をそむけてきた。

 国民に 国の将来を語り、問題を提起する政治家は ほとんどいない。
国の深刻な財政状況については、前回(第184回)述べた通りであり、国の台所は火の車、まさに自転車操業である。これは、長年に亘る“場当たり政治”の負の遺産である。
 今 世界を覆っている深刻な金融危機、経済不況に対する政府の対応が 国民の重大関心事だが、大切なことは 国の財政規律に十分配慮して、経済対策として真に有効な政策を実施することだ。
去る10月30日、麻生首相は 追加景気対策の概要を発表したが、その中で、例えば 全世帯を対象とした「給付金」(総額約2兆円規模)や高速道路料金の大幅値下げ等は、景気対策には ほとんど効果がなく、選挙目当ての“ばら撒き政策”の典型と言っていいだろう。国の財政を一層悪化させるだけだ。
しかし、同時に 3年後の消費税引き上げに言及したことは評価できる。
今の政治は、全てのつけ(借金)を 将来の世代に回してでも、今さえ良ければ良いという姿勢に見える。
 我が国は、今後 人口減少 高齢社会を迎える。労働力人口が減少する中で、高齢者の社会保障費は激増する等、厳しい時代が待ち受けている。
政治家は、国の将来、子や孫達のために 如何に備えるかを、大きな政治課題として捉えるべきではないか。将来の世代に負担のみを残す今の大衆迎合政治は、あまりにも無責任である。
良識ある国民は、子や孫の時代はどうなるか、国の将来について 不安感を抱いている。 元総理福田さんは 自らの内閣を「安心実現内閣」と称したが、国民の気持からは あまりにも遊離している。

 今 我が国が直面している諸々の社会問題の根源を辿ると、これまでの欠陥教育がもたらした面が大きい。
誤った自由や平等主義、道徳教育の忌避、ゆとり教育…等は、まさに欠陥教育と言ってよいだろう。
多発する犯罪、公務員の質の低下(その典型は社会保険庁)、子供の学力低下…等々の社会現象は、長年に亘る欠陥教育の産物と言っても過言ではない。文部行政の責任は 極めて大きい。
 また日教組が、我が国の教育にもたらした害悪は 計り知れない。失言問題で大臣を辞任した中山成彬氏の「日教組は教育の癌」発言は 的を得ている。
これまで文科省(文部省)は、日教組に対して “事なかれ主義”で 臨んできた。この結果、日教組の誤った考え方が 教育現場に持ち込まれ、教育に悪影響を与えてきたことは間違いない。
今求められるのは、文科省の改革とともに、これまでの教育を全面的に見直し、あるべき国の教育方針を確立することである。
 戦後レジームからの脱却を掲げた安倍元首相が、教育基本法の改正を行ったことは、高く評価したい。
更に 安倍さんは、教育改革を進めるために 教育再生会議を創設したが、提出された同会議の(最終)報告書は 次期福田内閣では 生かされなかった。 安倍さんが敷いた折角の教育改革路線が、次の福田政権で踏襲されなかったことは、まことに残念である。

 我が国の外交には、主体性がない。
左グループからは アメリカ追従と言われ、右グループからは 中国迎合だと批判されるが、いづれも正しい。
外交力は、軍事力と大いに関係がある。強い軍事力を持っている国が、強い外交力を有していることは 世界の常識だ。 北朝鮮のような経済貧国でも、核兵器を持てば、大国アメリカとも対等に渡り合って行ける。
我が国の場合は、憲法上の制約から、自国の防衛さえも外国に頼らざるを得ない宿命を負っている。我が国の外交力の弱さの真因は ここにある。
 日本は、国の安全を 全面的に日米安保条約に委ねている。
日米安保条約は、日米対等な条約ではない。日本が他国から攻撃を受けた場合、アメリカには日本防衛の義務があるが、アメリカ有事の際には、日本は手助けできないことになっている。これは、我が国政府が、集団的自衛権は 有するけれど、行使できないという 実に不可解な 自縄自縛的な憲法解釈をしているからである。政治の怠慢以外の何ものでもない。
国家の存立に関わる重要な防衛について、アメリカに“おんぶにだっこ”されている我が国は、名実ともにアメリカ追従でなければ やっていけないのである。
 安倍元首相は、集団的自衛権の解釈を見直すために、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置した。安倍内閣が退陣したため、同懇談会は 後継の福田総理に 集団的自衛権行使容認への解釈変更を求める報告書を提出したが、福田さんは これを否定し、反故にしてしまった。この福田さんの“事なかれ主義”的な考え方には、賛成できない。
 最近、麻生総理が 集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈変更を検討する考えを持っていると報じられたが、是非前向きな検討を期待したい。日米同盟を対等な関係にする第一歩になる。
 福田前首相は、靖国神社参拝問題に関して「私は、相手が嫌がることはしない…」と述べたことがある。これは、日本は 外国が嫌がる外交はしないと言うのと同義であり、総理大臣にあるまじき発言、断固糾弾さるべき重大発言だ。
福田発言については〔第173回〕「頼りない福田内閣(U)」参照
この福田発言は、外務省の“事なかれ主義”体質をよく表している。
それは、北朝鮮の金正日が拉致を認めるまで(2002年小泉訪朝で認めた)、外務省は 北朝鮮を刺激するいう理由で、省内でも“拉致”という言葉は使わず“行方不明者”と言っていた事実がいい例だ。これは 福田さんの考え方とよく似ているではないか。 安倍元総理が標榜した“主張する外交”とは対照的だ。
 目指すべき外交は、国益に叶った外交、主体性ある主張する外交、不当な事案に対する毅然たる姿勢等であろう。 そのためには、外務省の意識改革が不可欠であるし、集団的自衛権解釈問題等の条件整備も必要になってくるだろう。
全て政治の責任である。 (2008.11.01)

 次回は(第186回)「政治の貧困(V)」(2008.11.15)
  【出来事】
  • 10月16日 2008年度補正予算 参院本会議で与党と民主党などの賛成で可決成立
  • 10月17日 国連総会 安全保障理事会非常任理事国の半数5か国の改選選挙で日本が当選(任期は2009年1月より2年間 他にウガンダ メキシコ  トルコ オーストリア)
  • 10月24日 アジア欧州会議(ASEM)首脳会合(25日まで) 日中韓3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN+3)首脳会合(いづれも麻生首相出席 於北京)
  • 10月24日 空席になっていた日銀行副総裁人事(山口広秀氏を起用)を含む27人の国会同意人事案を衆参本会議で可決承認(民主党も賛成に回る)
  • 10月30日 麻生首相 記者会見で総事業規模26兆9000億円(国の財政支出5兆円)の追加景気対策を発表(総額約2兆円規模の全世帯を対象とした「給付金」や高速道路料金大幅値下げ等) 経済状況を見ながら3年後の消費税引き上げについても言及
  • 10月31日 日銀 政策金利を0.2%引下げ(現行0.5%⇒0.3%へ)