◇第194回◇
小沢代表の秘書逮捕と民主党
去る3月3日、民主党小沢代表の公設第一秘書 大久保隆規氏が 政治資金規正法違反容疑で逮捕された事件は、民主党に大きな衝撃を与えた。
容疑は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」(責任者 大久保秘書)が、企業からの献金が禁じられているのに、事情を知りながら 西松建設のOBが代表を務める「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」というダミーの政治団体を迂回して、西松建設からの献金を受けたというものだ。
翌4日、小沢代表は記者会見を行い、「献金は 政治資金規正法に則り 適正に処理して公開しており 何ら やましいことはない、遠からず嫌疑は晴れる」と容疑を完全に否定した。更に、「この時期に、不公正な国家権力、検察権力の行使と感じる」等と述べて 検察側と全面対決とも とれる強気の姿勢を示した。
民主党は、この小沢代表の記者会見で、国民に対する説明責任は果たしたとして、一致して小沢氏の発言を支持することを確認した。
しかし、3月4日の記者会見で、疑惑は解消されるどころか、一層深まった印象を受けた。その後の記者会見でも 容疑を強く否定する強い姿勢は 変わらない。
小沢氏は、疑惑の核心部分については、言及を避け、曖昧にしている。
小沢氏は、西松建設との関係、とりわけ「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の両団体が、西松建設が 小沢氏(陸山会)らに 献金するために作られたダミー団体であるという疑惑には 言及しなかった。
マスコミは、大久保秘書が西松建設に対し、献金を小沢サイドの三つの※政治団体への分散割当を指示していたと報じる等、小沢サイドの疑惑は 深まる一方だ。
※大久保秘書が分散献金を指示した三つの政治団体とは
○小沢氏の資金管理団体「陸山会」
○小沢氏が代表を務める「民主党岩手県第4区総支部」
○小沢氏が最高顧問の「民主党岩手県総支部連合会」
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小沢代表の公設第一秘書を逮捕し、関係箇所の家宅捜査に踏み切った東京地検特捜部は、小沢氏がどんなに反論しようと、確実な証拠を握っているに違いない。
民主党内では、あくまでも小沢発言を信じて結束を図るしかないという雰囲気だ。強気の小沢発言に異を唱える者がいないというのも理解できない。小沢氏の党内での権力がそんなに強いのか、小沢氏以外に党のリーダーはいないのかと感じさせる。
今回の民主党の対応は、2006年の永田寿康元議員の偽メール事件で 党がダメージを受けた時、党内に“メール問題検証チーム”を作って事実を検証し、当時の前原代表以下執行部が責任をとって辞任した時とは 大違いである。
もう一つ看過できない問題がある。
小沢氏が、この事件には、不公正な国家権力、検察権力の行使が感じられると述べ、鳩山幹事長ら党幹部たちも これに同調し、“国家の陰謀”だ、“国策捜査”だ等と主張したことだ。
民主党 山岡賢次国対委員長は、検察当局の動きは「手段を選ばず選挙に勝ちたい与党の陰謀だ」とまで述べている。軽率で無責任な発言だ。
逮捕には 裁判所の逮捕令状、家宅捜査には 裁判所の捜査令状が必要である。民主党の主張は、検察のみならず司法に対する挑戦と見られても仕方がない。
小沢氏は、東京地検特捜部による 小沢氏の元秘書・石川知裕衆院議員への参考人聴取について、「選挙妨害以外の何ものでもない。権力の乱用だ…」等と言ったと報じられ、検察批判の姿勢は変わってないようだ。
また、民主党西岡武夫参院議院運営委員長は、検察当局が情報をリークして世論操作をしているとして、検察トップの樋渡利秋検事総長を国会証人喚問すべきだと述べている。圧力をかけて検察当局を牽制する狙いであり、こんな発言こそ 国会で取り上げて 問題にすべきだ。
我が国は、政府が検察を操れる程 後進国ではない。総理大臣経験者の田中角栄氏の逮捕時でさへ、指揮権を発動して捜査を中止させることはなかった。(指揮権発動⇒法務大臣が検事総長を指揮して捜査に介入すること、指揮権発動は 昭和29年の造船疑獄以来 一度も行使されたことはない)
民主党は、政権与党は 意のままに検察を動かせるとでも思っているのだろうか。
もしそうなら、民主党政権になったら、都合が悪い事案については、検察を指揮して 捜査に介入することもあり得るという危惧を感じる。
鳩山幹事長は、民主党が政権を取ったら、局長級以上の全ての官僚から辞表を提出させ、民主党の政策に賛成する者のみを 改めて就任させたいと言っている。
自らに 都合が悪いものは、全て排除するという姿勢は、強権的色彩の強い小沢代表と併せ考えると、民主党政権には ある種の危険性を感じる。
公設第一秘書が逮捕され 日々疑惑が深まっているというのに、渦中の小沢代表は あくまで非はないとして強硬姿勢を貫いている。また、党執行部は 唯々小沢擁護のみに奔走し、更にヒステリックにも聞こえる国家の陰謀説まで持ち出した。このような状況は、今回の事件が民主党に与えたダメージが いかに大きく 衝撃的であったかを物語っている。
民主党の危機管理能力が問われている。(2009.03.15)
【補 足】
小沢一郎氏と西松建設をめぐる今回の事件の背景については、色々囁かれている。
小沢氏は、田中角栄元総理の熱烈な信奉者だった。刑事訴追を受けた田中氏の公判には、毎回欠かさず傍聴に行ったという。
また、東京佐川急便の闇献金事件や高額脱税事件で失脚した元自民党副総裁 金丸信氏は、小沢氏の後見人と言われる程 小沢氏を重用する密接な間柄だった。
小沢氏の検察への対抗意識は、田中氏、金丸氏が痛い目に合わされた検察への感情もあるのでは…等と言う人もいる。
金丸氏は、西松建設の元社長 杉本三吾氏と姻戚関係にあり、小沢氏は 金丸氏から 西松建設のことを託されていたとされ、小沢氏と西松建設の密接な関係は、金丸信氏から受け継いだものだと言う。小沢氏と西松建設の特殊な関係も うなずけると言うものだ。(2008.03.15)
次回は(第195回)
「金賢姫の波紋」(2008.04.01)
【出来事】
- 3月3日 東京地検特捜部 民主党小沢一郎代表の公設第1秘書大久保隆規氏を政治資金規正法違反容疑で逮捕 小沢代表の政治団体「陸山会」を家宅捜索 4日には岩手県の小沢代表の地元事務所等を家宅捜索
- 3月4日 衆院本会議 参院で否決された平成20年度第2次補正予算関連法(含定額給付金)を与党の3分の2以上の賛成で再議決 成立
尚 自民党は退席棄権した小野次郎衆院議員を戒告処分に 欠席した小泉純一郎氏への処分は見送りを決める
 海賊対策に向かった護衛艦「さざなみ」 |
- 3月11日 拉致被害者田口八重子さんの兄飯塚繁雄氏と長男の飯塚耕一郎氏が大韓航空機爆破事件の実行犯金賢姫元工作員と面会 於 韓国・釜山
- 3月13〜14日(現地時間) 世界20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議 於 ホーシャム(ロンドン郊外) (与謝野馨財務・金融・経済財政相と日銀の西村清彦副総裁が出席)
- 3月14日 アフリカ・ソマリア沖の海賊対策のため 海上自衛隊護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻が海上自衛隊呉基地から出港
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