◇第197回◇
北朝鮮のミサイル発射実験
去る4月5日、北朝鮮は 人工衛星の打ち上げと称して ロケットを 発射した。日、米、韓や英、仏等 多くの国が、これは 北朝鮮の弾道ミサイル活動停止を求めた2006年7月15日及び2006年10月14日の国連安保理決議(1695と1718)に違反するとして 北朝鮮を非難した。
参照⇒安保理決議1695 参照⇒安保理決議1718
北朝鮮は、運搬ロケット「銀河2号」により打ち上げられた人工衛星「光明星2号」は、地球周回軌道に乗り、「金日成将軍の歌」「金正日将軍の歌」を 470メガ・ヘルツの電波で地球に送り続けている等と派手に宣伝していた。
3段式のロケットの1段目部分は 秋田県の西約280キロの日本海に落下し、先端部分を含む2段目以降の残余の部分は、日本列島上空を飛び越え、約3,200キロ飛んで太平洋上に落下した模様。
宇宙空間に当該衛星と見られる物体は見当たらず、470メガ・ヘルツの信号電波も確認されない。北朝鮮が主張する人口衛星だとしたら、完全な失敗である。
北朝鮮は 過去にもミサイルの発射実験をしている。
1998年8月、テポドン1号の発射実験では、ロケットは 日本列島を飛び越え 三陸沖に落下している。
2006年7月にも、日本海に向けて テポドンを含む7発のミサイル発射実験を行っている。
これらの実験は、いづれも成功とは言えず、ミサイル技術としては、未熟だと思われていた。
しかし、今回の発射実験を見ると、北朝鮮のミサイル発射技術は、相当レベルアップしているように思われる。
それは、公開されたロケット発射の映像やロケット1段目や2段目のブースターの落下位置の事前予告等からも窺えるが、何よりも 3,200キロもの長距離を飛行したミサイルは 脅威である。
既に 実戦配備されていると言われる中距離弾道弾「ノドン」は、日本全土を射程距離に収めており、「テポドン」は 近い将来アメリカ本土への到達も可能になるだろう。
問題は、ターゲット(的)への正確な着弾の精度だ。日本政府の中枢部(例えば首相官邸)へのピンポイント攻撃は無理としても、首都圏という大きな的(まと)への攻撃能力は あると考えるべきだ。
特に 日本が、北朝鮮の弾道ミサイルの深刻な脅威に曝されていることは間違いない。
今回の北朝鮮のミサイル発射実験について、日、米は、制裁のための国連の安保理決議を強く求めた。しかし、拒否権を持つ中国とロシヤは、北朝鮮が人工衛星と主張している以上、ミサイル実験とは断定できない、過度に北朝鮮を刺激するとして 安保理決議には 同意しなかった。中、露 両国は、北朝鮮に有する利権など自国の国益も考慮したものと思われる。
確かに、ミサイルも人工衛星も、打ち上げロケットは同じもので、先端に乗せているものが人工衛星か否かの違いであり、区別がつかない。安保理決議には、人工衛星には 触れていないので 中国、ロシアの主張にも 理なしとは言い切れないだろう。
しかし、安保理決議(1695、1718)の文言には“北朝鮮は 弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止すべき”と謳っている。これはロケット発射実験自体を禁じたものと言うべきで、日、米をはじめとする 安保理決議違反の主張は 当然であろう。
結局 アメリカが中国に妥協したたため、我が国も 拘束力のない安保理議長声明の採択に同意した。
4月13日に 全会一致で採択された安保理議長声明は、北朝鮮にとって 極めて厳しい内容になった。即ち
今回の発射は、過去の国連安保理決議1718に違反すると明言して 非難し、北朝鮮が同決議に基づく義務を 完全に遵守すること、さらなる発射を行わないことを求めている。
また 議長声明では、国連全加盟国に同決議に基づく義務の完全な遵守を求め、制裁委員会に対する同決議に基づく北朝鮮への追加禁輸品目や資産凍結対象団体の指定の指示等が盛られている。これに基づき、安保理制裁委員会は、4月24日 “朝鮮鉱業開発貿易会社”等 北朝鮮の3企業を資産凍結の対象団体に指定した。
参照 (クリック)⇒議長声明の要旨
これに対し、北朝鮮は、直ちに 安保理議長声明を非難し、強い反発を示した(4月14日)。即ち
核問題をめぐる6か国協議への不参加を表明した。また核施設を全面再稼働し、使用済み核燃料棒の再処理に着手することを IAEA(国際原子力機関)に通告するとともに、寧辺で 核関連施設の停止・無能力化作業を監視していたIAEA要員や米国の専門家らを国外へ強制退去させた。
更に4月29日、北朝鮮は、安保理議長声明やその後の制裁措置(制裁委員会が 資産凍結団体に北朝鮮3企業を指定したこと等)に関連して、安保理に即時謝罪を求め、謝罪がなければ 核実験や大陸間弾道ミサイル発射実験等の措置を講じざるを得ない旨の声明を 発表している。
北朝鮮の反発により、6ヵ国協議の早期再開は困難になったとみるべきだろう。
今回のような挑発戦術による瀬戸際外交は、北朝鮮の常套手段であり、目新しいことではない。
しかし、注目すべきは、これまで 北朝鮮の挑発戦術、瀬戸際外交は、概ね成功していることである。
例えば、2006年の北朝鮮の地下核実験が、米朝直接対話を引き出し、テロ支援国家指定解除を勝ち取っている…等々。
今回も、既に 米国は、北朝鮮との2国間協議を模索していると伝えられている。他に方法がないというジレンマかもしれない。現実を直視しなければならない。
我が国にとって 北朝鮮の軍事的な脅威が 現実になりつつある。北朝鮮は、核ミサイル攻撃能力を背景に、外交圧力を強めてくるだろう。
万一に備えての我が国の安全保障は どうあるべきか。
利害が対立する国連も当てにならない。
日米安保条約が唯一の頼りだが、集団的自衛権は認めないとする日本政府の方針等、我が国自体の防衛態勢に多くの欠陥がある。これでは いざという時に、はたして日米安保条約が 我が国の安全保障に十分機能するか、極めて疑わしい。
自国の安全を他国任せにする程 無責任な政府はない。
先ず、自分の国は 自分で守るという安全保障体制の確立が 第一義である。
具体的には、ミサイル迎撃システムの一層の強化充実を図ることはもとより、敵ミサイル攻撃が現実化した場合、敵ミサイル発射拠点への先制攻撃態勢の確立等も真剣に考えねばならない。(2009.05.01)
【ちょっと一言】 「逮捕された草g 剛」
去る4月23日午前3時頃、人気アイドルグループ「SMAP」のメンバー草g剛が、自宅近くの公園で 泥酔状態で全裸になっているところを、公然猥褻(わいせつ)の容疑で 現行犯逮捕された。
警察は、草g氏の自宅を家宅捜索するとともに、翌24日 東京区検に身柄送検した(数時間後処分保留のまま釈放)。
彼が有名人であったため、マスコミは、大きく取り上げ、まるで凶悪犯でも捕まったような報道ぶりだった。
呑み助と言われる愛飲家なら、1度や2度は 前夜のことが思い出せない程 深酔いした経験を持つているだろう。
公然猥褻とは言っても、誰もいない深夜の公園での出来事であり、悪質ではない。他人に危害を及ぼしたり、器物を損壊してもいない。
奇声を発して、付近の住民に迷惑をかけたと言うが、酔っ払いが奇声を発することは 珍しくない。
家宅捜索について 警察は、「動機や背景を解明するために 捜索した」と言っているが、全ては 泥酔(飲みすぎ)によるものだ。
飲み過ぎたことに 動機や背景があろうはずがない。家宅捜索は、権力の乱用だ。
本人は、泥酔して全裸になったことを 認めているのだから、罪に問うなら 書類送検で良いはずだ。身柄送検は行き過ぎだ。
この程度のことなら、警察は 本人を保護し 酔いを醒まして、説諭して帰すのが普通だろう。
鳩山邦夫総務大臣は、地デジ移行の広報CMに出演していた草g氏を「…最低の人間だ。絶対許さない」等と非難した。大臣の言葉とも思われない 大人気ない発言だ。大臣が発言すべき問題ではない。それなら そんな“最低の人間”を地デジ移行の広報に用いた総務省の責任は…と問いたい。目立ちたがり屋の政治屋 鳩山邦夫らしい言動だ。
今回の事件で 当局は、草g氏が有名人であるめに、刑事責任を 特に強く追及しようとしたと思われる。
しかし、この種の事件では、有名人だからといって刑事責任追求に差異を設けるべきではない。法のもとの平等の原則にも反すると思う。
(2009.05.01)
次回は(第198回)
「裁判員制度」(2009.05.15)
【出来事】
- 4月16日(日本時間17日) シアトル・マリナーズのイチロー選手(本名鈴木一朗) 対エンゼルス戦で日米通算3086本目の安打を打ち 張本勲氏の日本プロ野球の通算最多安打3085本を抜き、新記録を達成(於 シアトル セーフコ・フィールド球場)
- 4月24日(現地時間) 7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議 於ワシントン
- 4月25日 世界保健機関(WHO) メキシコ アメリカ等で多数の感染者が発生している豚インフルエンザ対策を検討するため緊急委員会を開催 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と発表 4月27日 WHOは再度緊急委員会を開催 警戒レベル(6段階)をフェーズ3からフェーズ4へ引上げると発表 更に4月29日にはフェーズ5へ引上げると発表
(4月30日現在の未確認情報では 感染者や疑わしい者は30数ヶ国に及んでおり更に拡大する見込み 最も被害が大きいメキシコでは感染者は疑わしい者も含めて2,500人以上 死亡者176人等となっている)
- 4月28日 政府 新型インフルエンザが発生したことを宣言 「新型インフルエンザ対策本部」(全閣僚で構成)を設置
- 4月29日〜30日 麻生首相 日中首脳会談 29日温家宝首相と会談 30日胡錦濤国家主席と会談 於北京
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