◇第198回◇
裁判員制度
いよいよ来る5月21日から、裁判員制度がスタートする。
2004年5月21日に成立した「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の付則で、5年以内に実施することになっているからだ。
2004年当時、裁判員制度に関する国会審議は 目だった国民的議論には ならなかったため、最近になって「おや、いつ そんな制度が決まっていたの?」と思った人も多いのではないだろうか。
裁判員制度の仕組みの概略は
満20才以上の国民(有権者)の中から、無作為の抽出により 裁判員候補者名簿が作成される。その中から、事件毎に無作為に 裁判員が選ばれる。高齢や重病等 特殊な場合を除き、原則として 辞退できないことになっている。
携わる事件は、殺人など死刑や無期懲役等の重大犯罪の刑事裁判である。
合議体は、原則として 裁判官3名、裁判員6名の9名で構成され、裁判官、裁判員 ともに平等な立場で合議する。裁判員も 証人尋問や被告人質問を 裁判官と同じように行なう。
量刑についても 裁判官、裁判員の過半数の評決で決める。
裁判員には、職務上知り得た秘密については、将来に亘って(裁判員を辞めた後も)守秘義務があり、違反した場合は刑罰が科せられる。
裁判員制度には、大きな問題があるように思われる。
裁判員は 国民の中から無作為に選ばれ、原則として辞退できないということは、事実上の強制である。
国民は、色々な仕事に従事し、多種多様な生活を営んでいる。裁判員に選ばれても、時間を空けることが 困難な人も 多いだろう。短期間とは言え、国家が国民に 裁判員業務を強制し、一方的に 義務を課すことには 問題があるのではないか。
裁判官、検察官、弁護士等 司法の領域は、司法試験で選抜された法律家の高度な専門分野だ。司法試験は 数ある国家試験の中でも 最も難しい資格試験の一つである。
国民の中から無作為に選ばれる裁判員の中には、能力や見識が裁判官並み、或いはそれ以上に優れた人物もいるだろう。逆に、能力や知力が劣る人も多い、裁判に 全く興味や関心がない人もいるはずだ。
裁判員には、裁判官と対等な立場で意見を述べ、議論することが求められる。証人尋問、被告人質問も行わねばならない。有罪、無罪や量刑の評決にも 裁判官と対等な立場で参加する。
無作為に抽出された裁判員の中には、とても これらの任務は 無理だと思われる人も 少なくないはずだ。中には、厳しい判断を迫られ、精神的な重圧に耐えられない人も出てくるだろう。
裁判、特に刑事裁判では、法理論と証拠に基づいて 公正かつ厳正な法の適用が要求される。いやしくも、その時々の世論の影響を受けたり、偏った判断があってはならない。
裁判員制度の導入が、正しい刑事裁判の判決に寄与するとは、とても思えない。むしろ弊害の可能性の方が大きいと思う。
例えば、裁判員制度の裁判の評決で、被告人に不利な判決を 多数決で決める場合、裁判員だけの過半数では決まらず、1名以上の裁判官の賛成を必要としている。素人裁判員の弊害に配慮したものと思われる。
裁判員制度は、一審(地裁)の刑事裁判のみで、二審(高裁)以上では 通常の裁判であるため、一審が不適切な判決をしても、控訴により 二審で是正されるから という見方もある。しかし、それは裁判員制度を肯定する理由にはならない。
刑事裁判の判決に、広く国民の意見を反映させることが 裁判員制度導入の狙いであるならば、それは 民主主義の履き違いであり、我が国司法制度の根幹に関わる由々しき問題である。(判決が その場の雰囲気での多数決で決まるなら、それこそ人民裁判であり、法治国家にあるまじきことだ)
裁判に一般国民を参加させると言えば、いかにも民主的で聞こえはいいが、この裁判員制度が うまく機能するとは思えない。近い将来 見直す必要に迫られるだろう。
2004年の裁判員制度導入の立法過程では、もっと幅広い活発な国民的議論が必要であった。
裁判員制度の今後の成り行きを注視したい。(2009.05.15)
【ちょっと気になるニュース】 「副署長の酒気帯び運転」
名古屋市の守山警察署の某副署長が、同署駐車場で酒気帯び運転をしたとして 書類送検された。
5月4日深夜、副署長は 友人数人と同署近くの飲食店で飲酒後 同署駐車場に戻り、自分の乗用車を運転して夜食を食べに行き 同署に帰ったところを 当直の署員に 酒臭に気付かれ、呼気検査の結果 酒気帯び運転が発覚したというものだ。
飲酒運転を取り締まる立場の警察官、しかも副署長警視という幹部が、酒気帯び運転をするとは 言語道断、言い訳の余地はない。
当直署員が 酒気帯び運転をした上司の副署長を検挙したことは、署員として当然であろう。
もし私が当直署員だったらどうするだろう。多分「副署長!まずいですよ、酒の匂いがしてますよ」と言って見逃したかもしれない。発覚すれば、見逃した方の責任も問われる。まさに 深夜の二人だけの秘密だ。
それにしても気になるのが この警察内部の人間関係、うまくいっているのだろうか、チームワークは 大丈夫かと、いささか気になるニュースではあった。(2009.05.15)
次回は(第199回)
「国会議員の世襲制限」(2009.06.01)
【出来事】
- 5月3日〜6日 麻生総理 チェコ ドイツ等を訪問 4日 欧州連合(EU)議長国チェコのクラウス大統領 欧州委員会バローゾ委員長と日-EU定期首脳協議 於プラハ 5日 メルケル独首相と日独首脳会談 於ベルリン
- 5月9日 国内初の新型インフルエンザ感染者3名を確認(8日 カナダから米国経由で帰国した大阪の高校生2名と教諭)
- 5月10日 大相撲夏場所初日(両国国技館)
- 5月11日 民主党小沢一郎代表 「西松建設」の政治献金をめぐる事件に関連して代表辞任を表明
- 5月11日 ロシアのプーチン首相が来日(13日離日) 12日に麻生首相と首脳会談
- 5月13日 2009年度補正予算案 衆院本会議で与党などの賛成多数で可決(民主、社民、国民新の野党3党は反対して欠席) 参院へ送付(参院で議決されなければ30日後に自然成立)
|