◇第210回◇
民主党政権を斬る(U)
連立政権に加わった社民党や国民新党は、少数政党にも拘わらず 政権内でキャスティングボートを握り、存在感を高めている。
参院で過半数に満たない民主党の弱みを握った社民党と国民新党の存在は、鳩山政権の足かせになっている。
また 連合や日教組が、民主党政権の支持母体になっているため、鳩山政権は、全体として 左寄りの社会主義的色彩を帯びている。
既に 教育行政に 日教組の意向が 大きな影響を与えつつある。
小中学生の学力低下対策として取り入れられた全国一斉学力テストは 廃止され、抽出テストに変更される。全国一斉学力テストは、日教組が 学力格差が拡大するとして 当初から 反対していたものである。
教職員の資質向上対策として発足した教員免許の10年毎の更新制度も廃止される。これも日教組が強く反対していたものであり、日教組出身の輿石東氏(民主党参院議員会長、党幹事長代行)は、以前から、民主党が政権を取ったら 教員免許更新制度は廃止すると豪語していた。
因みに輿石東氏は、日教組が今年 都内で開いた新春会合の挨拶で、「教育の政治的中立はありえない」と演説した人物である。(教員の政治的中立は、法律で定められている)
教員免許更新制度の廃止に代えて、教員免許取得には、現行の4年間の大学教育に加えて、2年間の大学院修士課程を義務ずける構想だと言う。これも論外だ。一般教員には、そんなに高度な専門的な知識は 必要としない。教員免許取得に 6年もかかれば、志望者は激減し、逆に教員の質の低下を招くだろう。
今年4月から 道徳教育補助教材として小中学生に配布されている「心のノート」が、道徳教育に反対する日教組の意向により、廃止される見込みだと言う。
先日、政府は、郵政民営化見直しの基本方針を 閣議決定し、郵政民営化路線を大きく後退させてしまった。
見直し案は、郵政グループの株や資産の売却凍結、4分社化を見直して 銀行、保険の業務にも 全国一律のサービス提供を義務づける等というものだ。
郵政民営化に反対して 自民党を飛び出した亀井静香氏の執念が実ったものだが、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。
政府は 郵政株100%を握り続けることによって、郵政会社の経営や人事に介入する仕組みを作り上げた。日本郵政は、もはや民間会社の体をなさず、実質的には 国有企業・昔の郵政公社に逆戻りしてしまった。
政府は、圧力をかけて 西川社長を辞任に追い込み、後任に 元大蔵省事務次官の斎藤次郎氏(東京金融取引所社長)を就任させた。政府の民間会社への人事介入であり、強権的な手法には 批判が多い。
元大蔵省の高級官僚を後任社長に起用したことは、国民が求めている官から民への流れに逆行するものであり、政府が 日本郵政をコントロールするための布石と思われても仕方がない。
因みに斎藤次郎氏は、大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ事件等で 1995年に大蔵省事務次官を退職、その後は“天下り”、“渡り”を数回繰り返してきた人物である。今回、また 東京金融取引所社長から 日本郵政の社長に“渡り”歩いて来た。
以前 民主党は、日銀総裁人事同意案件で、政府が提出した武藤敏郎副総裁の総裁昇格案を、彼が財務省出身という理由だけで拒否した経緯がある。政府は、この日銀総裁人事案件と今回の元大蔵官僚 斎藤氏起用との整合性を問われても 説明できないでいる。
民主党は、天下り根絶を公約に掲げながら、実際には政治主導で“天下り”や“渡り”を平気で行った。身勝手、無責任極まりない。
鳩山政権の郵政民営化見直しは、改革を後退させ、将来に大きな不安を残した。例えば
政府の支配下に収まった日本郵政の300兆円とも言われる膨大な資金が、再び昔のように政府機関への財政投融資に向けられたり、国債買取の一手引き受け先の役割を担わされる可能性も出てきた。
国をバックに持つ巨大メガバンク・日本郵政は、民間金融機関との公平な競争を阻害し、わが国の金融システムを歪める危険性もある…等々。
鳩山首相は、温暖化ガス排出削減の中期(2020年)目標を 25%(90年比)にすると国連で表明し、国際公約にしてしまった。(9月22日 国連気候変動首脳会合)
鳩山さんが示した25%は、全く根拠がない無責任な数字であり、その達成は 不可能と断言できる。。
それは、1997年12月の京都議定書で 我が国は、2012年までに1990年比で6%削減する義務を負ったが、現実は 削減どころか、排出量は逆に増加しており、これまで 多額の費用を投じて 外国から排出枠を購入している事実からも明白である。
目標達成を強行しようとすれば、我が国経済や国民生活に、深刻な影響を与えることは必至だろう。
例えば、鉄鋼の国内生産量は、約20%減産しなければならない、化学工業等も大幅な減産を強いられると言われている。
製造業では、生産拠点の海外移転が一層進む。関連する中小企業も打撃を受け、廃業する業者も出てくるだろう。
これにより 雇用の場が失われ、取り返しのつかない深刻かつ慢性的な失業問題を 惹き起こす可能性がある。
家計の負担が 年間30数万円増加するという試算もある。
社会構造や産業構造を抜本的に変革しなければならない。電力のケースを考えてみても、60%以上を化石燃料に頼っている発電エネルギーの大半を 原子力に置き換えねばならない。しかし、原子力発電には 放射性廃棄物処理等、未解決な問題がある。現状では 原発の大幅増設に 国民のコンセンサスは得られないだろう。
地球温暖化対策は、人類共通の深刻な問題であり、わが国も 国際社会の一員として、官民挙げて取り組まねばならない重要課題であることは言うまでもない。
しかし、エネルギー資源の大半を輸入に頼っているわが国は、省エネ対策に 積極的に取り組んできた結果、今や日本の排出量は、世界全体のわずか4%に過ぎない。
地球温暖化対策の鍵は、世界全体の40%以上の温暖化ガスを排出している中国・米国をはじめ、温暖化ガス大量排出国の対応如何にかかっている。
国際社会に対しては、まず中国、米国等 温暖化ガス大量排出国の排出削減を問題にすべきだ。
地球温暖化に関する国際会議では、各国が夫々の国益重視の立場から、自国のガス排出削減義務を軽減しようとして しばしば 紛糾する。
このまま行けば、我が国は、莫大な資金を投じて 外国から排出枠を購入せざるを得なくなる。中国等は、日本が大量の排出枠を購入してくれるものと 今から大いに期待しているに違いない。
鳩山さんの首相にあるまじき国益無視の言動は、国の将来に大きな禍根を残すことになり、極めて遺憾だ。(2009.11.15)
【ちょっと一言】 日中首脳の
『急がば回れ』発言
去る10月10日、鳩山首相は、北京での中国温家宝首相との会談で、靖国神社には 鳩山内閣の閣僚は一切参拝しないことを強調し、また(日本の侵略と植民地支配に謝罪した)『村山談話』を堅持し 歴史を直視する正しい態度をとっている等と述べて、中国への迎合姿勢を示した。
日中共同採掘の合意を無視して 中国が一方的に開発を進めている東シナ海ガス田問題に関し、鳩山首相は「お互い協力して採掘することで東シナ海を『友好の海』にしていきたい。日中合意に基づいて対処していこう」と主張したまではよかったのだが…。
これに対し、温家宝首相は 「中国には 国民感情の問題もある。『急がば回れ』という言葉もある」と述べて 問題処理の先送りを示唆した。
これに対する鳩山さんの返答がふるっている。「その通りです。まさに『急がば回れ』です」と応じたという。
中国側は、鳩山首相が問題解決の先送りに同意したと受け止めて 喜んだ模様。
鳩山さんは、相手に誤解を与えたことに気づかなかったらしい。なんとお目出度い総理大臣か、では済まされない。(2009.11.01)
次回は(第211回)「民主党政権を斬る(V)」(2009.12.01)
【出来事】
- 11月5日 九州電力 玄海原子力発電所3号機を起動させ 国内初のプルサーマルが始動
- 11月4日(日本時間5日) 米大リーグのワールドシリーズ ヤンキース(ア・リーグ)がフィリーズ(ナ・リーグ)を4勝2敗で下して優勝 ヤンキースの松井秀喜選手がMVP(最優秀選手)を獲得
- 11月6〜7日(現地時間) 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議 於英セントアンドリュース 日本からは野田佳彦財務副大臣 白川方明日銀総裁が出席
- 11月7日 プロ野球日本シリーズ 読売ジャイアンツが4勝2敗で北海道日本ハムファイターズを下して優勝
- 11月11〜15日 APEC(アジア太平洋経済協力会議)開幕 14〜15日 首脳会議 於シンガポール
- 11月12日 天皇陛下御在位20年記念式典 於東京国立劇場
- 11月13日 米オバマ大統領が来日(14日シンガポールへ向けて離日) 日米首脳会談
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