はじめにスピード外観変換の論理構造誤変換の修正文節の切り分けカタカナ、英数字の入力語彙単語登録学習機能遅延認識おわりにおまけ

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日本語版およびATOK PocketとJ-OSの仮名漢字変換の比較

1.はじめに

 このページでは、主に日本語仮名漢字変換について、WorkPad日本語版(System ver.3.1.1)、ATOK Pocket v.1.0とJ-OS IV(+dic-it1.3)の比較を行った内容を記します。仮名漢字変換以外の基本的な部分については、詳しく説明されている書籍などがありますので、それらをご参照してください。例えばWorkPadナビゲーションブック(日経BP社)の23ページから、J-OS作者、山田さんの解説が載っています。
 内容についてはできるだけ客観的になるよう努めましたが、書いたのはJ-OS用辞書の作者ですので、その分割り引いて読んでもらった方がよいと思います。比較の条件として、すべて同じPalm (WorkPad c3-40J) に搭載してソフトを切り替えて行いました。J-OSは辞書の選択ができるので、自分の気に入った辞書を使うことができますが、ここではdic-it1.3を基準に記載することにします。ATOKはCLIEのジョグダイヤルを利用した便利な操作ができますが、私は現在CLIEを所有していないので、この点についてのレポートは省略します。辞書はラージ辞書を標準辞書としました。
 また、雑誌の比較記事でよく行われる、特殊な例の文をそれぞれに変換させてどれが正確か比べるようなことはしていません。このような比較は、実際に使用した場合の感覚的な効率の良さとは必ずしも一致しないからです。主に、ユーザインターフェイスや変換エンジンの設計思想を比べています。入力は、ソフトキーボードやATOKの手書き入力もありますが、Graffitiによるものを対象にしています。

2.スピード

 変換の前にひらがなを入力するのは、J-OSの方が速いようです。J-OSはローマ字をGraffitiでどんどん書いていっても、もたつく感じは全くありません。日本語版やATOKでは、特に長いメモの中に入力すると表示が遅くなります。Portable Keyboardなどでキーボード入力を行う場合は画面の表示がキータッチに付いてこられないので、かなり違和感があります。
 変換速度については、日本語版はほぼ一定の速さであるのに対し、J-OSは大型の辞書を使うと特に「か」や「し」など、候補の多い文字で始まる語句は、少々変換に時間がかかるようになります。ただし、これらは99年発売のWorkPadで確認してしますので、最近の速いCPUでは改善されるはずです。
 ATOKは連文節変換なので、とにかくざっと入力していって一括変換できます。変換は非常に速いので、スモールフォントで1〜2行の文を一度に変換させても待たされる感じはほとんどありません。

3.外観

 日本語版およびATOKが完全なインライン変換なのに対して、J-OSは疑似インラインです。画面下にローマ字を入力するウィンドウを表示させ、ひらがな及び変換された内容は、文字が挿入される位置に表示されます。
 J-OSには、他に完全なウィンドウ入力も選択できます。設定はPalm OS標準の環境設定アプリケーションで行います。この場合は、ソフトキーボードも使用できます。どちらのモードでも、(OK)ボタンをタップすると入力ウィンドウが閉じられ、変換・確定された内容がカーソルの置かれていた位置に自動的に挿入されます。

日本語版

ATOK

J-OS (インライン)

J-OS (ウィンドウ)


 日本語版およびATOKは、日本語入力モードにしておけば、アプリケーションを切り替えてもすぐに日本語の入力が可能ですが、J-OSではアプリケーションを切り替えると入力ウィンドウが閉じて、日本語版での英数入力モードと同じ状態になりますので、再び入力ウィンドウを表示させる必要があります。(日本語版でのソフトキーボードによる入力と同じ動作でポップアップします。)
 J-OSは、一度に入力できる語数に制限があります。アルファベット60文字程度を超える場合は、一度確定する必要があります。(それ以上は入力を受け付けなくなります。) 確定は、(Flush)ボタンをタップするか、Graffitiエリアで/を描きます。日本語版ではこの動作で1文節が確定されますが、J-OSでは未確定の全ての文節が確定されて、入力ウィンドウのローマ字は空(カラ)になります。
 また、J-OSは、違う場所に入力位置を移動するとき、一旦入力ウィンドウを閉じる必要があります。入力ウィンドウが表示されているときは、本文の画面ではタップを受け付けなくなりますので、カーソルを移動したり、画面を切り替えたりすることはできません。但し、入力ウィンドウの中ではローマ字の文字列中でカーソルを移動することはできます。

4.変換の論理構造

 単文節変換という点では、日本語版とJ-OSは変わりません。ただし、J-OSでは送りがなや助詞の情報は変換エンジンではなく辞書の方で補っているので、辞書によっては単純な単語変換になります。J-OSは辞書を頭から追いかけて、先頭一致で当たったところで変換するという、シンプルな変換方法を採っています。このとき、単文節最長一致となるように辞書の側で並びをソートしているわけですが、dic-itでは変換精度を上げるために手作業で並びを入れ替えたり、送りがなを長く登録しておくなどの工夫をしています。実際には、学習辞書、ユーザ辞書、一般辞書の順に変換文字列を検索していきます。文節区切りは手動で明示的に行うので実質的に文節区切りの間違いは発生しません。
 日本語版はもうちょっと複雑なことをやっているようです。品詞を区別して助詞を助詞と認識する仕組みがあるかもしれませんが、詳しくはわかりません。基本的には単文節最長一致方式を採用しています。後に続く文字列には関係なく、できるだけ長く一文節を区切るように設計されているようです。これも辞書の方で変換効率を上げる工夫がされているようですが、単文節の自動認識では精度はそれほどよくありません。
 ATOKは、連文節変換です。複数の文節を組み合わせて最適と判断した語句を選択するので、文節の切り分けや同音異義語の変換が飛躍的に正確になります。パソコン用のATOKのようなAI変換はしていませんが、直前の語句の品詞などを判断して変換候補を絞り込む技術は取り入れています。具体的には、「鳥が鳴く」と「子供が泣く」は区別できませんが、「日本に対し」と「日本の大使」は正確に変換します。

5.誤変換の修正

 J-OSで誤変換を修正する場合は、変換した直後はGraffitiエリアで−を描けば次候補に変換され、同時にリストがポップアップします。また、未確定の任意の文節を修正するには、対象となる文節(ボックスで囲まれている文字列)をタップすれば、リストがポップアップします。リスト内の目当ての文字列をタップすれば、再変換されてリストが閉じます。文字列が枠で囲まれている間は、何度でも任意の文節を即座に再変換することが可能です。続けて入力する場合、J-OSでは確定されるまで何文節かまとめて変換しておけます。確定せずに置いておけるので、とりあえず入力しておいて後から誤変換の箇所だけ再変換することができます。つまりどういうことかというと、変換結果を目で追いながら、同時に次の文節を入力できるのです。ただし前述の様に一回で変換できる長さには制限があります。
 日本語版では、変換した文節に誤変換があったら、次の文字を入力する前に修正しておく必要があります。一度漢字に変換されると、次の文字を入力した時点で自動的に確定してしまうので、変換内容を確認しないと次の文節を記入できません。この時間が結構まどろっこしく感じることがあります。とりあえず一通りひらがなで入力してから1文節ずつ変換するほうが、間違った変換で確定してしまうことは少なくなると思います。修正は、対象の文字列をタップしてリストをポップアップさせます。もしくはGraffitiエリアで−を描くか、(変換)ボタンをタップすることで次候補に変換します。これを繰り返すと、2回目でリストがポップアップし、候補が順送りされます。
 ATOKは複数の文節を一度に変換しますが、文の最後の方の誤変換を修正する場合は、それ以前の文節をすべて一つひとつ確定していかなければならないので、この部分には煩わしさを感じます。修正は、対象の文字列が選択された状態でGraffitiエリアに−を描くか、(変換)ボタンをタップします。この動作で次候補が選択され、同時にリストがポップアップするので、続けてこの動作で候補を順送りするか、目当ての文字列をタップして選択します。
 いずれのソフトでも、リストがポップアップされた状態で、−を続けて描いて候補を順送りにし、/を描いて選択することもできます。また上下キー(ハードウェアキー)もしくはリストボックスの中の矢印をタップすることにより、一画面ずつスクロールさせることも可能です。

6.文節の切り分け

 日本語版とJ-OSは共に単文節変換ですが、文節の切り分けは日本語版が自動、J-OSは手動です。ATOKは連文節変換で、文節を自動認識して一度にすべてを変換します。
 日本語版は、ローマ字でどんどん入力していってから、(変換)ボタンをタップするか、Graffitiエリアで―を描くと、一文節と判断された部分が変換されます。その後(確定)ボタンをタップするか、Graffitiエリアで/を描くことでその部分が確定され、自動的に次の文節が変換されます。ATOKでも変換操作は同じですが、一度の変換動作ですべての文字列が変換され、最初の文節が選択状態になります。
 J-OSでは、文節は(漢)ボタンをタップするか、Graffitiエリアで―を描くことで明示的に切り分けていきます。切り分けることで1文節ずつ変換していきます。これを行わない限り、漢字に続く部分は全てひらがなのままです。これを「自分で文節を切り分ける必要がある」ととるか、「意識的に文節を切り分けるので間違いがない」ととるかで、全く違う評価となります。

実際の入力作業で、最も異なる点がここです。

J-OS

ATOK

日本語版


 文節切り分けを修正するには、J-OSは単純に入力ウィンドウ内で、ローマ字の文字列内に、スペースを挿入・削除すればよいので、簡単です。スペースを挿入することで文節を切り分けることができます。文節の設定がこれほど簡単なインプットメソッドは、私の知る限り他にありません。完全インラインではこうはいかないと思います。もともと自分で文節を区切っているので、この操作が必要なのは、主に接頭語・接尾語を含む文字列が、辞書の変換候補になかった場合です。
 ATOKは、変換された文字列の文節切り分けが間違っていたら、文節を切り分けたい箇所をタップするだけでよいのです。一度タップするだけで全文が修正された状態で再変換されます。これも非常に簡単です。ただし、漢字の途中で切り分けたいときなど、必ずしも一発で修正できない場合もあります。画面上にペンをおいて、切り分けの選択が間違っていたら離さずにそのままドラッグするのがコツです。
 日本語版ではバックスペースを入力するか、変換された文字列の上をドラッグして変換を解除し、ひらがなをドラッグして文節を設定した後、再度変換させます。これはかなり面倒です。さらに、文節を区切るとき最後の助詞などが未変換で残ってしまうと、前の文字列を確定したときに、自動的にその残りが漢字に変換されてしまうことがあります。(食べていた→食べて板、反対ではない→反対では内) この場合、残りをひらがなに変換するか、バックスペースで変換を解除して確定する必要があります。最後にひらがなのままでよい文字が残った場合は、その前の文節だけ変換せずに、続きの文字を入力してしまうなどで、残りすべてを確定してしまった方が簡単です。
 日本語版の誤変換は、多くが文節の切り分けが間違ったことに起因します。最新のAI変換を塔載したインプットメソッドでも、文節切り分けの間違いは時々発生します。まして単純な単文節変換ですから、長文入力をすれば、かなり頻繁に間違えます。
 貧弱な印象を与えないように、できるだけパソコンの変換方式に合わせたのでしょうが、単文節変換なら、文節は手動で切り分けた方が確実です。この点はOS4になっても改善されていません。次のバージョンでは、オプションでもいいので文節を手動で切り分けできるようにできるとよいのですが。

7.カタカナ、英数字の入力

 日本語版やATOKの辞書には、カタカナの語句が多く含まれているので、通常の漢字変換と同様にカタカナへの変換を行うことが多いと思います。正しくカタカナに変換できなかった場合は、カタカナにする文字列を選択して、再変換するか、Graffitiエリアの(あ⇔ア)ボタンをタップします。カタカナを連続して記入する場合は、初めから(あ⇔ア)ボタンをタップしておいて、カタカナ固定入力モードにしておくこともできます。同様にアルファベット固定入力モードにする場合は、(日/英)ボタンをタップすることで切り替えます。
 J-OS用の辞書は、J-OS IIIxまでに搭載されていたdic-lを除くと、カタカナだけの語句は辞書にもともと登録されていません。ですから通常の漢字変換と同様の動作ではカタカナには変換されません。J-OSでは、ウィンドウ内の(ア)ボタンをタップするか、Graffitiエリアで「+」を書きます。つまり、カタカナに変換するローマ字の直後に「+」を挿入します。J-OSでは、これをデリミタと呼んでいます(境界を定めるものの意味)。J-OSには、入力モードというものが存在しません(もちろん、J-OS入力ウィンドウを閉じれば、アルファベット固定入力モードなのですが)。ローマ字で入力していった文字列をどう変換するか、後から選択するのです。スペースも一つのデリミタで、漢字変換です。「+」がカタカナ変換、「\(バックスラッシュ)」が無変換(つまりアルファベットのまま)。「/」がひらがな固定です。私の場合は、「+」以外はほとんど使うことはなくて、アルファベットはウィンドゥを閉じて入力し、ひらがなで固定するときは(Flush)で確定してしまいます。

 さて、全角英数字の入力ですが、日本語版ではGraffiti入力はすべて英数字は半角で入力されます。全角で入力したい場合はソフトキーボードを表示させてから、メニュー-オプション-文字コード表で表を表示させ、表の中の文字をタップして入力します。ATOKでは、日本語入力モードでは数字は全角で入力されます。全角のアルファベットを入力する場合は、日本語入力モードで変換候補をポップアップさせれば、その最後に表示されます。小文字、大文字、頭文字だけ大文字の中から選べます。J-OSは、変換ウィンドウを表示させた状態では、数字は全角で入力されます。全角アルファベットは、標準では入力する方法がありません。ただしdic-itを使用すれば、ひらがなから一文字ずつ変換することはできます。しかし、これはほとんど実用的ではないので、Drag&Drop用のモジュールである、eimonさんのDDZenを利用するのがよいでしょう。

8.語彙

 dic-it 1.3にくらべて、日本語版の辞書には助詞を含んだ文字列や複合語が多く登録されているようです。数詞などの接頭語や…産などの接尾語が付いた語句は、一括して登録してあるのではないでしょうか。つまり、辞書作成の際に、基の語句をカテゴリー分けしておいて、全ての地名の語句の末尾に「産」をつけて、変換候補を増やしていくといった方法をとったのではないかと推測します。
 一般的な語句については、dic-itと日本語版はだいたい同じ程度だと思います。強いていえば、日本語版の辞書は文学的表現に強く、dic-itは技術的な語句に強い傾向があります。地名、名字はdic-itが強いですが、(名字の後に付く)名前は、日本語版の方が登録数はずっと多いです。ATOK製品版は、普段使っていないので詳しくはわかりませんが、辞書のサイズから考えても語彙はかなり多いはずです。専門用語以外はほとんどあると思って良いでしょう。さらに有名人はフルネームで登録されていたりします。もともとケータイメール用に開発されたものですから、女子高生が使う超方言的な語句が入っていたりして、この点では一世代前のパソコン版をしのぐでしょう。(マクドやロイホは変換されましたが、ケンチキはさすがにダメでした。)
 J-OSは、辞書を選べますし、自分で編集するツールもありますので、気に入らなければ色々と選択肢があるというのは強みです。Palm用の仮名漢字変換で医学系の辞書があるのは、今のところJ-OS用のdic-it Medicalだけです(まだベータ版ですが)。ATOKでも複数の辞書を登録できるので、専門辞書を追加することができるのですが、製品版に添付されているカタカナ語辞書以外聞いたことがありません。パソコン用のATOK辞書をPalm用に変換するツールがすぐに出ると思ったのですが、まだのようです。ただし、単語を追加する形で登録することはできます。これはPalmのメモ帳から取り込むので、大量の語句を一括して追加することができます。

9.単語登録

日本語版

ATOK

J-OS


単語登録の方法も三者三様です。日本語版では、標準のアプリケーションを使用中に[メニュー]・[オプション]・[単語登録...]で図のようなウインドウが出てきます。品詞の登録はありません。
 ATOKは単語登録のための独立したアプリケーション[辞書ユーティリティ]を起動して登録します。つまり、他のアプリケーションをいったん終了させる必要があります。ここでは品詞の登録も行います。メモ帳からの一括登録の機能もあり、大量の単語情報をメモ帳に貼り付けておいて、一度に登録することができます。
 J-OSでは、メモ帳のJOS(もしくはJ-OS)カテゴリにあるメモを直接ユーザ辞書として参照します。母艦から一括登録するには一番便利です。図のように[読み/語句]の形で登録します。それ以外の形式の行は無視されます。メモ15ページ分が登録可能です。
 また、J-OSと日本語版では、今関さんのMiruTanDAにより、使用中のアプリケーションを終了せずに登録することも可能です。J-OS用はUserDictToolsに後述のUserDictDoctorとともに同梱されています。また、日本語版用は現在アルファ版で、最新の日本語OSで使用できるかも不明です。今関さんのサイトからは直接リンクをたどることができないようですが、Muchy.comからダウンロードができます。

10.学習機能

 J-OSは、再変換の時に学習辞書に新しく語句を追加します。変換時には学習辞書の内容を最初に検索し、その後ユーザ辞書、一般辞書の順に検索します。通常、学習辞書と一般辞書には同じ候補が存在するので、J-OSでは、変換候補のウィンドウに同じ文字列が並ぶことがあります。
 学習辞書の内容は、2文字以下は完全一致で、3文字以上は先頭一致で検索されます。例えば、「しょ」を「諸」と学習させても、「しょち」は「処置」などと変換されますが、「しょう」を「章」と学習させると、「しょうゆ」は「章ゆ」と変換されることになります。長く使っていると気になる誤変換が増えてくるので、私は時々学習辞書をリセットしています。学習辞書のリセットは、今関さんのUserDictDoctorが便利です。
 日本語版は同レベルの語句のどれを優先するか、順番を入れ替えるような動作をしているように見えます。また、日本語版では、「のる」を「載る」と学習させた後「のった」は「載った」となります。その後再び「のる」を「乗る」と学習させても、「のせる」は「載せる」と変換されます。この学習機能は結構賢いです。送り仮名の全く違う文字列で学習内容を反映させるのは、J-OSの今の辞書構造では難しいでしょう。日本語版の辞書には、なんらかの形で変換候補のグループ分けがなされているのではないでしょうか。
 ATOKではさらに、文節切り分けを間違えた部分を一つの単語として登録してしまうことで再び間違えることがないようにするなど、使い込むほどに賢くなる機能が備えられています。またATOK v.2では、アルファベットで入力した数文字が以前変換した語句の頭と一致したら、その語句を候補としてポップアップしてくれます。ですから、読みを全部入力しなくても変換までの操作ができるようになっています。

11.遅延認識

 J-OSは、ひらがな・ローマ字(アルファベット)とも遅延認識ができます。但し、ひらがなの遅延認識では辞書のアルファベットの送り仮名の情報は無視されますので、変換効率が落ちます。というか、送り仮名を含む語句は遅延変換できないと思って下さい。これを解決し、ひらがなでも完全な遅延変換ができるようにするには、dic-it for Com-JIMを使用して下さい。 日本語版はひらがなと数字!の遅延変換が可能です。数字の変換では、一兆未満の整数を入力して変換させると、漢数字に変換できるのです。他にもカンマ付きの数字に変換してくれたりもします。つまり、「1200」は「千二百」「一二〇〇」「1,200」(半角)と変換されます。これには学習機能も適用されて、数字が変わっても同様の変換をしてくれます。ただし、日本語版にJ-OSをのせると、標準の日本語入力での遅延認識ができなくなるようです。
 ATOKはバンドル版が出てきた当初は遅延認識ができなかったことが話題になりましたが、今は解決してします。日本語版と同様の、ひらがな、数字のほかに、ローマ字で入力した文字列も遅延認識できます。この場合、J-OSのようにデリミタがあるわけではないので、スペースなどが途中に入っていると変換できません。ずらずらとローマ字で入力しておけば、日本語入力モードにしたのち、文字列を選択して(変換)ボタンをタップすることで、複文節の文を一度に変換することが可能です。

12.おわりに

 というわけで、色々書いてみました。参考になりましたでしょうか。変なところ、追加が必要なところ等ありましたら連絡して下さい。
 どれも十分実用的なレベルですので、頻繁に入力する方でないと、入力効率の差は分かりにくいかもしれません。ただし、長文を入力していくとなると、日本語版標準の入力はちょっとしんどいと思います。ATOKは専門メーカの商品ですから、さすがに良くできています。個人的にはJ-OSの入力は、自分でコントロールしながら入力していくといった独特の操作感で、誤変換を極力抑えることができるので好んで使っています。
 漢字を直接入力する方式がよいのか、仮名漢字変換がよいのかといったこともふくめて、本当にパーソナルに、高い次元で使えるPDAへの鍵は、この入力効率にあると思います。特に入力にこだわらない人でも、不満があったらいろいろと試して、自分の感覚にあったものを探してみる必要があると思います。技術的な部分に惑わされて「これがいいはず」といった思いこみで使い続けると、かえって損をすることになりかねません。
 ここにあげた以外にも、日本語入力ソフトには、全く違ったアプローチによる「POBox」や、J-OS用辞書が利用可能な「manae」「Com-JIM2」、ATOK同様連文節変換が可能な「Compact-VJE」などがあり、Graffitiの代わりにひらがなで入力できる「HiraPa」や「楽ひら」、また、漢字を直接入力する「極楽ペン」なども出てきています。それぞれに発展していってもらいたいです。私も新しい辞書の構想などがありますので、(ほとんどの人には意味のないものですが) 楽しみにしていて下さい。

99/11/14 初版
01/8/8 第二版、ATOKの追加など


おまけ 「日本語入力ソフトに関する一考察」

 現在、世の中に出回っている日本語入力ソフトのほとんどは連文節変換を行っています。通常は2つの文節を組み合わせた文字列を候補として選び出して、その最も長いものを採用する方式(2文節最長一致方式)を基本にしています。これにより、入力する人は、文節の区切を意識しなくても、コンピュータの側が文節を判断して漢字に変換してくれます。しかし、どんなにソフトが改良されていっても、文節区切の間違いは0にはなりません。また、同音異義語の誤変換も完全になくすことはできません。連文節変換は一度に長い文字列を変換できるので、しばしばこの誤変換を見逃してしまいます。私はこれを避けるために、変換後確定する前に読み直してチェックしています。これを怠ると、誤字の垂れ流しになってしまいます。個人のホームページで公開している程度ならば、恥をかくだけで済みますが、物書きのプロだとそうもいきません。誤変換のチェックや修正に神経を使い、それが入力に対する思考を妨げることになります。仮名漢字変換入力の最大の欠点がこの「入力中に素に戻ってしまう(言葉を編み出すことに集中できない)」という現象です。
 J-OSで入力していて思うのは、この点で連文節変換よりスムーズだということです。J-OSが単文節変換(というか、変換エンジンの側に文節を認識する機能がない)なのは、おそらく変換プログラムの構造を簡素化する目的であったと思いますが、文節区切りを手動で明示的に行うことは、結果として、文節区切りの間違いによるイライラをほとんどなくしてしまいました。また、細かく区切って変換するということは、続けて入力していっても、変換結果が入力中の文字列の直前に表示されるので、入力しながら前の文節の変換結果を確認することが可能であり、誤変換をチェックするのもそれほど神経を使う必要がありません。
 日本語入力ソフトは、機能を追求するあまりに、この基本的なところで後戻りできなくなっているのです。確かに連文節変換の方が技術的には進んでいるし、こちらを好む人が多いのもわかります。しかし私は、入力中に「選ぶ」とか「読む」「探す」といった動作に気を取られず、集中して入力作業ができるのは、J-OSにAI変換を組込んだ次のような仕様だと思います(J-OSにAI変換を望んでいるのではなく、処理能力のあるパソコン用ソフトでこんなのがあればいいなと思うのです)。
  1. 文節は手動で切り分ける。
  2. 複合語については、連続した複数の単語をつなげて変換する。
  3. 辞書に品詞などのカテゴリーを登録し、区別を正しく行う。
  4. 同音異義語は、文脈を読み取って最適なものを選び出す。
  5. 変換結果は未確定のまま置いておける。
  6. 入力を続けるうちに、前の変換結果が明らかにおかしいと判断された場合は、自動で再変換を行い、色を変えるなどで注意を促す。
  7. ソフト側が候補の絞り込みに迷っている場合も、色を変えるなどで注意を促す。
  8. 未確定の文節ごとに番号がふってあって、ファンクションキーなどで一発で目的の文節の次候補リストをポップアップできる。

以上は私が個人的に理想としているキーボード入力の仕様です。
 日本語入力用ソフトは、OS標準のものを使っている人が多く、サードパーティー製のものもATOKがかなりのシェアを占めているので、新しいものが入り込む余地はあまりないでしょう。実際上記のようなソフトを売り出しても、商売として成功する可能性は低いと思われます。ただ、このように全く違ったアプローチのものが出てくるのは、進化の過程で必要なことですし、健全な文化の姿だと思います。私の提案は一つの例に過ぎません。音声入力や、POBoxなどの選択しながら入力する方法も考えられます。情報技術の個人レベルでの利用が欧米に追い付くためには、日本語入力ソフトの発展が不可欠です。今の状態で落ち着いてしまうことは、避けなければなりません。


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