野帳 (PC Companion)

 このページは世界で最も多く使われているPDA、Palm OS機を「手帳」として、更に「手帳を超えるもの」として利用するため、その可能性を探っていくシリーズです。

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目次

はじめに

野帳---日本における手帳の始まり

(1999/4/3)

PC Companionという発想

(1999/4/10)

標準アプリでできること

Memo Pad (メモ帳) をデータベースとして使う

(1999/5/22)

全ての標準アプリを忘備録にする

(1999/6/20)

新語に対する記憶力を補う

(2001/4/23)

To Doをデータベースとして使う

(1999/8/29)

アドレスで素早い検索

(2000/7/30)

データを電子化するということ

データの電子化で注意すること

(1999/9/19)

表を諦めよ

(2000/4/30)

半角カタカナと全角英数

(99/10/16,99/11/7 改訂)

英字フォントの全角と半角

(2002/6/16)

機種依存文字

(1999/11/28)

日付の書式

(2000/2/7)

テキストデータの標準化

(2001/10/8)

Palm-OS考

パソコンを使えない人にPalmは有効か

(2000/11/5)

PalmDesktopにサーバリンク機能を

(2000/11/19)

階層式ファイル・メニュー構造

(2001/1/20)


はじめに

野帳---日本における手帳の始まり

 日本では、豊臣秀吉の時代に役人が農地の検地の際に携行した「野帳(のちょう)」が手帳の始まりと言われています。検地とは土地の測量調査であり、現場で野帳にその土地の面積・石高などの内容を記し、それを基礎として最終的に検地帳(土地台帳)を作成し、領主に提出・報告したのです。つまり、常に携行して書き留めた内容を別のところでまとめ上げるという、母艦とPDAの様な関係が、初めからあったのです。
 しかし、PDAを持つ前の、紙の手帳で記入された内容(スケジュール、メモなど)は、それで完結していて、別の目的のためにどこかに写し取るといったことはほとんどされなかったのではないでしょうか。かつての電子手帳の類はそのような用途のために開発されてきました。
 Palm OS機はHotSyncにより、簡単にパソコンとのデータのやり取りが可能です。これは単にスケジュールやアドレスのデータを一元化するということだけでなく、必要な情報をその場で取り出し、その場で情報を記して、後でその情報を利用してまとめ上げる作業が出来るのです。
 このシリーズではこのHotSyncを初めとするPalm OS機の特徴的な機能を有効に利用して、「これまでにパソコンだけ、または手帳だけでは出来なかったことが別の次元で可能になる」ことの事例をあげ、そのために必要なことを含めて記述していきたいと思います。デキルカナ(^^;)

PC Companionという発想

 まだIBMのPC Companionのページをご覧になってない方は、そちらを読んでみて下さい。ここで揚げられた3つの特長すなわち
>『単体で便利に機能』(Intelligent)する
>世界中の人々が同じように使える『世界標準仕様』(Global)の製品である
>パソコンと連携させて使用することでより大きな『相乗効果』(Synergy)が期待できる
をPalm OS機は十分に備えています。
 日本の電子手帳の文化は、どちらかというと単体で使用することを前提にして進んできました。「パソコンは難しいけれど、これなら使えそうだ」という気持ちで購入した人も多かったと思います。それに比べて、Palm OS機ユーザーでパソコンを使用していない人はほとんどいないでしょう。Macとの連携が不便だったために新たにDos/V機を購入した人もいるくらいです。これは、Palm OS機が、パソコンと連携させることで、『単体で更に便利に機能』するからです。これがつまり『相乗効果』なわけです。
 このすばらしい発想を単に物理的に可能にしただけでなく、実際に実現するために十分吟味された成果がPalm OS機だといえます。いつでもつれて回り、実用的に使い、"ユーザーのCompanion"としてともに成長する。そんな"人と物との新しい関係"を創り出す道具・・・それがPalm OS機なのです。

標準アプリでできること

Memo Pad (メモ帳) をデータベースとして使う

 Palmシリーズ用のデータベースソフトとしては、JFileが有名ですが、単純で項目の少ないデータなら、標準のMemo Pad (メモ帳) とFind (検索) で十分です。(むしろ使いやすいかもしれない)
 例えば品名と部品コードが対応したデータベースを作ってみましょう。この2つをこの様に記述します。

品名 コード
:box 2234
:pen 2548
:white board 0552

品名の前に「:」が入っているのは、一般のメモに品名が書かれている場合にノイズにならない様にするためです。つまり、余計な検索結果を拾わないためです。別にどんな文字でも良いのですが、『普段余り使わない・紛らわしくない・文字の幅が狭い』の点から私は「:」を使っています。
 品名とコードの間はタブで区切ります。品名の長さによってコードの位置がずれますが、この際体裁は気にしないようにしましょう。Excel等との連携を保つためにも、この点だけは守らなければなりません。こうしておけばExcelとPalm Desktopの間でcopy & pasteでデータのやり取りができます。
具体的には、

1. コードの頭に0が入ることがある場合は、その列のセルの書式を「文字列」にしておく。
2. 母艦に品名とコードのデータを呼び込んで、コードの列の前に一列挿入する。
3. 「:」を挿入するため、例えば「=":"&A2」等と式を記入する。
4. B-C列を選択してコピーし、Palm DesktopのMemo Pad (メモ帳) にペーストする。

 実際に検索するときは、Memo Pad (メモ帳) のボタンを押して、Find (検索) をタップし、品名もしくはコードを記入して(OK)をタップすればよいのです。(標準の検索は現在起動しているソフトから始めるので、必ずMemo Pad (メモ帳) を起動してから検索を行います。)
 Memo Pad (メモ帳) のファイルのサイズの制限を超える様なデータの量になったら、複数のメモに分ければよいのです。

 どうでしょう。あなたの身近にこんな活用ができるデータはないですか。

全ての標準アプリを忘備録にする

 もちろんPalm OS機には標準のToDoが塔載されており、私も便利に使っています。しかし、MomoPadやDateBookのメモで記入しているときに、これは後でチェックしなければならないと思うことはないですか。何を書いたか覚えていれば、キーワードで検索できますが、「何か大事なことを記録したような気がする」と思ったときに、これをチェックするのは大変です。そこで、後でチェックするような項目を書くときは★などのマークを付けておけば、このマークを頼りに検索できます。マークは普段使用しない記号ならば何でもよいのですが(母艦で文字化けするものは避けましょう)dic-itなら例えば★なら「んほ」で変換できます。ほかにも「ん」で始まる文字列に記号を充てていますのでその中から覚えやすいものを選べばよいでしょう。ToDoへいちいち移動する必要もなく、J-OSの入力ウィンドウを閉じることさえせずに、「これは大事」と素早く記録できるところがミソです。

新語に対する記憶力を補う

 現在のような情報化社会では、特定の言葉が極めて速く伝わって一般的になることがあります。また、特定の集団だけで通用する言葉も増加していて、辞書にも載ってない単語が、あっという間に会社などの閉じられた社会で普通に使われるようになっていたりします。これらを吸収していかないと、コミュニケーションに支障をきたし、ストレスを感じるようになります。
 中でも問題となる顕著な例は、アルファベットの頭文字で省略した文字列です。たとえば、今まで「ムダ」といっていたものがある日突然「シーオーピーキュー」なんていうことがあるから始末が悪い。知らなかったら、知っている人に聞いてすぐにメモしておかないと、後で困ります。一般的になってしまうと、だんだん人に聞きにくくなってきますし、後から調べようにもどう調べてよいのかわかりません。一般の辞書にはもちろん載ってないし、そんな用語集をまとめてどこかに公開されているかというと、そんな気の利いたことは誰もやってくれません。単なるアルファベットの羅列では、意味を推測することはほとんど不可能となってしまいます。しかも文字列自体に意味がないから、なかなか記憶にとどまってくれません。個人的にはこの様な流れはある事象に対する認識の格差を生むのでやめていかなければならないと思うのですが、とりあえずはそうもいってられません。だから、自分の記憶力を補うためにメモするのです。

:COPQ[tab]Cost Of Poor Quality[tab]低品質コスト、ムダ

の形式で、Palmのどこでもいいから(今開いているページでよい)メモしておけば、後から検索することができます。もちろん、メモの特定のページにまとめておければ簡単な辞書になるでしょう。上の形式で標準化しておけば、他のアプリケーションへのコンバートも簡単です。頭に「:」があるのは、検索の際に余計なものを拾わないためです。ここを適当に変えて、普段使わない文字(または「dic」などの文字列)にすることで、あちこちに散らばったデータを拾い集めることもできます。ここでは検索文字を「:」とすれば、どこに書いてあっても見つけられますから、あとで一箇所にまとめたくなったときにも便利です。

To Doをデータベースとして使う

 Palm OS機のユーザーには標準のDate Book(予定表)の代わりにDateBk3を使用している方も多いと思います。そして、やらなければいけないことの管理をDateBk3のFloatで行い、標準のTo Doにデータがない方もいるでしょう。
 そこで、To Doでデータを整理してみるというのはどうでしょう。To Doには、タイトルの他にカテゴリー、期日、優先度という3つの分類と、それぞれのデータにメモが記入できるようになっています。例えば仕事で関係する部品のデータを整理するとして、タイトルに部品名を、メモにその部品に関する情報を記録していきます。優先度は私の場合、部品のメーカ毎の分類に使用しています。(5つしか分けようがないので、5は「その他」としてます)これを全て「Parts」というカテゴリーにしておきます。期日は、その部品に対して何かアクションを起こさなくてはならない場合に、その日を入れておくこともありますが、単純にソートの順番を決めるために適当な日付を入力しておくという手もあります。To Doはタイトルでソートできませんので、その代わりにするわけです。

アドレスで素早い検索

 私が紙の手帳を使っていた頃、不便に感じていたことの一つにアドレスの使いにくさがありました。増え続けるデータによって情報が散乱してしまい、必要なときにすぐにたどり着けない。アドレスはその部分だけ別冊になっていたので毎年使い回していたのですが、新しい手帳に書き写している方もいるでしょう。システム手帳のようにルーズリーフになっていても、検索性・編集のしやすさには限界があります。
 Palmでは、カテゴリーによる分類とインクリメンタルサーチ(1文字入力するごとに候補を絞り込んでゆく)によって、格段に使いやすくなっています。ところで、日本語版のPalm OSでは、英語版にはない、姓と名の読みを入力する項目があります。そして、検索の際に「よみ(姓)」の項目と「姓」の項目に優先順位はありません。英語版とのデータの互換性をある程度保ちながら、検索性を犠牲にしないためにこうなったのでしょう。つまり、読み仮名は「よみ(姓)」の項目に書いてあろうが、「姓」の項目に書いてあろうが、日本語版では正しく50音順に整列され、ひらがなによる検索も同じように可能です。日本語版から英語版にアドレスデータをビーム(赤外線通信)した場合は、読みの項目は削除されてしまうので、英語版のPalmとビームをする機会のある方は、自分の名刺では読みを「姓」の項目に入れておくというのもいいかもしれません。私の場合はメールアドレスがそのまんま姓名の読みなので、あえてそういうことはしていませんが。

 さて、日本語版を使っている方は、「よみ(姓)」の項目にひらがなで姓の読みを入れておいて、アドレスを立ち上げたら日本語入力モードで入力していって検索を行っていると思います。しかし、1秒でも早くたどり着くために私が勧める方法は、「よみ(姓)」の項目にローマ字で、しかも「あ・い・う・え・お」以外は母音を抜いて記入しておき、英数入力モードで検索するものです。つまり、石橋なら「isbs」です。これなら「石橋」と「石田」ならGraffitiで2文字少なく(「し」を「shi」と入力する人は3文字少なく)、「山田」と「山本」なら3文字少ない入力で区別することができます。さらに、データがそれほど多くなければ、最初の1文字を入力しただけで必要なデータがリストに現れる確率はかなり高くなります。
 Palmをさっと取り出して、アドレスのボタンを押し、人指し指の爪でGraffitiする。この間2〜3秒。紙の手帳ではとても真似できません。

データを電子化するということ

データの電子化で注意すること

 データを電子化することのメリットで、私が思い付くのは次の二つです。

1. データの一元性(同時性)
2. データの検索性

 つまり、電子化されたデータは、現在ある姿で完結するものではなく、再利用がしやすいのです。そして、電子化されたデータを作成する時は、その事を考慮しなければなりません。つまり、使い回しが利くこと、検索漏れがないことが、電子化されたデータを有効に活用する条件なのです。そのために最も基本的かつ重要なことは、スペース(空白文字)や、改行(文の途中で改行コードを挿入すること)で体裁を整えないことです。つまり、できるだけプレーンなテキストデータの状態にしておくということです。(メールのやり取りなど、一部の場合においては、相手の環境に合わせて適当に改行することがマナーになっていますが、相手がPalm OS機で読むことが分かっていれば、段落中では改行を行わない方がよいでしょう。)
 特にMS Wordなどのワープロソフトは、テキストの部分と体裁の情報を完全に分割して記録できるのですから、これらを使用するならば、スペースや改行で体裁を整えることは絶対にやってはいけません。ルーラー上にインデントとタブを配置し、それをスタイルとして保存し、スタイルを切り換えることで体裁を整えるのがワープロソフトの基本です。そして、テキストボックスの機能はできるだけ使わないことです。テキストボックスの中に書かれた文字は、文書をテキストファイルで保存したときに消えてしまいます。どうしても必要な時は、テキストボックスの裏にその内容を隠しておくなどの処置をしておくとよいでしょう。
 こうしておけば、文書をテキストファイルで保存したり、copy&pasteでやりとりしても不都合が発生することはずっと少なくなります。

表を諦めよ

 日本人は表組みが好きです。(というか体裁にこだわる)
 かつて「一太郎」に人気があった理由の一つに、Wordよりも細かく罫線の太さや線種が設定できることにあったのは間違いないでしょう。ワープロ専用機も表組みの機能を争っていました。

 世の中の一部には、きちっと表組みされたA3の資料を、速く、見栄えよく作れるのが仕事のできるヤツという考えがまだあります。だいたいそういう資料というのは、よく内容を知らない管理者に、中身を絞って分かりやすく説明するためのものであって、書いた本人が後で何かを検討する場合には、あまり役に立たないことが多いものです。そういう世界は放っておいて、ここではある程度データベース的な要素を持たせた帳票(テンプレート)の話です。これがうまく作られていないと、ちょっと内容を変更するだけで、体裁が崩れてしまい、それを整えるのに膨大な時間を費やしてしまいます。しかも後で検索もコンバートもできない資料ができあがってしまうのです。
 悪い帳票は、無理やり体裁を整えるために、テキストボックスを多用していたり、一つの文を複数のセルに分けて入力しないと正しく表示できないようなレイアウトになっています。まず、テキストボックスは図形と一緒に使用する最後の手段だと思ってください。本文をテキストボックスに入れるなんてもっての外です。また、脈絡のないセルの配置をしたり、一つの文を複数のセルに分割しなければレイアウトが成立しないような帳票も実用的ではありません。いずれの場合も、正確な検索は不可能になり、他のファイル形式にコンバートしたときに、データの欠落や分散が生じるので、事実上利用価値はなくなってしまいます。
 最新の機能を駆使すれば、柔軟性のある表組みも可能かもしれません。しかし現状ではまだ大変面倒です。それに、他のソフトに移行したとき、そのままの体裁で表現できる可能性が極めて低くなってしまいます。データを共有化する際に、ファイルをHTMLやPDFにする可能性もあると思います。特定のアプリケーションに依存するようなデータを蓄積していくのは、膨大なムダを生み出す危険性があります。ファイルをテキスト形式で保存した場合に、内容が分からなくなるほど文字の並びがくずれてしまうような表現は、避けなければいけません。MS Wordを使用しているのなら、標準表示(下書きモード)にしてみれば、大体分かると思います。

 仕事場で文書の電子化が進み、「帳票」なるものがサーバ上に出現してきていても、多くはそのまま印刷して手書きで埋めていくのと同じ発想で作られたりしています。実に使いにくいのです。これが文書の電子化、データの共有化にブレーキをかけていることを認識すべきです。表組みを諦め、柔軟性のある帳票作りを進めなければ、いつまでたっても文書の電子化のメリットを享受することはできません。
 ではどうすればよいのか。まず、印刷したときに体裁よく整えるのを優先しないことです。パッと見たときの印象にあくまでもこだわるのならば、その資料の利用価値は期待しないほうがよい。つまり、そんな資料は、資料を作ること自体が目的なのであって、見た目がきれいである以外に、電子化されている意味はありません。
 どちらも譲れないのなら、データベースソフトを使ってレイアウト表示させることになるのでしょうが、なまじWindows OfficeにAccessがバンドルされているばかりに、データベースは敷居が高くなってしまいました。データベースソフトに選択の余地がなく、仕方なくAccessを使って挫折する人が多いためです。これはマイクロソフトの罪だと思います。よほど寛容で辛抱強い方以外は、始めから他のソフトをあたった方がいいでしょう。Mac用のAccessがないのは、Macユーザにとって幸せなことです。
 話がそれましたが、情報を電子化するとき最も基本になるのは、情報の一つのかたまりは、それがそうであるとコンピュータが理解できる形式で伝える必要があるということです。通常、情報はタブや改行コードでかたまりに分けられます。つまり、ひとつの情報のかたまり(例えば一つの文)の中には、タブや改行コード、空白(スペース)を挿入してはいけないのです。特にワープロソフトを使う場合にこの認識が希薄な人が多いのです。これができないのならば、表を使った体裁のよいレイアウトなど、諦めるべきです。

半角カタカナと全角英数

 インターネットを利用する際に半角カタカナを使ってはいけないのは、7ビットのJISコードを基にして作られた日本語文字コード(ISO-2022-JP)が、半角カタカナのコードを持っていないため、サーバによっては処理ができないという理由によります(私も詳しくは知らない)。しかし、Palm OS機ユーザとしてもっと身近な例として、英語版+J-OSの環境では半角カタカナが表示できないのです(現行バージョンでは可能)。このような環境のユーザとデータをやり取りすることもあるかもしれませんし、自分が将来英語版の機種を使うようになるかもしれません。Palm OS機で扱うデータは、半角カタカナを使わないようにしましょう。メールを出す相手が英語版のPalmで読むのなら、フェイスマークにも注意して下さい。
 全角英数については、表示はできますが、入力が面倒です。日本語版ではおそらく、ソフトキーボードを表示させて、メニューから文字コード表を呼び出さないと入力できません。J-OSでは全角数字は入力できますが、全角英字は標準では入力の手段がありません。dic-itでは、一応全角英字をサポートしていますが、仮名変換による一文字ずつの入力ですので、実用的ではありません。入力できないと何が問題か、それは「検索ができない」ことです。実は日本語版では英数字は全角・半角を区別せずに検索を行うので、実際には不自由しませんが、英語版+J-OSの環境ではこれができません。検索対象を記入するダイアログが出ても、そこに記入できない文字は当然検索不可能なわけです。このような理由から、Palm OS機で利用するデータは、全角英数を使わないようにした方が無難です。
 例えば、MacintoshユーザならばJeditを使えば半角カタカナ→全角や、全角英数→半角がメニューから簡単にできます。このようなツールを利用して、Palm Desktopに貼り付けると便利です。

(99/11/7追加)
 Palmでポンのeimonさんが半角と全角の変換を行うDrag &Dropのモジュールを公開してくれました。検索のダイアログボックスでは直接変換させることはできませんが、アプリケーション上で全角に変換させた後、選択された状態でダイアログを開けばOKです。でもやっぱり全角英数は使わないようにした方が無難です。(このモジュール、DDZenとDDHanは、DDTukaに同梱されています。)

英字フォントの全角と半角

 日本でのコンピュータの世界では、英字フォントに全角と半角があります。これを特に意識せずに混在させている人がいますが、これははっきり区別するように心掛けてください。
 一番の問題は、全角英数文字は、通常日本語表示のできないOSでは文字化けするということです。また、見た目は似ていても違う文字ですから、検索もれなどの問題が発生することも考えられます。(日本語版Palmでは、全角・半角を区別しない検索をしますが、英語版Palmでは全角・半角を区別した検索になります) さらに言えば、似て非なるものを混在させること自体が問題なのです。思考活動の根幹をなす行動に、異なる事象の共通する部分と相違する部分を抜き出すというものがあります。この行動は、論理的な思考をする上で非常に重要です。普段からこの行動 (抽象と具象) を意識しているかどうかで、問題が発生したときにアイディアが出せるかどうかに影響してきます。私は、ある資料を見たときに、その中に英数字の半角と全角が無秩序に混在していたら、その資料の内容そのものに疑問を持ちます。カタカナの半角と全角の場合はなおさらです。

 私の場合、パソコンではカナ入力、PalmではJ-OSでの入力ですから、全角英数は入力が困難なので、ほとんど使いません。しかし、多くの人はパソコンでローマ字入力をしており、意識しないと入力ソフトが変換するまま、全角と半角を混在させてしまうでしょう。さらにWidowsのプロポーショナルフォント (MS PゴシックとMS P明朝) が半角と全角を区別しにくいデザインになっているため、問題があやふやになりやすくなっています。

 とりあえず、Windowsでは特に理由のない限り、等幅フォントを使うことから始めてみてはどうでしょう。

機種依存文字

 いまさら話題に挙げるまでもないのですが、Palmシリーズにも日本語版が出て、「普通の」ユーザが増えてきたので、一応書いておこうと思います。
 文字コードにどの文字を充てるかは、基本的にJISで規定されているわけですが、記号などについてはメーカが、場合によってはフォントごとに決められているのです。そのため、例えばMacとWindowsで同じコードに違う文字が充てられていて、文字が化けてしまうことがあるわけです。
 その中でもよく見掛けるのが、PalmVという文字。Winな人は気が付かないでしょうが、MacではPalm(企)のように表示されます。逆にMacで書くとPalm。となります。WindowsではPalm・の様に表示されているのでしょうか。上記の二つとも、英語版Palm+J-OSでは空白になります。
 丸で囲んだ数字や、ローマ数字、省略文字や組文字などは、他のプラットフォームでは違って表示されることや、表示されないことが多いので、使わないように心掛けましょう。特にNiftyやWeb上の掲示板での書き込みなど、不特定の人が読む場合は絶対にやってはいけないことです。ローマ数字はアルファベットを使用してPalmIIIなどとするのが鉄則です。ギリシャ文字はMacとWindowsで同じように表示されますが、PalmGiraffeでは念のため、説明を添えるようにしています。

 半角記号についても、日本語版と英語版では、違って表示されるものがあります。英語版の\に日本語版では¥(いずれも半角)を充てたり、半角カタカナを入れたりしたためです。Graffitiで入力するときは、Extended shift(\の後に何か書いて記入する)の記号は文字化けする確率が高いので注意しましょう。日本語版だけにあるGraffiti"「"と"」"も必ず全角で(日本語入力モードで)記入しましょう。

 WorkPad日本語版は、Windowsと同じ文字コード体系を使用しているようなので、問題が発生しにくく、気が付かない方も多いと思われますが、MacやJ-OSではそうはいきません。不便といえばその通りなのですが、こうなってしまっている現状では、個人が注意していかざるを得ないでしょう。

 コンピュータのプラットフォームがWindowsに収束していくとはとても思えません。逆に、通信環境が広がっていくことで、様々なプラットフォームを超えてデータをやりとりすることが、今後増えていくと思われます。少なくともPalm OS機ユーザは、機種依存文字に対する認識を持っていただきたいと思います。

日付の書式

 Palm OS機では、日付の書式をいろいろと変更できるようになっていて、予定表での表示やショートカットによる挿入などに反映されるのですが、使わない方がよいものが中にはあります。データを使い回そうとするときには、Excelなどの表計算ソフトに貼り付けた場合に、日付として認識されることが重要です。日付として認識されなければ、それは単なる文字列になってしまいますから、経過日数などの計算もできませんし、ソートが正しく行われないかもしれません。
 書式を変えて試した結果、以下のようになりました。

Excel 95 for Win
Excel 98 for Mac
月/日/年
×(※1)
×
日/月/年
×(※2)
×
日.月.年
×
×
日-月-年
×
×
年/月/日
年.月.日
×
年-月-日
※1: "2/7/99"は認識されたが、"2/7/00"は認識されない。
※2: "7/2/99"は日付としては認識されたが、7月2日と認識される。
 Excelのバージョンや設定によって多少違いがあると思いますが、日付の書式は、"年/月/日"か"年-月-日"に設定しておくのが無難です。メモ帳に直接入力する場合も同様です。
 また、"2000年2月7日"や"7/Feb/00"なども認識してくれますが、"7/Feb./00"は認識してくれません。月の名前を省略した印にドットを入れると、かえって認識されなくなるのです。Excelの標準設定では、日付として認識されると右詰めで表示され、文字列として認識されると左詰めで表示されます。常に気をつけるようにしましょう。

テキストデータの標準化

 ITを推し進めるなかで、個人レベルでできることにデータの標準化が挙げられます。
 職場で文書を作成するのに、多くの人はMicrosoft Wordなどのワープロソフトを使っていると思いますが、Wordにはファイルの作成されたバージョンが違うと開けないことがあるなどの問題があります。
 人間が普通に読み書きできるファイルの中で、パソコンやPDAなどの電子機器にとって、最も取り回しのしやすいかたちは、タブ区切りテキストです。Palmではタブの位置を揃えられないので、タブ区切りテキストは若干見にくくなります。しかし、めげずにタブ区切りテキストを使うことが、様々なアプリケーションやOSでデータを使い回すためのコツです。
 標準化されたデータは、再入力を必要とせずにコピーされ、色々な書類に合わせて成形されながらそのまま使用することができます。「大きなファイルの一部のデータを蓄積するのは、常に持ち歩くPDAで行い、母艦でコピーして仕上げる。」といった使い方が、これから増えてくると思います。PDAがもっと普及すれば、ビジネスソリューションシステムをこの様な形態で構築するのが一般的になるでしょう。「PDAのデータは、そこで完結せずに、他のアプリケーションと連携して使い回す。」という認識を持って、普段からタブ区切りテキストを基本にした記入を心掛けているかどうかで、将来メモのデータの利用価値も変わってくると思います。
 ただし、ここで大きな問題があります。Palm DesktopのMac版はタブの入力ができないのです。タブキーを押しても5つの半角スペースが入力されてしまうのです。しかしPalmで入力したタブはPalm Desktop上でそのメモを編集しない限りタブとして残っていますので、そのままコピーしてExcelに貼り付ければ複数のセルに分割されます。Macを母艦とする方で、Palmで入力したタブ区切りテキストを母艦上のソフトで利用したい場合、そのメモをPalm Desktopで編集しないようにするのがよいでしょう。

Palm OS考

パソコンが使えない人にPalmは有効か

 結論から言うと私は有効だと思います。それは、Palm OSはパソコンを使い始める時に初心者が理解に苦しむ二つの概念が存在しない(もしくは利用者にその存在を示さない)構造になっているからです。それは、

1.主記憶装置と補助記憶装置、および保存するという概念。
2.ディレクトリによる階層型ファイル構造の概念。

の二つです。そもそもPalmでは、スタンドアローンで使用している(つまり母艦となるパソコンとデータを連携させたり、アプリケーションを追加したりしない)限り、ファイルとか保存の概念を理解する必要がないのです。パソコンでは、文字を記入して閉じようとすると、どこへ保存するかきいてきます。そして、訳の分からないファイル構造を見せつけられます。そのまま「保存」をクリックして、果たしてその人は再びそのファイルを開くことができるでしょうか。
 ワープロ専用機は、まだかなり分かりやすいです。ファイルといえば自分の作成した文書ファイルのことだし、記憶装置はフロッピーディスクだけの場合が多い。しかしやっぱり保存するという行為は行わなくてはならない。「画面に出ているのに保存されていないとはどういうことだ?」「それは一時的にメモリーに記憶されているだけなのさ」「メモリーとは何ぞや?」「情報を記憶しておく装置さ」「記憶するのはフロッピーじゃないのか?」「フロッピーは最終的に情報を保存する場所で」「???」
 Palmの標準アプリには「保存」コマンドがありません。 画面に表示されている文字は記憶されているという、紙の手帳では当たり前のことがここでは実現されています。しかも、4つのアプリケーションボタンを押すことで、あたかもそのアプリの専用機のように振る舞います。そのアプリを使っている以上、他のアプリで作られたデータは全く意識する必要がありません。
 そして作られたデータは、カテゴリーという最小限の分類によって整理されます。データ一覧では現在開いているアプリで作られたデータ以外顔を出しません。もちろんファイル形式なんて考える必要はありません。アプリケーションファイルは、その存在さえも認識する必要がありません。
 ディレクトリによるファイルの階層化は、分かっている人には当たり前ですが、初めてこれを見せられると面くらうことが多いのではないでしょうか。そういう、現在のパソコンの、最も基本的でありながら分かりにくい部分の一つの答えがPalm OSのようなやり方なのだと思います。

PalmDesktopにサーバリンク機能を

 このページで何回も書いていますが、データを電子化するメリットは、一元性と検索性にあると思います。ところが、今のPalmDesktopは、複数のユーザでデータを共有することができません。ユーザデータを丸ごとコピーすれば複数のユーザで共通のデータを使うことができますが、たとえばアドレスのあるカテゴリだけとか、一人の電話番号だけを共有するといったことはできません。従って、会社の得意先の担当者の電話番号など、結局どこかにあるものをコピーするか、再入力して使っているのではないでしょうか。せっかくHotSyncという優れた機能で、パソコンとのデータの共有ができるのに、パソコン側のデータは、それがネットワークでつながっていてもスタンドアロンで使っているのと同様の機能しかありません。PalmDesktopにサーバとのリンク機能があれば、特定の人のアドレスをサーバからHotSyncのたびに引張ってきて、常に管理された一つのデータを共有することができるでしょう。また、その機能を利用して、プロジェクトの進捗状況を管理するなどの新しいアプリケーションも出てくると思います。複数のユーザのデータをWebから読み込んで参照できるソフトはどこかにあったような記憶があるのですが、PalmDesktop Serverなるものが、そろそろ出てきてもよい頃でしょう。

階層式ファイル・メニュー構造

 例えばPalmのメモ帳アプリケーションの場合、メモはカテゴリーで区別されているだけです。メモが増えていくと、これは不便だと思うことがあります。しかし、Palmはあえてメモに深い階層を与えていません。
 階層式ファイル構造というものは、初めて使う人の何割かは、理解できないものなのです。毎日パソコンを使っている人でさえ、この概念を分かっていないことがあります。MS-DOSを使っていた人ならば、カレントディレクトリ(自分がどこのファイルを扱っているのか)を確認しながら作業をしていたので、この概念を理解していなければ、そもそもパソコン自体が使えなかったのですが、GUIになると必ずしもその必要がなくなります。Cドライブとサーバ上のファイルの区別がつかなかったり、マイドキュメントのフォルダにファイルが散らばっている人はたぶんファイルの移動などの操作が苦手だと思います。その人は、階層式ファイル構造が理解できてない可能性があります。理解している人は、おそらくファイル構造を頭の中で視覚的に捉えていると思いますが、これは誰にでもできることではありません。ファイル構造を視覚化するということは、概念を抽象化してイメージしているわけで、非常に高度な情報処理を頭の中で行っていることになります。Palmのライバルは紙の手帳ですから、この様な複雑な操作を利用者に強いるのは問題があります。
 階層式メニューも同様に、敬遠する人が出てきます。画面が小さくてできなかったのではなく、Palmでは敢えてメニューを階層式にすることをしなかったのだと思います。メニューからコマンドを選んでも、ダイアログボックスが出てくるものを極力少なくし(つまりメニューから選んだだけで即座に処理が実行される)、表示させた場合でも、オプションの選択と誤操作を防ぐ確認程度です。ダイアログボックスからさらに深いところに進んで操作をさせることは、少なくとも標準アプリケーションではありません。
 「手順を減らす」「システムの構造を簡素化する」ということは、だれにでも使えるようにするためには大変重要なことです。デジタル家電や、携帯電話の高機能化でも、このことに十分注意して操作体系を吟味しなければなりません。しかし、この分野は大変遅れています。他社に負けない商品にするには、とにかくよそがやっている機能はとりあえず塔載して、更に高機能にしなければならないという意識がメーカ(特に営業)にはあります。しかし、どうやって実際に使ってもらうかというところまで知恵がありません。コストと納期に振り回されながら、使いもしない機能を塔載したり、見た目にこだわりすぎて却って操作を煩雑にしているのが現状です。
 デジタルデバイドというものは、こういうことから生まれる可能性があります。音声認識や、自然な言葉での操作の研究が進むのも良いことですが、もっと基本的な部分で、操作の簡素化の研究が必要です。家庭に入ってくるような機器については特に、ユーザインターフェイスのデザイナーの養成と地位向上(不要と思われる操作や機能を削除させる権限を与えるなど)が急務だと思います。複雑な操作が当たり前になってしまってから、それを修正したのでは遅いのです。

 


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