○ フィルム / 現像
8mmフィルムを使った8mmキャメラが日本の市場から姿を消し、一般の方々にとって映画撮影機とい
うものが忘れさられようとしている今、フィルムを使用した映画用キャメラはいわゆるプロユースのもの
しかなく、この事が更に映画撮影機の概念を特殊な装置として位置ずけてしまったように思います。
ビデオキャメラ全盛の現在、フィルムと磁気テープの違いを意識できなくなりつつあるのではないでしょ
うか。
御存じの方もいるとは思いますが、簡単にフィルムを説明しておきたいと思います。
まず、モノクロフィルムの構造を簡単に言ってしまうと写真乳剤層とそれを乗せておくためのベースから
なります(図1)。
この写真乳剤層にはハロゲン化銀という化学物質が含まれており、光に反応して化学変化をおこします。
ただし、これだけでは目に見える形の像とはなりません。光にあたったフィルムを見ても何も変化したよ
うには見えないのです。
この時の写真乳剤層の中では確かに化学変化(感光)がおきているのですが、これを目に見える形にして
あげる必要があります。この作業を現像行程と言います。
現像行程とは、光を受けて変化しているハロゲン化銀を薬品によって還元銀に変化させる作業です。
還元銀の状態に変化して始めて目にみえる像になります。
ハロゲン化銀は光の強い所では変化が強く、光の弱い所では変化も弱い性質を持っていて、これを還元銀
に変化させると光の強い部分は黒く、光の弱い部分は透明になります(ネガ像)。
変化しなかったハロゲン化銀をそのままにしておくと変化が続いてしまうので、定着という作業で変化し
なかったハロゲン化銀を除去します。
この薬品で反応させる間に水洗の行程を入れたものが現像といわれているものです。
整理すると、
感光済みフィルム
↓
現像
↓
水洗
↓
定着
↓
水洗
↓
乾燥
↓
ネガ像フィルム
という流れになります。(現在のフィルムは各メーカーによって様々な工夫が施されており、行程はもっ
と複雑になります)
さて、モノクロフィルムの構造は分かっていただけたでしょうか?
この事を知っているとカラーフィルムの理解に役立ちます。
みなさん上の図2を御覧になってどう感じたでしょうか?
なんだかモノクロに比べると色々な層があって複雑だなぁと思いましたか?
でも、こう考えてみて下さい。
青、緑、赤の各々がモノクロの写真乳剤層と同じものだと。
ここでもう1つ知っておいていただきたい事に光の3原色があります(図3)。
上の図のように3色が均等に混ざりあったところは白。
青と緑が重なりあったところはシアン。
赤と青が重なりあったところはマゼンタ。
緑と赤が重なりあったところはイエローになっています。
これを加法混色と言います。
このイエロー、マゼンタ、シアンを図2の青感性乳剤、緑感性乳剤、赤感性乳剤に置き換えてみて下さい
。青感性乳剤にはイエロー発色剤、緑感性乳剤にはマゼンタ発色剤、赤感性乳剤にはシアン発色剤が含ま
れていて、カラーネガ像を形成しているのです。
そして、青感性乳剤層が光の成分中に含まれる青の部分、緑感性乳剤層が緑の部分、赤感性乳剤が赤の部
分を受け止め、更に3層の濃度差が混ざりあい色となって表現されているわけです。
黄色フィルターは、その下にある緑感性乳剤と赤感性乳剤にとって必要のない青の成分を吸収するために
あります。
ハレーション防止層は、フィルムが強い光を受けた時にベースで反射してしまい結果的に上にある乳剤を
二次的に露光してしまうのを防ぐ層です。
実に簡単ではありますが、フィルムの構造については分かっていただけたでしょうか?
次に理解しておいてほしいことにフィルムの感度があります。
みなさんも普通のスチールカメラを一度は使ったことがあると思いますが、そのカメラで使うフィルムに
は様々な感度というものがあります。<ISO 100>だとか<ISO 400>と書かれているあれ
です。みなさんはこれがフィルム感度というもので明るさに関係していることは御存じだとおもいます。
数字が大きくなればなるほど暗い場所で撮影できるということなのですが、この感度というものがどうや
って決められているのかを説明したいと思います。
フィルムの化学的な部分を更に知りたい方は下記の書籍を参考にされると良いと思います。
○ 『映画撮影技術ハンドブック』 写真工業出版社
映画技術全般に渡って紹介しています。初心者の方には向いていると思います。
映画関連の書籍が充実している本屋さんでしたら、置いてあると思います。
○ 『写真技術ハンドブック』 脇リギオ 著 ダヴィッド社
写真についての解説書ですが、フィルム自体は同じ技術の上に成り立っていますので参考にな
ります。
やはり、初心者の方向けです。
以下は、かなり専門的な内容のもので、現在入手できるかどうかも確認していません。
私自身ほとんど古本屋さんで入手しています。
○ 『写真の科学』 田中益男 著 共立出版株式会社
○ 『カラー写真』 共立出版株式会社
○ 『写真化学』 共立全書 共立出版株式会社
○ 『写真用語辞典』 写真工業出版社
○ レンズ
撮影という行為の中ではレンズの選択というものが非常に重要なファクターとなります。
レンズの特性を知る事は、表現方法の一つを知る事にほかなりません。
レンズには単焦点レンズといわゆるズームレンズがあります。
みなさんはキャメラ本体と被写体との距離というものを意識した事がありますでしょうか?
実はこの事がレンズ特性とおおいに関わっています。
被写体があってキャメラがある、そしてズームレンズでフレームを決める。
この時、フレーミングに対する意識はあっても焦点距離に対する意識はあるでしょうか?
被写体に対して同じフレーミングでも短焦点と長焦点のレンズでは被写体前後の表現が全く違います。
ズームレンズの普及が逆にレンズの持っている特性に対する関心を希薄にしているのです。
(以下、2001/2/26加筆)
この下の図(図4)をみてください。
これはレンズを一番簡単に表したものです。

この様にレンズには、焦点に向かって光をまげる性質があります。
市販の物も含めて、レンズは50ミリとか100ミリという分け方をされていますが、この50ミリ・
100ミリというのが焦点距離と言って、上の図の赤い線の距離の事を指します。
この距離が実際50ミリならば焦点距離50ミリのレンズ、100ミリならば100ミリのレンズとな
る訳です。
下の図(図5)は上の図4より焦点距離が短くなっています。
レンズから被写体までの距離を同じ距離とすれば、この様に焦点距離が短くなればなる程、焦点に結ば
れる像は小さくなっていきます。所謂ワイドレンズはこの焦点距離の短いレンズの事です。
さて、上の二つの図では焦点の位置が変化しています。しかし実際の撮影装置ではレンズを固定するマ
ウントからフィルム面(焦点)までの距離は一定です。(例外として一部のスチール撮影用カメラやム
ービーでも一部の65ミリキャメラの中にはレンズ自体を前後させて焦点調整をする物があります)
下の図(図6)では、被写体がレンズに近付いています。この時レンズの位置が固定されていれば、焦
点の位置は後ろへ後退します。最初の焦点位置では焦点がズレた状態、つまりピントが合っていない状
態になります。
繰り返しになりますが、ここで言う焦点とはピントが合っている点の事です。つまり、焦点の位置を固
定してしまうと言う事はある一定の距離にある被写体にしかピントが合わないと言う事なのです(一部
の安価なカメラに使用されているのがそれです)。
それを解決する為にレンズの中でレンズを移動させる方法が考え出されました。
移動させる方法によって、全体繰り出し、前玉繰り出し、インナーフォーカス、フローティング等の方
式が考案されています。
上で説明したレンズは、もっとも原始的な状態です。みなさんが御存じのレンズには何枚ものレンズが
張り合わされ、構成されています。
下の図(図7)はその中でも比較的構成枚数の少ないテッサータイプと呼ばれているレンズです。
(一部説明に事実誤認があった事わかりました。さっそくその部分は削除いたしました。
もう一度検討し、再掲したいと思います。
既に読まれた方には大変御迷惑をおかけしました)
2003/8/22 重枝 昭典
(以下、2001/6/13加筆)
○ 間欠運動とシャッター
みなさんが普段劇場等で観ている映画。仮に2時間の上映時間の内、約半分は暗闇で何も観ていないと
言ったらどう思われるでしょうか?
しかし、これは本当の話なのです。
ここでは映像が観る人にどうやって伝わるのかを技術の側面からお話したいと思います。
(以下、2002/7/15加筆)
映画キャメラのほとんどが採用しているシャッターシステムに回転シャッターというものがあります。
これはモーター軸の先に円盤状のミラーを付け、その円盤状の一部を取り除き、撮影時に回転させると
いうものです。

このミラーシャッターとフィルムを一コマづつ掻き落とす機構が連動して露光をおこないます。
つまり、ミラーシャッターのミラー部分がフィルムの前にある時にフィルムを次のコマに送り、フィル
ムを固定した時にミラーシャッターの欠けた部分がフィルムの前になり、レンズからの光をフィルムに
露光させるのです(間欠運動)。この動きを1秒間に24回繰り替えし、1秒の動画をフィルムに記録
します。
ミラー部分は撮影者の覗くファインダーへ、ちょうどフィルムを掻き落としている時に像を導きます。
撮影者は露光されてる画像とは48分の1秒ずれた像を見ていることになります。
映画キャメラの露光時間はミラーシャッターとフィルム送りのスピード、ミラーシャッター自体の角度
の相関関係で決まります。
上の図で言えば、360度の円をちょうど半分にした180度分がシャッター開角度となり、これを1
秒間に24回転させればひとコマの露光時間は 360×24÷180=48 となり、48分の1秒
の露光時間であることが分かります。これを1秒間に60コマの高速度撮影にすれば 360×60÷
180=120 となり、1コマの露光時間は120分の1秒となり、さらに開角度自体を狭めると、
360×60÷90=240 というように1コマあたりの露光時間を短くしていくことができます。

露光時間は特に動いている被写体で顕著にその差がでます。例えば固定されたキャメラの前を横切る自
動車があると仮定して、48分の1秒で露光した場合は車の速度に見合ったぶれが画像に記録されます
が、120分の1秒の露光ではそのぶれも少なくなります。このぶれは実は重要で、あまり1コマのシ
ャッタースピードが早くなると、人間にはちらつきとして認知されるようになってしまい、ある程度の
ぶれは物の動きをそれらしく知覚させるためには必要です(近年、「プライベートライアン」でわざと
この開角度をせまくして撮影し、観客にちらつきを感じさせていた例がありました)。
そしてこれは映写時にも同じ事で、若干形状は異なるもののこのシャッターを利用して残像効果を生み
出し、映像をなめらかに知覚させているのです。
半分は暗闇を観ているとはこのことなのです。