No3 回答者:淺 野 周
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2003年~2006年ごろの質問
おととし煙草の煙を吸い過ぎたせいで、ウイルス性の髄膜炎になってしまい左脳、小脳が萎縮しました。さらに視神経まで萎縮したのです。最近ネットで何か回復させる方法はないかと探したのが鍼灸です。あるHPには視神経炎が回復するとあったのですが、実際治るのか教えていただきたい。
煙草を吸い過ぎたせいで、ウイルス性の髄膜炎になって、左脳と小脳が萎縮したということですが、煙草とウイルスは直接関係がないので、たぶん煙草の吸い過ぎで免疫力が低下して、髄膜炎になったと思われます。髄膜は脊髄を包む膜ですが、脳膜炎と言ったほうが判りやすいかもしれません。
さても恐ろしい病気になったことです。
それについては、私の翻訳書である『難病の鍼灸治療』に視神経萎縮が記載されているので、それからの引用かもしれません。
私の好きな眼治療の本、『常見眼病針刺療』曹仁方著、人民衛生出版社1990年刊、定価2.5元によると、視神経脊髄炎と視神経炎、視神経萎縮が記載されています。
その91ページを引用します。
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九、視神経脊髄炎
治療期間(平均刺鍼回数)は著効75.9回、改善54.9回、無効40.3回であった。 |
と書いてあります。以上のことから、早期治療が大切で、眼球後部、つまり脳と眼球を繋ぐ部分が問題となっており、いずれにしても最終的に視神経萎縮が起きると判ります。
どれぐらいのパーセントで治るかという問題については、私の訳書である『難病の鍼灸治療』緑書房、張仁著に、視神経萎縮として書かれています。
のちに張仁が出した『165種病症・最新針灸治療』には、レーザー照射と体鍼が増えていて、レーザーが25例、39眼を治療し、著効11眼、有効19眼、無効9眼で、有効率76.9%、体鍼が全部で110例、164眼を治療し、治癒12眼、著効71眼、有効39眼、無効42眼で、有効率74.4%。若くて早期に治療したものほど効果がよいとあります。
穴位注射治療したのもあり、それは『難病の鍼灸治療』と同じ文で、脳炎の後遺症では効果が劣ると書かれています。
他については、拙訳著『難病の鍼灸治療』の視神経萎縮を参照してください。
それによると、少数ですが完治しているようです。
香港に在住しています。昨年、13歳(中学2年生)の娘が、やせ細り、秋に東京の国立がんセンターにて検査して、胃下垂と診断されました。身長152cm、体重30kgです。胃下垂ベルトを着用して、栄養剤を飲むというのが現在の治療です。東京で約2ヶ月間、週に2回、整体等に通いましたが、効果はありませんでした。
本人も努力しておりますが、なかなか体重が増えず、本来身体を作らねばならない成長期に、このような状態では将来非常に不安です。
本日、HPサイトを拝見し、すぐにでもお伺いしたいのですが、簡単に行けない状況です。(せめて、日本にいる時であれば)
こちらは香港、中医治療の本場ですよね。お知り合いの鍼灸士の方や、同じような治療をしてくださる方をご存知ないかと思い、メールいたいました。
それとも、香港で鍼灸治療を受けるのは危険でしょうか? 鍼の使い回しとかありそうで、今まで考えたこともなかったのですが。
もし香港の状況等ご存知でしたら、ご連絡いただけるとありがたいです。
胃下垂の質問ですが、6月22日に東京から胃下垂の姐ちゃんが来て、骨盤の中に胃が入っちゃってました。その一週間前に一回目の治療をしたのですが、それで胃は臍上3cmぐらいに上がり、なにせ本人が痛がって涙を流すことと、肋骨が協会の尖塔のような二等辺三角形をしているため、心窩部が狭くて胃の入る余裕がなく、二回目の治療では、それ以上は昇らなかったので、そこでストップしました。やはり胃が上がると症状が楽になったようですが、やはり吐かなければ胃が重いと本人が言うもので、だいたい十二指腸と同じぐらいの高さに胃があるのに、それはおかしいと思って、背中や頚を触ってみるとガチガチに固まっていました。東京という遠隔地でもあり、背や頚を治療するところは、どこでもあるのじゃないかということで、それ以上は胃も昇らなくなったしということで治療を打ち切り、東京で背や頚の治療所を捜すことになりました。
胃下垂は、それだけでひどい症状があると思っている人も多いですが、確かにそれもありましょうが、背中や頚と胃の症状も大きく関係しています。
彼女の場合は、胃が臍上10cmのところをキープしていましたので「吐かねばならないほどの症状はないはずだ」と思いました。
実は、頚からは迷走神経が出ていて、心臓の裏を通って胃に分布していますので、頚の筋肉が凝り固まると、その迷走神経を圧迫して、心臓が締めつけられるような感覚が夜中に襲ってきたりします。私も、そうした症状になり、中国で油っ濃いものばかり食べて冠動脈が塞がったかなと思いましたが、いや朝鮮料理を主に食べていたから狭心症になるはずがないと調べ、どうやら頚が悪いことに気が付いて、後頚部に鍼をしたら、症状がスッと消えました。このように頚が悪くて迷走神経を圧迫し、胃や心臓の不快な症状が発生することもあります。
また背中は、胸椎の間に交感神経節がありますが、交感神経と副交感神経は自律神経なので、内臓を支配していることは、誰でも知っています。背中の筋肉が凝り固まると、少し離れていますが自律神経に影響し、やはり胃の不快感が起きます。
彼女の場合は、胃が臍以上に揚がったので、あとは頚と背中を治してみなければ、胃症状が消えるとも判りません。とにかく背と頚が悪く、それで胃に影響することがあり、悪い部位を治療してみなければ何とも言えません。ただ胃下垂を上げたら症状が軽くなったので、それも原因の一つではあったと思います。
栄養剤は、胃下垂治療にはなりません。胃下垂ベルトなるものは、どういうものか拝見したことはありませんが、胃下垂は、胃が骨盤の中に入っており、底が恥骨ぐらいの辺りまで下がっています。ベルトでは骨盤に遮られて効果がないように思いますが、よほど特殊な構造をしているのでしょうか?
鍼で胃を引き上げる場合は、まず排尿して膀胱を空にし、上から鍼を刺して胃壁に絡み着け、上部へ引っ張り上げます。その際は、右手で鍼を引っ張り上げながら、左手で恥骨辺りの胃弯部を押し上げるのですが、実際には胃と恥骨の間に手が入るほどの隙間がないので、鍼一本で引っ張り上げます。そして胃が上がり、恥骨と胃の間に手が入るようになれば、左手も手伝わせて押し上げます。
6月に来た姐ちゃんも、この方法で上げましたが、実は一回目の治療では臍下3cmまでしか胃の底が上がりませんでした。それがなぜ帰る頃は臍上10cmまで上がったかと言いますと、手で押し上げていたからです。
胃下垂治療は、刺鍼時間よりも休憩時間のほうが長くかかり、鍼をしているのは30分ぐらいかと思いますが、3時間ぐらい休み、その間は胃を下から押し上げています。
だんだん押し上げ方がうまくなり、最初は鍼で上げた分しか移動しなかったのですが、そのうち手でも押し上げられるようになりました。でも正直言って、押し上げるのはしんどいです。それで恥骨と胃の間に手が入りさえすれば、あとは手で押し上げられるようです。ただし、これは腹筋の弱い女性に限ったことで、腹筋の強い男性では手で押し上げにくいので、やはり鍼がメインになります。
恥骨から胃が離れれば間から手が入るので、一回の鍼治療だけやって恥骨から胃を引き上げ、それからは家族が胃を押し上げれば治るのではと思います。実際、鍼で胃を引き上げるのはしんどいです。だいたい骨盤から胃が出れば、あとは簡単に押し上げられます。
実際、胃下垂の人はスラリとした美人が多いので、恥骨の辺りでゴチャゴチャやっているとセクハラになりかねません。
私は、最初の骨盤から胃を出すまでは、鍼で引っ張り上げるのが最善と思います。
整体でも恥骨と胃の間に手が入らないれないのでは、押し上げようがないと思います。
また手さえ入れば、整体などに行かなくても、家族が押し上げてやればよいでしょう。
まず治療には、レントゲンでバリウムを飲み、胃の位置を確定してから鍼をせねばなりません。腸に刺さると腹膜炎を起こす可能性があるのです。胃を触って確認することは、若い人では、ほとんどできません。少しお茶を飲むとポチャポチャ音がするので確認できるのですが。
さて香港の状況ですが、昔の中国の状況は知っていますが、香港は詳しくないです。しかし中国でも圧力釜で、鍼をアルミの容器ごと消毒していました。ただ鍼灸師が治療している間に、隣のベッドにいた患者が、その容器からコッソリ鍼を抜き、試しに自分に刺してから、元の位置に戻している場面を見ましたので、鍼灸師は消毒済みと思い込み、それを刺鍼中の患者に刺したことがあります。香港はイギリス領だったので、もっと管理が厳しいと思います。
私の治療法は、張仁が編纂した『難病針灸』を改良したものですが、やることは同じです。「内臓に刺しても大丈夫か?」と思われるでしょうが、内臓でも胃と膀胱、前立腺、子宮には刺鍼されます。問題ないようです。
鍼の使い回しは、中国では使い捨ての鍼も消毒して使います。でもオートクレーブで消毒しているので、感染の恐れはないでしょう。
胃下垂の治療法は、学校で教わったのではなく、『難病針灸』を読んで、見よう見まねで始めたものですから、最初は恐かったです。この治療は、中国発ですから。
中国で使う鍼も、最近は徐々に細くなり、日本の五番ぐらいの鍼が多く、鍼も1.5寸や2寸(日本の1寸鍼や寸三に相当)を使うことが多いので、捜さないと胃下垂の治療をやっていないと思います。インターネットの雅虎かgooglで検索すれば、胃下垂の治療をしているところが見つかると思います。
日本人でも、わざわざ台湾や中国、香港へ治療に行くツァーがあるらしいので、危険はないでしょう。
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質問:小針刀によるバネ指の治療を受けたいのですが。
答え:残念ながら中国や台湾、シンガポールなど、中国系の病院でないと治療が受けられないと思います。北京では、創始者が病院(たしか病院名は長城病院)の院長をやっているようですが、このSARS騒ぎでは、行かないほうがよいでしょう。
バネ指は、一般に整形外科で手術します。腱の膨らんだ部分を切って、引っ掛からないようにします。キシロカインは麻酔薬なので、一時的に痛みは抑えられますが、痛みがないので使うと、ますます悪化します。それは痛み止めで、治療薬ではないからです。だいたい~カインというと、麻酔薬が多いのです。例えばプロカインとか、コカインとか。
テーピングは、傷んだ腱が引っ張るのを、ある程度は補助するので、やらないよりは増しですが、女性なので炊事をするときに濡れてしまいます。これも根本的な解決になりません。
結局、小針刀を使わないでバネ指を治す方法は二つあります。
解決方法を3つ挙げると、賢そうに見えるという噂なので、小針刀を加えて三つの解決法となります。まず小針刀、これは外国へ行くのはサーズが恐いので問題外です。
次に整形外科による手術。
三番目は、安静にして自然治癒を待つ方法です。
整形の手術は、病院で相談されればよいのですから、ここでは取り上げません。でも一発で治ります。
以上の二つは、速効性があります。
三番目ですが、これは鍼を使って治療します。
私が学生時代は、「弾発指を鍼で治せない」と聞いていました。でも、実際に治療すると、3ケ月ぐらいで治るようです。ただし一発というわけではなく、3回ぐらいの治療回数がかかります。
小針刀が出現する前は、中国でも弾発指の鍼治療をしていたようです。そのやり方は、かなり太い鍼を膨れた腱へ何本も刺し、抜いたときに孔が開きます。そこを包帯などでグルグル巻きにして、膨れた部分から液を絞り出し、普通の太さにして治すというものでした。
当然にして、そのような荒っぽい治療が日本で受け入れられるか判らず、ましてや手のひらは感覚器官が発達しているので、鍼で痛みを感じる部分なのです。
例えば、痴漢などでも、手のひらで触っていたらアウトで、手の背で触っていたらセーフとなります。それだけ手のひらは感覚が鋭いのですが、手の甲が弾発指になることはありません。
それは握る力が強く、開く力は弱いため、手のひらの腱鞘に負担がかかるからです。
つまり弾発指になる人は、手を握る操作が多いのです。若ければ、腱鞘から潤滑油がたくさん出て、多少の擦れでは傷まないのです。ですから私が治療した人も、ほとんどは50代です。30代では、弾発指の前段階の腱鞘炎になる人はありますが、弾発指までいった人は見たことがありません。恐らく、それだけ身体が老化しているのか、栄養不足ではないかと思います。もしかすると、力を入れて握り過ぎるのかも。
実は、うちの母親もバネ指になりまして、腱鞘炎もあったようなので鍼治療しました。するとバネ指が治ったというのです。そんな筈はないと思っていました。しかし、その後も、やはり「バネ指を治療してくれ」という某白根さんなどがありまして、「それは治らないから手術しろ」というと、「では腱鞘炎の治療だけでもしてくれ」と言います。そこで腱鞘炎の治療すると、まあ三回ぐらいで来なくなります。「やはり治らなかったな」と内心ほくそえんでいますと、また半年とかして来て、今度は腰が痛くなったから治してくれと言います。どうやらバネ指も、腱鞘炎が治ってから三ケ月もすると自然に治ったと言って、スムーズに動く指を見せてくれました。まあ、動くようになった指を見ても、ムラムラっと来るわけではありませんから、どうってことないのですが。
そこで、どうして指が動くようになったか、考えてみることにしました。
まず、北京堂の腱鞘炎治療とは、テニス肘にも共通していますが、手のひらに刺鍼するのではなく、前腕、つまりカイナに刺鍼します。カイヤではありませんカイナです。
腱鞘炎の人は、前腕内側を触ってみるとコチコチになっています。しょっちゅう力を込めて握っているのですが、握るには前腕内側の筋肉を収縮させねばなりません。それが過ぎて、筋肉が収縮しっぱなしになっているのです。
「使い過ぎると収縮しっぱなしになる」などということがあるんカイナ? と素人の方は思われるでしょう。
いい例が、コムラガエリです。昔、東京オリンピックで、ロシアのマラソン選手がコムラガエリを起こし、ヘアピンを突き立てて治療していました。このようにマラソンなどで使い過ぎると筋肉が痙攣します。また目を使い過ぎると、目の網様筋が収縮しっぱなしになりますが、それが眼精疲労です。
ロシアの選手が、なにゆえにヘアピンを刺したか?
筋肉の中には血管があって、それが筋肉に酸素やエネルギーを運んでいます。その血管は柔らかく、喩えて言えば、水道のビニールホースのようなものです。では筋肉が収縮すると、どうなるのでしょう。血管は筋肉に押さえ付けられます。すると水道のビニールホースで言えば、「あれっ!急に水が出なくなったな」というようなものです。すると自分の足で、ホースを踏んづけています。「これが原因か」と、足をのけると、再び水が出るようになります。
血管も同じで、周囲の筋肉が収縮すれば、血管は圧迫されて内径が狭くなり、血が流れにくくなります。筋肉が収縮している時間が長くなれば、血管を圧迫している時間も長くなり、血液量も減るので、エネルギーや酸素が不足します。そのような酸素不足の筋肉では、死後硬直が起こります。筋肉に酸素やエネルギーが運ばれないので、硬直してしまいます。すると血管は、ますます圧迫され、アッ、これどこかでやった。
とにかく、その悪循環を断ち切るために、筋肉にヘアピンを突き刺し、筋肉の痙攣を緩めれば、血管壁の圧迫も消えて血が流れ、筋肉が栄養されるというものです。当然、筋肉の中には血管だけでなく、神経も通っていますから、神経も筋肉に圧迫されて痛みも伴います。
まあ、この「筋肉が収縮しっぱなし」という話は、にわかには信じられないでしょうが、自分のカイナを誰かに触ってもらうと、私の言っていることが本当かどうか判ります。自分では片方ずつしか触れず、両側一度に触って比較することができないので、誰かに触ってもらわねばなりません。両側を同時に按圧して比較しないと、素人には判りにくいものなのです。ただ、手の感覚が極端に悪い人もいますので、柔らかいか硬いか判断の付かない人もあります。だから何人かに触ってもらうとよいでしょう。島根に住む私が、東京くんだりの貴女の知り合いと組み、「硬くもないのに、硬いと言え!」などということは有り得ませんから、客観的に信じてよいと思います。
触ってみると、右の前腕内側(日に焼けてなく白い側です)は柔らかいのに、左はカチカチです。それが収縮して力が脱けなくなった筋肉です。
指の筋肉は、みな手のひらにあると思う人があるでしょう。しかし手のひらの筋肉が1/3収縮したとしても、2~3cmしか収縮しないでしょう。それでは手が握れません。そこで長いカイナの筋肉が縮みます。すると1/3収縮すれば10cmは収縮しますので、指を手首近くまで引っ張る事ができ、メデタク、手を握ることができるワケです。つまり握り拳する筋肉は、手のひらではなく、肘から下の前腕内側にあるのです。ここまではガッテンしていただけたでしょうか?
すると、前腕内側の筋肉が収縮していて、そこも確かに按圧すると痛いのですが、「手首から先が痛むのはなぜ?」という疑問が浮かんできます。
実は、あまり指には筋肉がないのです。もし腕の筋肉が、そのまま指まできていたら、指はブッ太いものになり、とてもシラウオのような指ではなく、サツマイモのような指になってしまうでしょう。それではみっともなくて、たまったものではありません。そこで登場するのがワイヤー! 前腕で引っ張り、手首から指まではワイヤーで力を伝える。そうすれば発動機を指に付ける必要はないので、ワイヤー分の細いスペースがあれば足ります。これでシラウオのように細くてしなやかな指が完成です。当然ワイヤーを引っ張ったときに、ワイヤーが浮き上がらないように押さえが必要です。だからワイヤーをストローのような管へ入れ、その管を指の骨に固定しています。私が固定したワケではないので、私に責任はありません。
そのストローの内部は、潤滑油で満たされており、少しぐらいワイヤーと管が擦れ合っても傷まないように出来ているのですが、潤滑油の量が少ない、擦る回数が多い、強い力で擦るなどが原因で、摩擦が大きくなり、ワイヤーも生き物で柔らかいのですから、ワイヤーという腱が腱鞘でしごかれると、腱は手繰り寄せられて膨れます。それがバネ指とか弾発指です。これは症状から付けられた名前で、ワイヤーの膨れた部分が、直径スレスレの管へ入るとき、管の入口で引っ掛かって止まり、中を移動するときも強い力が必要なので動きが不自然になります。ひどければ玉が管に入れず、少ししか動かない場合もあります。この腫れた玉の部分が痛むのです。
腱鞘炎の治療は、腱が膨れている玉部分へ直接刺鍼するわけではないのですが、前腕の筋肉を緩めます。すると腱は力が掛からなくなります。また握らないでも作業できるように、仕事内容を一緒に考えて工夫します。
つまり鍼をして腱鞘炎を治し、腱と腱鞘に絶えず掛かっている負担をなくしたため、時間が経って、自然にバネ指が治ったと考えられます。
腱鞘炎の治療は、手首から肘までの前腕内側を、収縮した筋肉(長短母指屈筋とか深浅指屈筋など)へ刺鍼して40分ぐらい置鍼します。こうした治療を3日、ないし1週間ごとに続けます。3回ぐらいすれば力が抜けて、腱鞘炎の痛みが消えますが、そのまま、できるだけ使わないようにしていますと3ケ月ぐらいで治るようです。
だいたい女性では腱鞘炎の治療が長くかかるのですが、それは治療で筋肉を緩めても、血流が回復して筋肉の酸素不足やらが回復する前に、炊事などをして筋肉を収縮させてしまうからです。それで元のモクアミに戻ってしまうのです。最初は「女性が筋肉が弱くて治りにくいのかな?」とも思ったのですが、2回で、一週間で腱鞘炎が完治した人があったので、考え方を変えました。その人はビールの栓抜きまで、旦那にさせたようです。漁村の人だったので(元美容師で、いま飲み屋らしいですが)、「自分が腱鞘炎だったことは恥ずかしいから言わないでくれ」と言うことでした。ところが後日、その人やら何やらの紹介で、人が来たのですが、それによると「某岩×さんは、御宅で癌が治ったらしい」などと噂され、何か、とんでもない難病を治したかのように触れ回られているようです。
腱鞘炎など、たいした噂にもならないだろうに、あと「脳卒中で、手が動かなかったのが一発で治った」とか、「さすがに私も切れて、脳卒中や癌で腕が動かなかったのではなく、ただの腱鞘炎を治療しただけです!」と言いましたが。
とにかく噂など、いい加減なものです。事実と全く違います。
まあ、ともかく、お陰で、女性でも、ほとんど手を使わなければ、すぐに治ることが判りました。
でも、一般の女性では、いろいろやることがあるので、3ケ月は覚悟しておいたほうがよろしいでしょう。
余談ですが、キネシオテープを貼るときは、指の筋肉は前腕内側にあるので、肘から指先まで貼らないと効果がありません。
質問:ホームページのムチウチ症の治療ですが、そこの交感神経型に頚の異常から頭痛が起こってくると書いてあります。そこでホームページに従って、後頚部へ刺鍼してみるのですが、確かに後頭痛や前頭痛は消えます。しかし偏頭痛が治りません。なぜでしょうか?
答え:お答えいたします。頭へゆく神経は、大後頭孔から出て、大後頭直筋、小後頭直筋、下頭斜筋、上頭斜筋などの筋肉中を走っています。だから、そうした筋肉が痙攣すれば、大後頭神経や小後頭神経などが圧迫されるので、痛みが発生すると考えられます。だから後頚部へ刺鍼すれば、頭痛は消える。こうした発想で、後頚部へ刺鍼しておられると思います。その発想自体は正しいと思いますが、後頭部とかには、余り筋肉がありませんが、偏頭痛の場合は、そうもゆきません。そこには側頭筋があるからです。
つまり偏頭痛に対して、完骨や翳風、安眠、風池、天柱などの経穴へ刺鍼し、頭から出てきた神経を叩いても、側頭筋が痙攣していれば、そこで圧迫されて痛みが起きてしまいます。
拙書の『刺血療法』緑書房を見てみますと、偏頭痛には太陽の絡脈を捜し、そこへ刺鍼して血を出しています。
つまり側頭部に位置する太陽へ刺鍼することにより、偏頭筋などを緩め、側頭部に分布する神経の圧迫を消していると考えられます。
まあ坐骨神経痛でいえば、後頚部だけへ刺鍼して、側頭部へ刺鍼しないのは、大腰筋へ刺鍼して、梨状筋を刺鍼しないようなものです。片手落ちです。
とは言っても、太陽へ刺鍼すると、目の周囲の骨が盛り上がって刺しにくい欠点があります。
一般に偏頭痛には、太陽から率谷へ透刺します。しかし以上の理由で、太陽から率谷までは到達しにくく、せいぜい入って2cmぐらいです。それとうつ伏せで後頚部を刺鍼しているのに、前の太陽から刺鍼するのはやりにくいし、「後ろが終わってから前を」というのも二度手間です。だから率谷から太陽へ向けて斜刺したほうがよいと思います。
私見では、偏頭痛に対しては、後頭部の経穴を使うより、側頭筋、つまり率谷から太陽へ透刺したほうが効果がよいように思います。
まあ確かに鍼灸には「上が痛めば下を取り、下が痛めば上を取る」ということもありますが、それが全てではなく、なかには側頭部が痛ければ、側頭部へ刺入するなど、局所治療が有効な場合もあります。つまり何事も、危険でなければ試してみることも必要かと思います。
よく癌に鍼治療が効果があると聞きますが、どういうしくみで鍼は効くのでしょうか。それとも鍼で癌が治るといううわさは、インチキなのでしょうか。![]()
答え:松江から戻って、細々と営業を続けていたら、突然マルサに踏み込まれました。何がなんだか判らず、「おねげいです、お代官様」といって難を逃れたのですが、さすがに積み上げたままの20箱近くの本を放っておくのも極まり悪いので、本を整理して本棚を組み立てることにしました。それで嫁の実家に運び込んだ本以外は、置き場ができるわけです。しかし回答も結局は、拙書『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』を併せたような、張仁の『最新針灸治療』を使って回答します。てっとり早いから。この本は一冊で、『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』を見れるので、便利ですよ。ただ『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』がある以上、重複した本を翻訳する人があるとは思えないけど。それによると白血球や赤血球の減少、嘔吐などの化学療法や放射線治療による副作用を抑え、そうした治療が普通なら2週間ぐらいで打ち切らねばならないところが、長期にわたって継続できると書いてあったような気がします。ところが、このあいだ依頼された漢方の翻訳にも、朝鮮人参には化学療法や放射線治療による副作用を抑える作用があり、長期にわたって継続できると書いてありました(ただし、朝鮮人参は定期的に服用を停止する必要あり)。また肝炎ですが、覆盆子の作用を鍼と比較したところ、同等な効果があったと書かれていた文献があったと記憶しています。すると漢方薬と鍼は、ほぼ同じ作用をする? また治療とは少し違うかもしれませんが、癌が背骨などに転移すると、転移された背骨が膨れて背骨から出た神経を圧迫し、痛みを発します。末期癌です。こうした痛みに対してはモルヒネを使って痛みを止めますが、一般に薬物は有効量の範囲が狭く、それを過ぎると毒作用が現れ、有効量以下では効きません。しかもモルヒネの有効量は個人差が大きいので、24時間体制でモニタリングせねば有効量を超過して毒作用ゾーンへと入ってしまいます。治験ならばモニタリングもしましょうが、一般の臨床治療ではそんなこともせず、必然的に毒作用ゾーンへと入りますが、その副作用が禁断症状なのです。禁断症状になると体力が衰えるので、必然的に癌が進行します。鍼麻酔によるエンドルフィンは、脳の痛みを感じる部分に填まり込み、痛みをシャットアウトしますが、もともと自分の身体で生産した物質なので副作用がありません。だから適量が出て、禁断症状も起こらないので癌も進行することがないのです。じつは鍼麻酔で出るエンドルフィンによって、モルヒネの作用機序が明らかになった経緯があるのです。
人間も、昔は類人猿でしたから、トラやライオンなどの強い動物に出会うと逃げなければなりませんでした。しかし猛獣は追いかけてきます。逃げて走り続ければ心臓がバクバクです。でも苦しくとも逃げなくては食われてしまいます。するとエンドルフィンが出て脳の苦しさを感じる穴をピッタリ塞ぎ、もう苦しくはありません。高橋尚子は、これを利用しているのです。モルヒネは頭の部分がエンドルフィンと同じものでできているため、やはり脳の苦しさを感じる穴にピッタリと填まり込んでしまうので痛みを感じなくなってしまうことが判りました。しかしモルヒネ注射では、痛みを感じる穴を塞いでも、まだモルヒネが余ってしまいます。余分のモルヒネが禁断症状を起こして癌を進行させるため、自然のモルヒネであるエンドルフィンは副作用のない痛み止めなのです。方法は両手の曲池+と合谷-へ刺鍼し、3~4ヘルツのパルスを流して20分ほど放置するだけ。欠点は、時間がかかることと、効かない人(エンドルフィンが出ない人)がいること。まあ皆が皆、先祖がトラやライオンに追われたとは限りませんから。
まあ取りとめもないことは置いといて、中国の鍼灸文献整理屋さん=張仁の『最新針灸治療』から探してきます。
では『難病・急病の鍼灸治療』の補足をかねて、張仁の『最新針灸治療』文匯出版社p316より、癌の鍼治療を引用します。
以上が癌の痛みや発熱など、症状に対する鍼灸治療でした。化学療法や放射線治療の副作用に対する治療は、この張仁『165種最新針灸治療』文匯出版社にはp324に書かれています。
| 六十八、放射線反応 【概論】 放射線反応とは、悪性腫瘍患者が放射線療法を使って治療する過程で現れる有害反応である。全身反応として食欲不振,悪心,嘔吐,頭痛,怠さがあり、血液反応として白血球や血小板の減少などがあり、局部反応もある。ただちに処置と治療をしなければ、放射線障害が残ってしまう。現代医学は放射線反応に対し、一般に治療方法を調整したり量を減らす、あるいは中止するなどの措置をするが、特に有効な処置はない。 放射線反応に対する鍼灸治療は1950年代から始まり、多くの奨励観察によって、刺鍼と灸は明らかに全身症状を軽減し、白血球の減少や放射線直腸炎、皮膚の潰瘍などに対しても確実な効果のあることが発見された。70年代は耳針を使って治療し、放射線治療や化学療法による白血球減少に一定の治療効果があった。この20年は、穴位刺激方法や治療効果の観察などで大きく進歩して深まり、ヘリウムネオンレーザーを穴位に照射する方法が各種の放射線反応の治療に使われたり、その治療の適応症状と現実の効果について厳密な観察と客観的な対照試験がおこなわれた。 鍼灸で放射線反応を治療するメカニズムについても、多くの研究がなされている。実験研究により、人体の免疫機能を抑制する放射線治療の作用に鍼灸が対抗し、血液象(ヘモグラム)を保護し、骨髄の造血機能を強め、それによって人体の放射線治療に対する耐性を高めることが証明された。最近では、鍼灸により白血球が増える主なメカニズムが、血清中にあるコロニー形成刺激因子の含有量と活性を高め、それによって骨髄の造血幹細胞の分裂増殖が促進して、白血球コロニー形成が増え、骨髄中の未熟顆粒球と成熟顆粒球が顕著に増加することが証明されている。 【治療】 ○穴位注射 (一)取穴 主穴:足三里。 (二)治療法 薬剤:デキサメタゾン注射液。 一回に両側の穴位を取り、5mL注射器に5号の歯科用注射針を装着して5~10mgのデキサメタゾン注射液(5mg/mL)を吸入させ、垂直に刺針して局部に得気感があったら各穴へ2.5~5mgずつ注入する。毎日1回で、3回を1クールとする。 (三)治療効果の評価 治療効果の判定基準 著効:穴位注射1回して24~48時間で、白血球上昇幅が2×109/Lより大きく、白血球数が5×109/L以上。 有効:穴位注射1~2回して24~48時間で、白血球上昇幅が1.9×109/Lより大きく、白血球数が4×109/L以上。 無効:穴位注射を3回しても、はっきりした白血球の上昇が起きなかった。 全部で56例を治療し、著効30例,有効22例,無効4例で、有効率は92.9%だった。 ○体鍼 (一)取穴 主穴:曲池,内関,足三里。 配穴:白血球減少には大椎と肋縁、食欲不振には中脘,関元,三陰交、頭がぼんやりして不眠には百会,神門,頭維、直腸炎には合谷,天枢,上巨虚を加える。 肋縁穴の位置:鎖骨中線と肋骨縁の交点から下0.5寸。 (二)治療法 主穴から1~2穴取り、症状に基づいて1~2穴を配穴する。刺鍼して気が得られたら提插捻転手法で平補平瀉し、中刺激で運鍼したあと15~30分置鍼する。肋縁,関元,天枢は、鍼のあと棒灸で15分熏して施灸部分を赤くする。毎日1回治療し、10回を1クールとする。クール間は3~5日開けて次のクールの治療をする。 (三)治療効果の評価 a.白血球減少患者は全部で154例あり、治療した有効率は79.3~91%。多くは3~4日以内で改善する。ほとんどは5000/mm3以上に回復し、長期効果もある。 b.直腸炎患者は全部で56例あり、治療して有効率は100%。そのうち治癒率は66.1%だった。 c.臨床症状の現れた患者は385例あり、治療後の有効率は90.3~100%だった。 結局は、早く治療するほど効果がよい。 ○穴位のレーザー照射 (一)取穴 主穴:2組に分ける。 a.阿是穴。 b.頭がクラクラして疲れる:命門,腎兪,膏肓,足三里。食欲がなくて悪心嘔吐する:内関,地機,脾兪,中脘,承満。口腔咽喉反応:照海,少商,列缺,廉泉。直腸膀胱反応:気海,関元,天枢,大腸兪,大敦,中極。 阿是穴の位置:放射線皮膚潰瘍の病巣部。 (二)治療法 全部ヘリウムネオンレーザーを穴位照射する。 aは主に皮膚の放射線反応の治療に使う。レーザー出力2~4mW、光斑直径1.5~2mmとし、50mm離して照射する。直接照射する面積が10c㎡より大きければ区域に分けて照射し、1回の照射を20~30分とする。毎週6回治療して10~12回を1クールとし、各クール間は3~5日開ける。 bの穴位は、各症状に対する治療である。症状に基づいて毎回3~4穴を取る。照射出力は症状によって変え、一般に3~5mWとするが、8mWにすることもある。メチルバイオレットて穴位をマーキングし、100cmの距離で垂直に各穴3分ずつ照射する。一穴に15回以上照射してはならない。この光鍼治療は、毎日1回治療して10回を1クールとし、3~5日開けて次のクールに入る。 (三)治療効果の評価 a.皮膚の放射線損傷を治療したのは58例あり、有効率89.7%、治癒率はコバルト60で8%だった。 b.いろいろな臨床症状を治療したのは120例あり、多くの患者で症状が改善した。しかしコバルト60を頭不に照射して起きた放射線反応に対する効果は劣っていた。 ○棒灸 (一)取穴 主穴:大椎,合谷,足三里,三陰交。 (二)治療法 主穴は全て取る。患者を腰掛けさせて穴位を露出し、棒灸で温和灸する。棒灸の火は、皮膚から約1.5cm離し、患者が暖かく感じるが熱くない程度とする。一穴に10~15分施灸し、局部の皮膚が赤くなるようにする。施灸が終わったら各穴を3~5分ぐらいずつ軽く按摩する。毎日1回治療して10回を1クールとする。 (三)治療効果の評価 本法は主に、癌患者の化学療法による白血球低下の治療に使われる。 全部で49例を治療した結果、著効29例,有効11例,無効9例で、有効率は81.6%だった。白血球を増加させる現代薬と比較すると、明らかに優れていた(P<0.01)。 |
もちろん、これは下訳なので、依頼された文ならば漢方薬の成分も調べ、単位も日本のものに治します。
ところで実は私の母親も癌でして、異常を感じて10軒以上の病院を回ったのですが、最後に発見されたときは相当に進行しており、5年生存していたとき担当医に「実は、もう絶対に助からないと思っていた」と打ち明けられたそうです。実は、助からないと思われていたために、内緒で実験薬を使われていたようです。その治験薬を拒否したために生き残ったのでしょうが。
13年後に脇が凝るというので、鍼しようとしたら小豆粒ぐらいのシコリがあり、早く検査しに行けと言ったのですが、主治医が「検査は半年後にする」というので、それまで1カ月ぐらい待っていたようです。そのときは横隔膜にも転移し、腰骨にも転移して坐骨神経痛が出ていました。半年放っておいた主治医もどうかと思いますが、その時ここまで進行したのは自分のせいだと主治医が思ったのかもしれません。主治医は、もう駄目だと感じたらしく、「僕も偉くなったので、あんたを以後は見てあげられない。これから若い担当医に代わるから」と言いました。
それから2年後には病巣部が消え、7年後の現在も再び坐骨神経痛が出て、覚悟を決めて病院へ行ったら「薬の副作用」とのことでした。
何度もダメだと思い、もうかれこれ20年は生存しています。アガリスクやメシマコブを食べていたりということもありましょうが、思い出したように鍼をすることも免疫力の向上に役だっているかと思います。坐骨神経痛が「薬の副作用」とのことで、現在は全く薬を飲んでいません。
だから鍼が症状を改善するだけでなく癌も消滅させるのか、果たして母親だけが特殊な癌だから広がっても復活するのか、「憎まれっ子、世にはばかる」という諺により生きているのか、地獄で閻魔が受入拒否しているのか不明ですが、抗癌剤を飲んでいたときだけが調子が悪く、腫瘍マーカーも骨シンチ(シンチグラフィー)も異常がなくなってしまいました。
もっとも100歳以内で両親に死なれては、「あそこの鍼は、両親も長生きさせられん」と、悪い噂が立ってしまいます。
うちの母親の膝が悪く、若い頃から歩けないことがキッカケで鍼灸師になりましたが、今では親戚のおばさん連中のなかで一番足がよく、何年も前から癌がひどくてダメだと思われていたのが、結局は癌でもなんでもなかった親戚の叔父さんが肺癌にかかって死に、長年の癌を患っている母親が生き残って、もっと若いおばさんや親戚が死んだりボケたりするという不思議なことになっています。
どうやら鍼は、どこへ打っても免疫力がアップするようで、坐骨神経痛の鍼治療を続けていたらB型肝炎が陰性になった患者さんもいます。
鍼は、やり続けると身体が慣れて免疫力もアップしにくくなるようなので、週一とかでやれば癌治療の助けになるのではないかと思います。
まあ私の母親みたいに50ぐらいで広範囲の癌になっても古稀まで生き、さらに十数年に一度の再発を繰り返しながらも生存している人間もいるのですから、それが鍼の御陰かどうか判りませんが、悲観することもないと思います(もっとも母と同じ病室に居た他の人は、全部死んだらしいのですが)。この間は「坐骨神経痛が腰に癌が転移したせいかも知れん」と言ったので、かなりガックリきていましたが、薬の副作用らしいと判って、今は大喜びです。だから「鍼が癌に効く」というのは、まったくのデタラメではないと思います。
はじめまして。こんにちは。HP拝見しました。
2002年4月4日、脳幹(橋)出血で倒れた××と申します。倒れたときは43歳、今は44歳です。右手、右足、構音に障害が残りました。左手と左足も、若干の痺れがあります。とにかく最初の数ヶ月は、もうショックでショックで目の前が真っ暗でした。しかし今では、とにかく復帰をしたいと強く思い、リハビリに励んでいます。OT、PTは毎日、STは週2回、鍼治療を週2回、訪問マッサージを週2回、さらにヴォイストレーニングを週1回、後でくわしく話しますがいろいろな原稿読みや発声練習や滑舌練習は自宅で毎日、それも土も日も死にものぐるいでやっています。
脳幹出血という脳出血の中でも重篤なだけに、最初は先生に「あとちょっとずれてたら命がなかったかもしれない」とか「一生車椅子かもしれない」とも言われました。同じ病院に入院している患者からは「脳幹?・・・人間、脳幹をやられたら終わりだっていうからねえ」ともいわれました。かつての仕事仲間にも、ずいぶん冷たい言葉を投げかけられました。もうだめだと何回首にロープを巻き付けたかわかりません。うつ病にもなりかけました。
でも人がなんと言おうと、そんなことは真実の一部でしかないか、誤りだとわかりました。はじめは自力で立つことさえ出来なかった僕が、なんとか立てるようになり、平行棒で歩き、4点杖歩きになり、普通の1点杖になり、そして今歩く速度もがぜん速くなりました。装具と杖はしていますが。でもこれからはどちらか一方、例えば装具をなしにしようと思います。そして今なんとPTの先生にお願いして走る練習を始めました。もちろんまだ走れませんが、いつか走ることを夢見ています。「もし走れたら!」と思うと興奮して眠れないほどです。
手も初めは全然動きませんでした。でも毎日練習することで指が動き、手首が動き、腕が上がるようになりました。そのうち爪切りが使え、鋏もなんとか使えるようになりました。今では字が書け、箸も何とか持てます。先日、握力を測ったら35.4キロありました。1年前は2~3キロだったのに。マットの上で腕立て伏せも1回ですができます。ぶらさがり棒にもぶらさがることができます。OTの先生にいわせると、脳のシナプスから樹上突起が伸び始めているかもしれないとのことです。
そんな中でも仕事への復帰は、僕の大・大・大目標です。でも復帰といっても会社に復職して通勤して業務をこなすというのではありません。僕の職業はフリーのアナウンサーです。どこかの社員でもありません。声の職人といったらよろしいでしょうか。きびしい職人の世界ですから、構音障害は100パーセント回復しなけば復帰はできません。今は70点くらいでしょうか。元気な頃でさえ毎日2時間くらいは発声や滑舌の練習はやっていました。1日も欠かさずです。ですから今はその数倍、へたしたら10倍やってもダメかもしれません。でも逆に人間として、男として、その練習に命をかけたいのです。僕は負け犬には絶対なりません。
そういえばリハビリ病院に転院したとき初めて会ったSTの女の先生は「復帰?復帰は難しいと思うよ」と、いとも簡単に言ってのけました。初日ですよ、初日。「よくも練習を始める前から、そんなことが言えるな」と憎んだこともありました。僕は、やるまえからあきらめることが大っ嫌いです。
ここで質問です。構音障害を少しでも取り除くための針治療のポイントを教えてもらえますか?今通っている針治療でやっているのは、
①口の周りや頬、こめかみに10本程度鍼を刺したまま電気を15分間程度流す。
②顔や喉のマッサージを5分程度。
③喉や首に鍼を何本か刺す。
といったものが主な治療なのですが。
答え:脳幹出血とのことですが、中国では一般に延髄麻痺とか球麻痺と呼ぶものと思います。松江から引っ越した後で、本の置場がなく、蔵書が箱の中なので詳しいことは調べられませんが、とりあえず『頭穴基礎与臨床』『針灸三絶』『最新針灸治療』などの本から回答しましょう。
まず良いニュースと悪いニュースがあります。良いニュースは、私の経験では、脳出血の鍼治療では出血が消えて治りやすいのですが、脳塞栓では効果が悪い。それと構音障害は治りやすいことです。私も脳出血が起きて七年になるという患者さんを治療したことがありますが、本人は脳出血の後遺症で腰痛となった症状を訴えて来ました。なにせ構音障害で「ワァーワァー」いうだけなので、家族の通訳がなければ判りませんでした。それで腰痛治療と一緒に頭鍼を併用したところ、2~3回で喋れるようになり「おかげで電話に出れるようになりました」と喜んでいました。確か5回もしたら喋り方は少しゆっくりですが、全く普通人のように喋れるようになりました。だから構音障害はリハビリよりも鍼の方がなんぼか効くと思います。普通の脳梗塞による手足麻痺ならば、一年も経過していれば頭鍼をしてもなかなか治らないものですが。
悪いニュースというのは、鍼は確かに早期治療であれば脳出血に対して魔法のような効果があるのですが、鍼を入れるのは頭皮なので、頭蓋骨に近い部分では効果が大きく、頭の中心部のように頭蓋骨から離れると出血も消えにくく効果が悪くなります。球麻痺では脳の深部なので、従来の頭鍼や頭皮鍼をしても効果が悪いのです。
このような話で気落ちされたことでしょう。しかし「禍福あざなえる縄の如し」、今まで頭鍼の効果があまりなかった球麻痺に対し、『針灸三絶』や『針灸六絶』の高維濱は「項鍼療法」という新技術? を開発しました。
あなたの状況がよく呑み込めてないのですが、嚥下障害とか他の球麻痺症状もあるのでしょうか?
それとも構音障害だけがあるのでしょうか?
方法を検討します。
①口の周りや顔、こめかみに10本程度鍼を刺したまま電気を15分間程度流す。
脳卒中に最も使われるのは焦順発の頭鍼ですが、それによると運動区の下2/5が頭面運動区、または語言1区と呼ばれている部分です。于致順の『頭穴基礎与臨床』には、この部分が対側中枢性顔面神経麻痺、運動性失語、流涎、発音障害などに効くとあります。この発音障害が、日本の構音障害に相当します。
コメカミならば、その語言1区かと思われます。感覚性失語を治療する語言3区は、耳の上に相当します。語言2区は後頭部にあり命名性失語、日本語でいえば名称性失語を治療します。だからコメカミは運動性失語なら一般的でしょう。
そして口の周りや顔への刺鍼ですが、これは顔の筋肉が動かなければ、その筋肉が廃用性萎縮を起こしてしまい、いざ神経が回復したときに筋肉が萎縮して使えなくなっている恐れがあるので、それを他動的にでも動かして萎縮を防ごうという意図でしょう。顔面麻痺の治療と同じです。そのため口輪筋や頬筋、側頭筋など口を動かす筋肉に刺鍼して通電し、顔や喉のマッサージも、そこの血流をよくして萎縮を防ぐ目的でおこなっていると思われます。それは構音障害の治療というより顔面麻痺の治療に似ています。
③喉や首に鍼を何本か刺す。
首や喉への刺鍼は、文革のあと随分やられたようです。まず昔から中枢が原因で発声できないものに対して瘂門という経穴が使われています。また喉仏の上の廉泉という経穴も発声できないものに対して使われています。また増音という奇穴も使われ、下角の下にあるのですが、これも発声できないものに対して使われるようです。
総合してみれば、声の出ないものを治療する方法とはいえます。この治療効果ですが、残念ながら私は瘂門への刺鍼はしたことがありません。そこへは突き上げるように刺入すると効果がよいようですが、そうすれば硬膜越しに延髄を刺激することになるので、かなり危険な治療法なのです。そこで下向きに入れたり、耳へ向けて刺入したりの方法がありますが、本来の「延髄を刺激して脳の障害を治す」目的から外れてしまいます。実際に刺入するところを見たのですが、細い鍼を1cmぐらいゆっくりと入れてゆき、足にピクッと反応があったら、すぐに後退させるという鍼でした。そんな神経を遣う鍼などしたくないので試したこともなく、またやってみようとも思いません。経穴は沢山ありますが、勇気がないのでやりたくない経穴も相当あります。これもその一つです。増音は中枢性の発声障害より、嗄声など喉の疾患によって声が出なくなったものに効果があると思います。廉泉は結構使われます。これは舌の根元へ向けて刺入し、舌がこわばったものを治療するので、舌の筋肉を緩めて動きを良くするのに効果があると思います。また脳卒中に対する体鍼治療は、その部分は脳からの神経が支配しているのだから、その部分を刺激すれば逆に似たようなルートを通って脳の支配部分に治療効果を及ぼすと主張する本もありました。
いずれにせよ瘂門の刺鍼はしたことないし、廉泉を使ったこともないので、その効果についてはコメントできませんが、そうした治療もあります。
ところで私ならば、まず脳幹出血が原因で起きた構音障害ですから、頭のどこに出血があるのか尋ねます。これはMRIとかで判っているでしょう。それで脳幹出血ならば、呼吸中枢とかの生命中枢がある近くなので、傷付ければ即呼吸が停止してしまうため手術できないはずです。そうすると鍼で出血を消すことがメインな治療法になります。これも早く治療しないと、脳細胞が出血のため圧死してしまいますので、できるだけ早く頭鍼や項鍼を開始します。確か頭鍼のクモ膜下出血は出血量が50mL以下であれば頭鍼で治療し、それ以上ならば手術することに中国ではなっていたと思いますが、脳幹出血では手術ができないので、すぐに鍼をします。
脳卒中の鍼には2つあります。一つは脳卒中直後の鍼です。これは脳卒中が起きた現場に立ち会ってなければなりませんが、指先などの十宣穴や井穴へ点刺し、全身の血管を痛みで収縮させることによって脳内の出血量を減らす治療法です。おそらく眼鍼なども、これに属すると思います。出血量が少なければ、症状も軽くて済みます。脳の血管が切れると、脳は十分な血が来ないので、心臓の動きを強くして血圧を上げ、そのために出血がひどくなって脳の圧迫を悪化させるので、初期の指先への刺鍼は非常に効果があります。
次は、しばらく経過した時の治療です。これは主に頭鍼や項鍼を使い、脳の血流を改善して、出血した血を吸収させる治療です。刺鍼した翌日には出血が吸収されていますので、脳に対する圧迫も短時間で済ますことができ、ダメージをかなり軽減できます。
あなたの場合は1年が経過していますので、手足麻痺に対して驚くような頭鍼治療効果は期待できません。でも構音障害になら効果があると思います。
側頭部への刺鍼通電は、もし側頭部に出血があれば効果があると思います。ただ側頭部に出血がなければ、いくらそこが構音障害の治療ポイントだとしても、あまり意味はありません。なぜなら正常部分に鍼をしても、ほとんど効果がないからです。もし脳幹部分に出血があるのなら、項鍼とか小脳付近の後頭部への刺鍼が重要になるでしょう。こうした頭鍼治療は、一般に3ケ月以内であれば結構効果があるとされていますが、それ以降は脳が圧死してしまいますので、いくら鍼でも死んだ細胞を生き返らせることはできず、頭鍼の効果が悪くなります。
その時期も過ぎてしまったら、硬直した筋肉へ刺鍼して筋肉を緩め、痛みを消して可動域を広げ、リハビリをしやすくすることと、やはり頭鍼や項鍼を併用して脳の血流を改善させ、少しでも回復しやすくする治療が中心になります。だから体鍼と頭項鍼を併用することです。通電して他動的に動かし、廃用性萎縮を防ぐことも、この時期には治療範囲となりますが、この段階では「魔法のような回復」は、あまり望めません。なかには鍼するとメチャクチャに回復する人もありますが、それは50代までの若い人です。
実は私も現在、日曜日か土曜日に頼まれてリハビリ病院へ通っています。患者は80歳近くで、アジアでは有名な作曲家です。去年の11月、心臓の拍動がおかしかったのに上海へゆき、そこで脳が詰まったらしいのです。心臓病があると、心臓で血栓ができやすく、それが流れて、肺に詰まるやら、眼に詰まるやら、脳に詰まるやら判らない状態になります。脳出血で、サラサラした血をしている人は、鍼で「魔法のような効果」がありますが、血栓が詰まる人には対処しにくいのです。もっとも心臓が悪くなったこと自体が、血がベトベトしている証拠ですが。動物性の中性脂肪を摂取したり、酸化した食用油や魚の油を摂取しないよう注意しなければなりません。最近の患者さんは脳血管が詰まるタイプが非常に多くなり、脳