昨日の月はきれいでした

クリスマスパーティとH君のお別れ会を同時にやるということで、店がひけたあとつくばを訪れました。
つくばは僕の大学があった場所です。
そこで四年を過ごしました。第二の故郷と言える場所です。
僕を迎えるようにセンター近辺に一時濃い霧が発生しておりました。
変わらぬ町並みとあいまって過去の世界に迷い込んだかのようでした。

僕はつくばに来る資格があるのだろうか
来る途中、実はそのことについてずっと考えていたのです
僕は、あまりに老い過ぎました
仕事や将来への不安や、恋愛や、そんな屑みたいな雑事にかまけているうちに、 いつの間にか年老いてしまいました
たとえば、そう、Kさんは元気だろうか

Kさんは皆から姉貴と慕われていました
僕は、彼女に友情以上のものを感じていました

その思いは暴走し、僕を、Kさんを、そして周りの皆を壊しました
思えばあの頃から、僕は年老いはじめていたのです

今更どんな顔をして皆に会いにいけば良いのでしょう
でも、そんな僕を皆暖かく迎えてくれました。
パーティ会場は、いつか僕が仲間と笑いあい、密かに泣いた後輩の部屋でした
久しぶりに会うメンツは全然変わっておらず、 むしろ不自然なほど変わっておらず、 やはり過去の世界に戻ってきたかのような感覚にとらわれました

つくばは時の止まった場所。

ふと煙草が吸いたくなり、表に出ました
空を見上げると、はっきり月が見えました
月はあくまで澄み、病んだ光で下界を照らしていました
青白い光に射たれて僕はふと気づきました

「ひょっとしたら」
「皆すでにこの世の者ではないのかも知れない」

この考えは僕を慄然とさせました
僕は何かの原因で冥府に迷い込み、死者と宴を交わしているのだろうか
そう考えないとこの心地良さは説明がつかないような気がしました
皆、僕を死の底から招いている、あの頃の姿のままで
それならそれでいいのです
このまま死界へと僕をいざなって欲しい・・
現世にとどまったところで何になりましょう ただ虚しく老いていくばかり
恐怖におびえつつも、僕は嬉しさに高揚していました
あるいはすでにその時、僕は発狂していたのかも知れません
いつしか煙草は燃え尽きていました

部屋に戻ったら、皆が僕を見つめていました
みんなが僕を見つめて、笑っていました
暖かい光が周囲を満たしていました
妙なる調べがどこからか聴こえてきました
 
     
     
     
     
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