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グレゴリオ聖歌「殉教者おとめチェチリア(セシリア)のミサ」(固有式文)
チェチリア1)Caeciliaは2〜3世紀の10代の少女で、キリスト教徒ゆえに殉教した。彼女はローマの貴族の家に生まれ、父は元老院議員であった。彼女の許婚者ヴァレリアヌスはローマの兵士でキリスト教徒を迫害する立場にあったが、チェチリアの感化によりキリスト教徒になる。彼の弟ティブルティウスも。彼女の後を追うように2人も斬首によって殉教した。彼女の家跡にはサンタ・チェチリア教会が建てられ(4世紀、9世紀に再建)、その地下に遺跡がある。彼女の家跡と当時のローマ市街の遺跡となっている。なお彼女の遺骸は1599年にカタコンベで発見され、その時の姿を形取った美しい大理石の彫刻がサンタ・チェチリア教会主祭壇下に安置されている。
聖チェチリアは古くより音楽の守護聖人とされており、ローマの名門サンタ・チェチリア音楽院(1584年創設)もサンタ・チェチリア・ホールやサンタ・チェチリア管弦楽団も彼女の名が冠されている。その経緯は次の通りである。その経緯は次の通りである。4、5世紀頃の結婚式ミサ式文で、婚姻の鏡としてチェチリアのことがたたえられた。次の箇所“Cantantibus organis illa(Caecilia) in corde suo soli Domino decantabat
楽人たちが弾いている間、彼女(チェチリア)は心の中で主を賛美していた”というのを、“彼女がオルガンを弾きながら心の中で主を賛美していた”と間違った解釈が行われてしまった。つまり彼女が音楽の達人となってしまったのである。殉教者おとめチェチリア(セシリア)の記念日は毎年11月22日に祝われる。この日の固有式文が「殉教者おとめチェチリアのミサ」である。
[注]
1)古典ラテン語、つまり当時の古代ローマの発音はCaeciliaはカエキリアと発音されたと思われる。チェチリアは20世紀初頭にヴァティカン教皇庁で統一されたローマ・カトリック式の発音法によるものである。それまでラテン語を各言語圏の人々は自己の言語に傾いた発音をしていた。例えばAgnus
Deiをドイツ語圏の人はアグヌス・デイと発音した。
<グレゴリオ聖歌「殉教者おとめチェチリアのミサ」>
@入祭唱“神の掟を告げ知らせるように私に告げられた”=GRADUALE TRIPLEX:p526“ANTIPHONAE AD INTROITUM W”
第5旋法。中世盛期に作られている。冒頭の長3度音程から完全5度へ向かう旋律線は自然に純正調の世界へ誘う。そして最終音では完全5度の下降旋律で結ぶ。
A昇階唱“娘よ、聞きなさい、よく見なさい”=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“GRADUALIA T”
第7旋法による曲。中世盛期に属する聖歌である。その旋律は同音の反唱、2度音程をくり返しながら時として長短3度下降や完全4度跳躍などをして美しい旋律線を構成する名曲である。独唱群で歌われる詩句は音域も広がり、技巧的である。歌詞の“娘”や“あなた”は聖チェチリアのことを指す。
Bアレルヤ唱“賢いおとめたちは”=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“GRDUALIA W”:Alleluia
第7旋法による。上記の聖歌より新しく作曲された聖歌と思われる。声楽的要素の多い曲である。テキストはマタイ25・1-13に基づく。“賢いおとめたち”は聖女たちのことを指す。
C奉納唱“彼女は王(神)のおとめらに伴われ”=GRADUALE TRIPLEX:p504-p505“ANTIPHONAE AD OFFERTORIUM”
第4旋法による中世盛期の聖歌である。短3度上行下降、完全5度上行、完全4度下降と明確な旋律で包まれる。歌詞の“彼女”は聖チェチリア、“おとめら”は聖女たちのことを指す。
D拝領唱“傲慢な者たちは恥に落とされますように”=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“ANTIPHONAE AD COMMUNIORM T”
第1旋法による中世盛期の聖歌である。ゆったりした自然な旋律は人間の自然な息吹そのものである。
<グレゴリオ聖歌「殉教者おとめチェチリアのミサ」の対訳>
国本静三訳
| @入祭唱=GRADUALE TRIPLEX:p526“ANTIPHONAE AD INTROITUM W” | |
| Ant. Loquebar de testimoniis in conspetu regum, et non confundebar: et meditabar in mandatis tuis, quae dilexi nimis. Ps. Beati immaculati in via: qui ambulant in lege Domini. Ant. Loquebar de testimoniis in conspetu regum, et non confundebar: et meditabar in mandatis tuis, quae dilexi nimis. |
交唱: 神の掟を告げ知らせるように 私に告げられた。 私は恥じることがない。 あなた(神)の戒めを行うよう努めます。 そのことを愛し続けます。 詩編: なんと幸いなことか、 まっすぐな道を踏む汚れのない人たちは。 主の律法を歩む人たちは。 交唱: 神の掟を告げ知らせるように 私に告げられた。 私は迷わうことがなかった。 あなた(神)の戒めを行うよう努めます。 そのことを愛し続けます。 |
| A昇階唱(答唱詩編)=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“GRADUALIA T” | |
| Audi filia,et vide, et inclina aurem tuam: quia concupivit rex speciem tuam. Vs. Specie tua,et pulchritudine tua intende, prospere procede, et regna. Audi filia,et vide, et inclina aurem tuam: quia concupivit rex speciem tuam. |
娘よ、聞き、よく見なさい。 そして耳を傾けなさい。 王(神)は あなたの美しさを慕う。 詩句: 神の美しさ、そして 神のすぐれたお考えが 盛んに示され、 世を支配されますように。 娘よ、聞き、よく見なさい。 そして耳を傾けなさい。 王(神)は あなたの美しさを慕う。 *“娘”や“あなた”は聖チェチリアの ことを指す |
| Bアレルヤ唱=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“GRDUALIA W”:Alleluia | |
| Alleluia. Vs. Quinque prudenntes virginis acceperunt oleum in vasis suis cum lampadibus: media autem nocte clamor factus est: Ecce spomsus venit: exite obviam Christo Domino. Alleluia. |
アレルヤ。 詩句: 賢いおとめたちは、 それぞれのともし火と一緒に、 壺に油を入れて持っていた。 真夜中に叫ぶ声がした。 “さあ、花婿が来られた” “主キリストを迎えに出なさい”と。 アレルヤ。 *マタイ25・1-13に基づく “賢いおとめたち”は聖女であることを示している |
| C奉納唱=GRADUALE TRIPLEX:p504-p505“ANTIPHONAE AD OFFERTORIUM” | |
| Offerentur regi virginis: proximae eius offerentur tibi in laetitia et exsultatione: adducentur in templum regi Domino. |
彼女は王(神)のおとめらに伴われ、 侍女たちに 喜び踊りながら案内され、 王(神)の聖所、主の所に 導かれて行く。 *“彼女”は聖チェチリア、“おとめら” は聖女であることをしめしている |
| D拝領唱=GRADUALE TRIPLEX:p406-p407“ANTIPHONAE AD COMMUNIORM T” | |
| Confundantur supervi, quia iniuste iniquitatem fecerunt in me: ego autem in mandatis tuis exercebor, in tuis iustificationibus, ut non confundar. |
傲慢な者たちは恥に落とされますように。 偽りによって 私を迷わせたからです。 でも私はあなた(神)の掟によって 訓育されるでしょう、 あなた(神)の正しさの中で。 私が恥じることがないために。 |
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