制作者:国本静三

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「レクイエム Requiemニ短調Op.48」


<フォーレについて>

 フォーレFauréフランス(1845-1924)は、19世紀末から20世紀へと興味深い時期を生き、その前後にヴァーグナーフランク、マーラー、ドビュッシーストラヴィンスキー、シェーンベルクなどが重なる。フォーレは時代に無関心ではなかったが、それよりなお自己に忠実であることを努めた人である。決して奇を衒うことのない作品群がそれを物語るのである。
 20世紀前後の特にフランス音楽のことを指して近代音楽といわれる。フランクが近代音楽の祖と一般にいわれている。調性を自由に扱い、旋法的な音組織への傾向が強い。フォーレはフランスのパミエに生まれた。9才の時、パリのニデルメイエール宗教音楽学校に入学し、古今のすぐれた教会音楽の研究とサン=サーンスへの師事はフォーレに深い影響と実りを結ぶことになった。1896年にパリ音楽院の教授にむかえられ、彼の門からラヴェル、シュミット、エネスコなど大作曲家を輩出した。


<フォーレ「レクイエムOp.48」>

 「レクイエム ニ短調Op.48」は1887-88年にかけて作曲された。そしてそれ以後1900年までに2回の改訂が行われ現在の形となった。1885年に父を亡くし、1888年初演の準備中に母の死に遭っている。これらのことはこの作品を作曲する大きな動機となったことだろう。1888年1月12日、マドレーヌ教会で第1稿は実際に建築家ルスファシェの葬儀ミサにおいて作曲者自身の指揮によって初演された。この後フォーレは第2稿を1990年に書き上げ、1893年1月28日国民音楽協会の演奏会で演奏した。さらに第3稿は1903年5月にリールで7月にはパリ万国博で演奏され大成功を収めた。現在親しまれているのが1900年に書き上げたこの第3稿である。このすべての管弦楽化をフォーレ自身がしたかどうかは現在疑問視されている。弟子たちによって行われたという見方が大きい。第2稿がフォーレのオリジナルに最も近いとされている。

 西欧19世紀が生んだ教会音楽中屈指の名作の一つで、不思議な魅力が漂っている。特にグレゴリオ聖歌を彷彿させるが、他の作曲家達がしたようにグレゴリオ聖歌の旋律を引用しているわけでもない。そこには近代的な響きがあり、その和声は自由な調性と旋法的要素がゆれ動き、微妙な結びつきをみせる。フォーレらしい新しい世界を展開している。静謐で過剰な感傷もなくからっとした死生観が感じられる。それは希望である。
 グレゴリオ聖歌中世(800-1400)の音楽、フォーレ(1845-1924)は20世紀前後のフランス近代の作曲家なのにどうして中世か? その根本的接点は教会旋法という音組織にある。中世には調がなく、教会旋法を音組織としてグレゴリオ聖歌は作曲された。一方、フォーレの生きた20世紀前後には調性から脱却しようとする無調への動きがあった。調性はバロック古典派ロマン派(1600-1900)まで大きく支配した音楽の組織であり音楽理論であった。フォーレは教会旋法に着眼して独特な音を組み立てていったと考えられる。そしてドビュッシー、ラヴェルへとつらなっていくフランス近代音楽の重要人物となった。フォーレの作品は20世紀の音楽にありがちなてらいや不快さもなく、控えめで精緻な美しさがあり、伝統的なものさえ感じさせる。そうした響きは日本人には好ましい。それは日本の伝統音楽が西洋音楽の調性とは異なる音組織
(旋法)を有しているからであろう。日本の古い伝統音楽に親しんでいる我々には無調音楽を受け入れる素地があると思われる。

 最後に筆者の最も好む第3曲「
サンクトゥス(感謝の賛歌)」をご紹介しよう。曲はオルガンの持続音の上にハープとヴィオラの美しいアルペジオ、そしてヴァイオリン群に包まれてソプラノ群とテノール群が交互に歌いあげる。それは静謐そのものである。結びの“オザンナ”に入ってオルガンそしてホルンとトランペットが加わり、壮大な賛美の大合唱となる。実際の典礼ではこの後、ミサの中心へと向かっていく。司祭は最後の晩餐のイエスのことばを唱え、パンと葡萄酒の聖変化を行う。フォーレの「サンクトゥス」はそうしたミサの中での最も重要部分へのすばらしい序奏を務めていて、天上の音楽を想わせる高さがある。


<「レクイエム op48」の構成>

第1曲 入祭唱 Introitus永遠の安息をキリエ Kyrieあわれみの賛歌
第2曲 奉納唱 Offertorium主イエス・キリスト、栄光の王よ
            
1.Domine Iesu Christe“主イエス・キリスト、王よ”    合唱
2.Hostias et preces“賛美のいけにえと祈りを”    バリトン独唱
 
第3曲 サンクトゥス Sanctus感謝の賛歌
            オルガンとハープ、ヴィオラの前奏の後、合唱
                    フォーレは“ほむべきかなBenedictus”以後のテキストを省いている
第4曲 聖体奉挙後 Pie Iesuいつくしみ深いイエスよ ソプラノ独唱
         続唱怒りの日」の結びの語句である 
                     聖変化の直後に演奏されたが、正式な典礼のやり方ではない
第5曲 アニュス・デイ Agnus Dei平和の賛歌拝領唱 Communio永久(とわ)の光で
第6曲 リベラ・メ Libera me私をお救い下さい
第7曲 イン・パラディズム In paradisum楽園に



参考ディスク

CD 
UCCP-7074(発売2005/6/22)
フォーレ「レクイエムOp.48」、「パヴァーヌOp.50」
劇音楽「ペレアスとメリザンドOp.80」
a.前奏曲 b.糸を紡ぐ女 c.メリザンドの歌 d.シシリエンヌ e.アンダンテ f.メリザンドの死

ジャン・フルネ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
オランダ放送合唱団、エリー・アメリング(S)、ベルナルド・クリュイセン(S)、ダニエル・コルセンバ(org)

デイヴィッド・ジンマン指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ジル・ゴメス(S)

録音:1975/1979


LD PLLC-5003 フォーレ「レクイエム」発売1990/9/21

指揮:ジァン=クロード・カサドシュ
北カレー合唱団・リール国立管弦楽団

バーバラ・ヘンドリックス(S)
カール・ヨハン・ファルカム(Br)

 
収録:1988年6月サン・ドニ大聖堂フェスティヴァル・ライヴ

2002


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