制作者:国本静三

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ミサとミサ曲



<ミサ>


 ミサmissa
ラテン語という語は、ミサ典礼の終りに司祭がいう言葉“Ite,missa est”から由来する。直訳すれば“行きなさい、あなたがたは遣わされています”という意味になる。ミサ典礼の終了を告げる派遣のことばがミサの名称になった。また、ミサはキリスト教典礼の中心的な礼拝で、一般にローマ・カトリック教会や正教会において用いられる語である(他のキリスト教諸派でも用いる場合がある)。ミサは、キリストの救済行為を、最後の晩餐のことばを中心にパンとブドウ酒のしるしによって記念し、再現する典礼である。ミサ典礼の通常式文のうち、キリエグロリアクレドサンクトゥスアニュス・デイを楽曲にしたものをミサ曲という。

 第2ヴァチカン公会議(1962〜65)において画期的な教会刷新が行われ、典礼については従来のラテン語にかわり、諸民族の言語が用られるようになった。信徒の典礼理解と積極的参加の促進のためで、わが国では原則として日本語が用いられているが、原典規範版テキストは今もラテン語(ただし、古来「キリエ」のみはギリシャ語が用いられてきた)である。これに従って、各言語に翻訳されている。場合によっては各民族の文化や伝統に合わせて創案されることもある。



<ミサ典礼の構成


固有式文proprium

通常式文 ordinarium

聖書朗読とその他

T  開祭の祭儀    

1.入祭の歌
introitus
入祭唱

2.入祭の挨拶

3.告白の祈り

4.あわれみの賛歌 Kyrie

5.栄光の賛歌 Gloria

6.集会祈願

U  ことばの祭儀  

1.旧約聖書朗読

2.答唱詩編
旧:昇階唱graduale

3.使徒書朗読

4.アレルヤ唱
 旧:四旬節、死者:詠唱

5.続唱 sequentia

6.福音朗読

7.説教

8.信条 Credo=信仰宣言
 ニケア・コンスタンチノープル信条

9.共同祈願

V  感謝の典礼

1.奉納の歌
offertorium奉納唱

2.奉納祈願

3.叙唱

4.感謝の歌 sanctus

5.奉献文 canon
最後の晩餐の再現聖変化
キリストの受難と復活を
記念する

W   交わりの儀

1.主祷文

2.副文

3.平和の挨拶

4.平和の賛歌 Agnus Dei

5.拝領の歌
communio拝領唱

聖体拝領

6.拝領祈願

X   閉祭の儀

1.閉祭の挨拶

2.派遣の祝福と解散


「固有式文proprium」と「聖書朗読と他」は毎日変わる。「通常式文ordinarium」は定型化した式文。

*次の2つは週日ミサや記念日ミサでは用いない。祝日に“栄光の賛歌Gloria”、主日、祭日には“栄光の賛歌Gloria”と“信条Credo”が用いられる。

*3つの“聖書朗読”は主日、祭日のみ。それ以外は2つとなる。←第2ヴァチカン公会議(1962〜65)以降の名称と実施法

*教会歴には週日(待降節、年間、四旬節)、記念日、祝日、祭日の区別がある。
←第2ヴァチカン公会議(1962〜65)以降の名称

*現在正式に認可された“続唱 sequentia”には「復活」、「聖霊降臨」、「聖体」、「悲しみの聖母」の4つがある。それぞれの祝日に任意に歌うか唱えられる。かってレクイエムの有名な“怒りの日Dies irae”は、廃止された。←第2ヴァチカン公会議(1962〜65)以降




通常式文

日本カトリック教会式文使用
「キリエ」のみ伝統的にギリシャ語が使われている

あわれみの賛歌(キリエ)
Kyrie,eleison.
Kyrie,eleison.

Christe,eleison.
Christe,eleison.

Kyrie,eleison.
Kyrie,eleison. 
主よ、あわれみたまえ。
主よ、あわれみたまえ。

キリスト、あわれみたまえ。
キリスト、あわれみたまえ。

主よ、あわれみたまえ。
主よ、あわれみたまえ。

栄光の賛歌(グロリア)
Gloria in excelsis Deo,
et in terra pax hominibus
bonae voluntatis.

Laudamus te,benedicimus te,
adoramus te,glorificamus te,
gratias agimus tibi
propter magnam gloriam tuam.

Domine Deus,Rex caelestis,
Deus Pater omnipotens.
Domine Fili unigenite,
Iesu Christe.
Domine Deus,Agnus Dei,
Filius Patris.

Qui tollis peccata mundi,
miserere nobis.
Qui tollis peccata mundi,
suscipe deprecationem nostram.
Qui sedes ad dexteram Patris,
miserere nobis.

Quoniam tu solus Sanctus,
tu solus Dominus,
tu solus Altissimus,
Iesu Christe,
cum Sancto Spiritu,
in gloria Dei Patris.
Amen.
天のいと高きところには神に栄光、
地には善意の人に
平和あれ。

われら主をほめ、主をたたえ、
主をおがみ、主をあがめ、
主の大いなる栄光のゆえに
感謝し奉る。

神なる主、天の王、
全能の父なる神よ。
主なる御ひとり子、
イエス・キリスト。
神なる主、神の子羊、
父のみ子よ。

世の罪を除きたもう主よ、
われらをあわれみたまえ。
世の罪を除きたもう主よ、
われらの願いを聞きいれたまえ。
父の右に座したもう主よ、
われらをあわれみたまえ。

主のみ聖なり、
主のみ王なり、
主のみいと高し、
イエス・キリストよ。
聖霊とともに、
父なる神の栄光のうちに、
アーメン。

信仰宣言=信条(クレド)ニケア・コンスタンチノープル信条
Credo in unum Deum,
Patrem omnipotentem,
factorrem caeli et terrae,
visibilium omnium et invisibilium.

Et in unum Dominum Iesum Christum,

Filium Dei unigenitum.

Et ex Patre natum ante omnia saecula,
Deum de Deo,lumen de lumine,
Deum verum de Deo vero.

Genitum,non factum,
consubstantialem Patri,
per quem omnia facta sunt.

Qui propter nos homines,
et propter nostram salutem,
descendit de caelis.

Et incarnatus est de Spiritu Sancto
ex Maria Virgine,et homo factus est.

Crucifixus etiam pro nobis
sub Pontio Pilato passus,
et sepultus est.

Et resurrexit tertia die,
secundum Scripturas,
et ascendit in caelum,
sedet ad dexteram Patris.

Et iterum venturus est cum gloria,
iudicare vivos et mortuos,
cuius regni non erit finis.

Et in Spiritum sanctum,
Dominum et vivificantem:

Qui ex Patre Filioque procedit.
qui cum Patre et Filio simul adoratur,
et conglorificatur,
qui locutus est per Prophetas.

Et unam,sanctam,catholicam
et apostolicam Ecclesiam.

Confiteor unum baptisma
in remissionem peccatorem.

Et expecto resurrectionem mortuorum,
et vitam venturi saeculi.
Amen.
わたしは信じます。唯一の神、
全能の父、
天と地、見えるもの、見えないもの
すべてのものの造り主を。

わたしは信じます。
唯一の主イエス・キリストを。
主は神のひとり子、

すべてに先だって父より生まれ、
神よりの神、光よりの光、
まことの神よりのまことの神。

造られることなく生まれ、
父と一体。
すべては主によって造られました。

主は、わたしたち人類のため、
わたしたちの救いのために
天からくだり、

聖霊によって、おとめマリアより
からだを受け、人となられました。

ポンティオ・ピラトのもとで、
わたしたちのために十字架につけられ、
苦しみを受け、葬られ、

聖書にあるとおり
三日目に復活し、
天に昇り、
父の右の座に着いておられます。

主は、生者と死者を裁くために
栄光のうちに再び来られます。
その国は終わることがありません。

わたしは信じます。
主であり、いのちの与え主である聖霊を。

聖霊は、父と子から出て、
父と子とともに礼拝され、
栄光を受け、
また預言者をとおして語られました。

わたしは、聖なる、普遍の、
使徒的、唯一の教会を信じます。

罪のゆるしをもたらす
唯一の洗礼を認め、

死者の復活と
来世のいのちを待ち望みます。
アーメン。     *公式口語訳(2004年〜)

感謝の賛歌(サンクトゥス)
Sanctus,Sanctus,Sanctus
Dominus Deus Sabaoth!
Pleni sunt caeli et terra
gloria tua.
Hosanna in excelsis!

Benedictus qui venit
in nomine Domini.
Hosanna in excelsis!
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、
万軍の神なる主。
主の栄光は
天地に満つ。
天のいと高きところにホザンナ。

ほむべきかな、主の名によりて
来たるもの。
天のいと高きところにホザンナ。

平和の賛歌(アニュス・デイ)
Agnus Dei,
qui tollis peccata mundi,
miserere nobis.

Agnus Dei,
qui tollis peccata mundi,
miserere nobis.

Agnus Dei,
qui tollis peccata mundi,
dona nobis pacem.
神の子羊、
世の罪を除きたもう主よ、
われらをあわれみたまえ。

神の子羊、
世の罪を除きたもう主よ、
われらをあわれみたまえ。

神の子羊、
世の罪を除きたもう主よ、
われらに平安をあたえたまえ。




ミサ曲


 ミサ曲という場合、広い意味ではミサの中で用いられる音楽ということになるが、狭義にはミサ曲は、ミサの式文にしたがって作曲されたものをいう。一般には通常式文(キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイ)に対する一連の楽曲を意味する。最も古いミサ曲の例としてグレゴリオ聖歌があげられるが、現代にいたるまで多数の名曲を生み出しているのは周知の通りである。ミサ典礼にはその行う目的性などからいくつかの種類があげられる。ミサ典礼の中心は主日ミサ(日曜日)であるが、冠葬祭のミサ(結婚ミサ、葬儀ミサレクイエム、平和を願うミサとか聖人の記念のミサ等がある。

 第2ヴァティカン公会議(1962-65)以前のこうした名曲には、ラテン語が用いられている。ラテン語は、ローマ人が使っていた言語で、出土品からBC.600年頃からラテン語が存在したことが判明している。BC.500〜AD.400年頃このローマ人がヨーロッパ、小アジア、アフリカ北海岸を制覇した。それと共にラテン語も広がったのである。これがラテン民族の始りでもある。

 教会はローマでも4世紀中頃過ぎまで典礼にギリシャ語を用いていたが、この後ラテン語を用いるようになった(「キリエ」のみギリシャ語のままである)。そして典礼ばかりでなく、ローマ・カトリック教会の公式語としてまた神学、哲学、文学、科学などの学問用語としても用いられてきた。

 中世になってこのラテン語がそれぞれの地方、国の言語と融合していわゆるラテン系の言語が生まれた。伊語、仏語、西語、ポルトガル語、ルーマニア語などがそれで、これらをロマンス語ともいう。そしてラテン語はこの多くのロマンス語を生んで死語になっていった。ロマンス語を話す民族をロマン民族という。その文化の時代をロマネスクという。
 ラテン語はギリシャ語と姉妹語だが、ギリシャ語から派生したのではない。ラテン語はゲルマン諸語(独語、英語 etc. )にも影響が及んだ。英語の45%の単語はラテン語系である。

 現在でも教皇庁における公式用語は、ラテン語が用いられている。公式文書、典礼文の
原文などはラテン語で全世界の教会に発布されている。当地の教会で各地の言語に翻訳されているのが現状である。




司式によるミサの種類


第2ヴァティカン公会議(1962-65)以前は、有効なミサ司式は一人の司祭によるものであった。現在は複数の司祭による共同司式ミサが認められている。そのためか下記の3種類の区別は現在はあいまいでもある。第2ヴァティカン公会議以後、日本は日本語でミサが行われるが、現状からいうと固有式文の日本語聖歌がグレゴリオ聖歌のようにすべて揃っておらず下記でいう歌ミサ=ミサ・カンタータは不可能といってもよいからである。

読唱ミサ missa lecta 固有式文通常式文奉献文を唱えて司式する。
歌ミサ missa cantata   固有式文通常式文奉献文を歌唱して司式する。
以前は香炉が必ず使われた。(現在、香炉使用は日本では殆ど見られない)

盛儀ミサmissa solemnis=荘厳ミサ 第2ヴァティカン公会議以前は歌ミサ主司式司祭助祭副助祭で司式された。
以前は香炉が必ず使われた。副助祭は現在廃止の祭司職。

現在は司祭団の共同司式+香炉(現在、香炉使用は日本では殆ど見られない)

ヴァティカン公会議以後の日本カトリック教会は、「盛儀ミサ」を正式名にしている。
音楽用語としてはラテン語で「ミサ・ソレムニスMissa Solemnis(=荘厳ミサ」を用いるのが、一番便宜性があるかもしれない。

典礼としての「歌ミサ」や「盛儀ミサ」は現在は曖昧な概念となった。

音楽作品名に存在する例

荘厳ミサ=ミサ・ソレムニスMissa Solemnis:
ex.ベートーヴェン荘厳ミサ=ミサ・ソレムニスOp.123

大ミサ=ミサ・グレートMissa <Great>:
ex.モーツァルト大ミサ曲ハ短調K.417a

ミサ・ブレヴィスMissa Brevis:
クレドがない構成のミサ曲を言う。ルター派ではキリエとグロリアのみで構成されたミサ曲を指した。

ex.ブリテンミサ・ブレヴィスOp.63

オルガン・ミサ
合唱+オルガンによる編成 ハイドン等に見られる

 作品での荘厳ミサ=ミサ・ソレムニス大ミサ=ミサ・グレートの表記は司式からみた名称でなく、音楽作品としての規模の大きさや演奏形態、また時間的な長さが示されているようである。

1998-2009


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