制作者:国本静三

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オペラ「マノン・レスコーManon Lescaut」


<作曲の経緯>

 
 プッチーニマスネの成功作「マノン」(1884年初演)を充分に意識して作曲に取りかかる。だが、未だイタリアでは上演されてはいなかった。台本には5人の手を煩わせることになる。レオンカヴァッロ、プラーガ、オリーヴァ、イッリカ、ジャコーザである。イッリカとジャコーザは後のプッチーニ・オペラ「ラ・ボエーム(1896年トリノ初演)、「トスカ(1900年ローマ初演)、「蝶々夫人(1904年ミラノ初演)の台本を共作する。レオンカヴァッロは後に「道化師」(1892年初演)の作曲をして一躍有名になる。プッチーニは「マノン・レスコー」で台本作者にたいへんなわがままぶりを発揮したが、フランス文学に造詣が深いイッリカなのにプッチーニは満足できなかった。特に次作の「ラ・ボエーム」(1895年完成)では頂点に達する。間に立って実質的な見地から常に見守っていたのが音楽出版業リコルディ家の2代目ジュリオ(1840-1912)であった。

 マスネのフランス・オペラ「マノン」は原作の味を残したオペラとなっている。主人公マノンについてはコケットな女性の揺れ動く微妙な心理表現を含めている。その分ドラマ展開は希薄にはしている面もある。最後は回心し、ゆるしを願う人間として描いている。プッチーニは劇的展開を重視した。またマスネが描かなかったマノンとデ・グリューの物語の骨格を浮かび上がらせようとしている。ただ各幕への移行が不自然で平板な印象は否めない。幕から幕への経過は大幅に省略されて移行していくので、全体の劇構成の緊張感を薄くしている。しかしプッチーニの感性豊かな音楽が補い、観る者の想像力をかき立てる。そして物語の時代におけるバロックの宮廷的な優雅さやコミカルな遊び心を存分に出している。マスネも多く18世紀音楽のオマージュが見られるが、それにも負けない18世紀サロン趣味をより直接的に再現して観客を楽しませている
(ex.第2幕)。プッチーニはマノンを特殊な淫欲な女性ではなく普通の女性像として浮かび上がらせる。生来そなわった彼女の美貌が禍となり、彼女をとりまく男性の運命的ドラマとしている。マスネの「マノン」と同じく決して分かりやすいオペラではないが、それが原作自体の魅力でもあり、その物語は当時の聴衆にはよく知られていた。加えてプッチーニの美しい音楽が大成功をもたらし、プッチーニの出世作となる。「マノン・レスコー」は1893年2月1日、トリノの王立劇場で初演となった。



<物語>

第1幕:
アミアンの宿屋の前

 
フランスのアミアンにある宿屋の前では、学生や女たちが賑やかに集っている。学生エドモンドが、デ・グリューに仲間に加わるようすすめるが、きまじめな学生であるデ・グリューは応じない。そこに馬車が着き、マノン・レスコーと彼女の兄レスコー、そして国王の財務官ジェロントも降りて来る。彼女を一目見た途端、デ・グリューはこれこそ理想の女性だと激しい恋に落ちる。マノン・レスコーに近づいたデ・グリューは、彼女が明日父の意志で修道院に入る予定であることを知る。2人は後で逢う約東をする。しかし、好色なジェロントもマノン・レスコーにねらいをつけている。これを知ったマノンの兄レスコーは喜ぶ。ジェントロは国王の財務官という高位にあったからだ。ジェロントは今夜のうちにもマノンを用意した馬車でパリへ連れ去ることを目論んでいた。さて、落ち合ったデ・グリューとマノンは愛を告げ合い、友人エドモンドの手引きでジェロントが用意した馬車でちゃっかりデ・グリューとマノン・レスコーはパリに逃げてしまう。事態に気付いて地団駄踏むジェロント。彼にマノンの兄レスコーは、マノンはパリに行った、そしてマノンはぜいたく好き、貧乏が嫌いだから、あの学生の手から離れ、すぐあなたの手に入るとささやく。

第2幕:パリにあるジェロント家のマノンの部屋

 
マノンとデ・グリューは一緒に生活を始めたが、ジェロントに見つかり2人の仲は裂かれ、今はジェロントの愛人である。豪勢な生活である。兄レスコーも恩恵を受けて金廻りがよい。今のマノンと自分の境遇に満足している。しかし、マノンはデ・グリューが忘れられない。一方、デ・グリューも同じ気持ちであると兄レスコーは告げてしまう。兄はマノンのためにジェロントの目を盗んでデ・グリューを連れて来る。マノンは彼に許しを乞う。マノンの不実に怒ってはいるものの抵抗出来ないデ・グリュー。2人は愛を再確認する。この様子を目の当たりにしたジェロントは2人を咎めるが、逆にマノンに侮辱されて怒りに震えながら出て行く。デ・グリューはマノンと一緒に逃げようとするが、彼女は宝石や贅沢品に執着を示す。デ・グリューはやりきれない。突然、兄レスコーが来て2人は訴えられたと告げる。ジェロントと警官が来て、マノンを逮捕してしまう。デ・グリューは嘆く。

第3幕:
ル・アーヴル港

 マノン・レスコーはアメリカに追放されることになる。他の罪人たち(売春婦)と一緒に獄舎で船に乗り込むのを待っている。デ・グリューと兄レスコーは港で待機していた。助け出そうとしてあらゆる手段を試みるが、すべて徒労に終わる。獄舎の窓からマノンとデ・グリューは声を掛け合う。乗船の時、物見高い人々が、売春婦たちの落ちぶれた姿を侮るように見物している。デ・グリューは、点呼に答える売春婦の中にマノンを見つける。彼は船長に駆け寄り、マノンとともに見習い水夫としてアメリカに行かせてくれるよう頼む。船長は許可を出す。


第4幕:
ニューオーリンズに近い荒野

 植民地時代のアメリカに到着したマノン・レスコーとデ・グリューはしばらくの間、平穏に暮らしていた。しかし、マノンに想いを寄せた男とのことで問題を起こしてしまい、2人はフランス管理下の植民地から逃亡し、荒野をさまよっている。疲労困ぱいしたマノンは、もう歩くこともできない。デ・グリューは水を探しに行く。マノンは一人自らの死期を悟る。デ・グリューが水を探せなくて戻った時、マノンは永久の別れを彼に告げ、彼の腕の中で息絶える。デ・グリューは苛酷な運命を呪い、マノン・レスコーを抱きしめて号泣する。




参考ディスク

DVD
 WPBS-95011 プッチーニ「マノン・レスコー」発売:2005/12/7

ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ゲッツ・フリードリヒ演出
コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団・合唱団

マノン・レスコー:キ・テ・カナワ(S)、デ・グリュー:プラシド・ドミンゴ(S)
兄レスコー:トーマス・アレン(Br)、財務官ジェロント:フォーブス・ロビンソン
学生エドモンド:ロビン・レガッテ(T)

収録:1983年5月17日コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウスライヴ


2005


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