静かな山間。静かな時間。
11.08
秩父に行く
秋本番。紅葉前線が次第に南下してきました。
磐梯山ではもう終わったとか、いろは坂では今週末がピークだとか聞けば、お尻のあたりがなんとなくそわそわ
してくるのはどうしてでしょう。
栃木県まで紅葉しているのであれば、そろそろ近くの山も紅葉しているはず、と考えた運転手。埼玉県の山岳地帯
といえば秩父です。
「秩父のほうなら、今頃かな」
「行こう行こう」
ロクに調べもせずに、とりあえずポンポで出発することにしました。
今日はよく晴れて暖かいくらい。
秩父へ向かう道は、飯能から峠を越える道(国道299号線)と、熊谷から長瀞を通る道(国道140号線)が
ありますが、運転手は峠越えを選びました。
しかし飯能へ向かう道はあちこちで渋滞。必要とも思えない道路の掘り返し工事が行われていました。日本という
国は道路工事が大好きなんですね。
飯能を過ぎて山並みが近づいた頃、ようやく行き交うクルマも少なくなりました。
道はいきなり狭くなり、谷沿いにカーブが続きます。
とろこでポンポは走行一時間ごとに十五分程度の休憩を取るのですが、そろそろその時間が近づいてきました。
運転手はとっさに、国道をそれて集落の中に通じる細い道にポンポを滑り込ませました。少し行くと、クルマ一台
がようやく通れるほどの狭い橋がかかっていました。ポンポは橋を渡ったところで小休止。
「まだ赤くなってないね」
山の木々は緑で、紅葉を期待していたのですが、まだ早すぎたようです。
それでもポンポを降りて橋の上から川を見下ろせば、川底がくっきりと見えるほど水が澄んでいました。これほど
きれいな川を見るのは久々のこと。
あたりは国道の通るトラックの轟音も届かず、川が流れる音だけが絶え間なく小さく聞こえてきます。
運転手は、♪静かな静かな里の秋……、という歌を唐突に思い出しました。
透明な川の水。
しばらく休憩してから、ふたたび坂道にアタック、といっても予想よりも勾配がきつくなく、ポンポの3速トップ
ですいすい登っていきます。
「♪おなーかすいーたよー」
突然ミチコさんが歌いだしました。どうやら『腹が減った、何か食わせろ』というのを表現するために歌を歌った
のでしょう。
「♪おそばーがたべたいなー」(蕎麦を食わせろ)
このまま無視してもよいのですが、そうすると、ちゃんとした食事をしたときにヤケ食いするのが目に見えている
ので、ここは少し腹の中に何かを入れてやるほうがよいようです。とはいえ、秩父方面に行くのは初めての運転手。
もとよりグルメ情報など持っているはずもありません。
そこへ天の恵みか、ポンポのフロントガラスの向こうに、道の駅『果樹公園あしがくぼ』の表示板を発見。
さっそくポンポを駐車場に入れました。
最近どこの道の駅に行っても地元の農家の特産品を並べて売っていたりと、高速道路のSA並みに楽しめますが、
ここもそういう道の駅のひとつでした。
併設のレストランでモツ煮丼と、お望み通り『たぬきそば』を食べると(ちなみにここの蕎麦は特産のこんにゃく
を混ぜたのか、ちょっともちもちした食感の半透明な麺)、野菜の品定め。このキャベツは近所のスーパーと変わら
ない値段ね。たっかーい、どうして? などなど……。運転手からすれば、べつにどーだっていーじゃん、という
ことなのですが。結局、買ったのは、ボリュームたっぷりの長葱(150円)だけでした。
モツ煮丼。甘辛いタレが好き。
道の駅で時間をつぶしてしまい、秩父市街に入るころにはすっかり太陽が傾いていました。
299号線から140号線で熊谷へ抜けようとする道は片側一車線で渋滞。平日がこれでは、紅葉が見頃になる頃
の週末は身動きがとれないほどの渋滞になるに違いありません。
のろのろと走るポンポの中で、お腹がいっぱいになったミチコさんは、
「今度は牛乳飲みたくなっちゃった」
「牛乳?」
「だって、秩(乳)父にいるんだもーん!」
「……」
やっぱりミチコさんには紅葉よりも食べ物のほうがいいんだろうな、と運転手は半クラッチを踏み続けながら秋を
実感するのでした。 ■
日が暮れてきました。ミチコさん、サイドブレーキ引いたままでは走りませんよ。
秩父鉄道の黒谷駅。秩父の山がシルエットになっています。
(おまけ)運転手です。