-- 12 December 2006

飛行船が帰ってきた!


12.11

飛行船を迎えに行く



 10月3日に大阪へと旅立った飛行船が、ついに二ヶ月ぶりに東京に帰ってくることになりました。

 わずか二ヶ月前の出来事なのに、遠い昔のことのように感じてしまう運転手。見送るときには離陸に間に合わず、

むなしい思いをしたのを忘れてはいません。

 今日は、絶対に着陸シーンを写真に撮るんだ。

(ほほう、ずいぶんと気合いが入ってますな)

 茶色オオカミが言いました。

(早起きしたんでしょうね)

 いいや、飛行船が帰ってくるのは午後だから、ゆっくり起きたよ。

 というわけで、大阪から飛んでくる飛行船の着陸時刻はどんなに早くても午後2時くらいだろう、と目星をつけた

運転手。さらに余裕を持たせて、12時前に家を出ました。飛行船が帰ってくる桶川市のホンダエアポートまでは

時間半あれば着きます。

 新大宮バイパスから県道にそれて通い慣れた道を走ります。そして午後2時前、ホンダエアポートに着きました。

 まだ飛行船のクジラのような船体はありません。

 よかった、まだ到着していないんだな、と思った運転手。しかし、そこで茶色オオカミが言いました。

(今日は、帰ってこないんじゃないですかねえ)

 はっとして見れば、飛行船を係留するためのハンガー付きのトラックが待機しているわけでもありません。だだっ

広い草原には、飛行船を出迎えるような人も、設備もまるで見えません。

(やっぱり途中で、飛行船の気が変わって、来るのをやめたんですよ)

 なんだい、君もミチコさんみたいなことを言うね。

 遠くの駐車場に飛行船の会社らしい整備服の人が二、三人見えるのですが、談笑しているばかりで、一向に準備に

取りかかる気配がありません。

 まあ、いいさ。日没まで待って来なかったら、帰ろう。

(とんだ無駄足というわけですな)

 茶色オオカミが言いました。

 外はひゅうひゅうと風が鳴っていますが、ポンポの中はまだ暖かいのです。 茶色オオカミが居眠りをするのを見

ていると運転手も眠たくなってきました。

 いつのまにか寝てしまい、はっと起き上がった運転手。時刻を見れば、午後三時。隣で茶色オオカミが気持ち良さ

そうに寝ています。幸いに目の前の草原に飛行船はまだ来ていません。

 飛行船が来るとしたら、東京を経由して来るはずだから、南から飛んで来るだろうな。日が沈みかけているほうを

西とするなら、南はあっちだ……。

 と運転手が遠くに見える雑木林の上の空を見ると……、なんと白い飛行船が小さく浮かんでいるではないですか!



 おお、と声にならない声を上げ、カメラを掴むとドアを開ける運転手。

(なんですか、寒いなあ、もう)

 茶色オオカミがぼやいていますが聞いてはいません。

 飛行船はゆっくりに見えて意外と速く、その姿がどんどん近づいてきました。

 飛行船の関係者らしい人たちの乗ったワゴン車が草原を目指して走ってきます。おしゃべりしていた整備服が忙し

そうに動き回っています。

 カメラを空に向けて写真を撮りまくる運転手。青空に白い飛行船の姿が映えます。

 飛行船は船体の両サイドにある小さな扇風機のようなプロペラを回しながら、姿勢を調節し、ゆっくりと緑の草原

の上に舞い降りて来ました。近づくと、全長75メートルがさすがに大きい。

 そして3時25分、待ち構えるスタッフの前に、飛行船は着陸しました。二ヶ月ぶりに帰ってきたのです。

(いやあ、よかったですなあ、着陸するところが見られて)

 茶色オオカミが運転手に言いました。

 飛行船は夕陽を浴びて、その船体を草の上に休めています。

 運転手はその姿を見ながら、居眠り運転も困るけれど、撮影前の居眠りにも気をつけようと思うのでした。 ■


無事、飛行船は着陸。


雲間から射し込む陽射しは、『天使の梯子』というのだそう。帰り間際、ホンダエアポートへと通じる道で。



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