表参道のポンポ。右側にある行灯型の照明が新しいイルミネーション。色が変化します。
12.21
イルミネーションを見に行く
世の中がクリスマスムード全開のこの時期。
ロマンチックな雰囲気とはまったく関係なく過ごしている運転手、とミチコさん。
今日は銀行に行くついでに銀座まで買物に出てきました。
街行く女性はおしゃれをして歩き、パティスリーなんとかかんとか、と横文字で書かれた店の中や、CやHのブラ
ンドショップの中は、品定めをする人たちでにぎわっています。
そういうものにまったく縁のない二人は、ふーん、と言って通り過ぎるだけです。
日も暮れて、帰ろうかというとき、ミチコさんが「けやき坂に行くー」と言い出しました。
そういえば去年も行った(実は一昨年も行っていた)、六本木ヒルズのけやき坂のイルミネーションを見たいと言
うのです。この時期、平日とはいえ六本木周辺の道は激混み状態でしょう。
しかし、『心優しい』運転手はミチコさんのために出かけることにしました。
内堀通りを直進し、新橋を抜けて赤羽橋の方へと向かえば、東京タワーの真下に出ます。
「わあ、とうきょうたわーだ!」
ミチコさんは小学生のようにポンポからオレンジ色にライトアップされたタワーを見上げました。
「でも、今日は緑じゃないねえ」
「?」
たしかに過去、東京タワーが緑にライトアップされたことはあります。
しかし、今夜もそうなるのかとミチコさんは思っていたのでしょうか。
そこから飯倉交差点を通り、新一の橋交差点から六本木ヒルズへと向かう道へと入ったとたんに待ち構えていたの
は数珠つなぎの車。予想通りの渋滞です。しかしミチコさんは目を見開き言いました。
「いやー、もう行きたくなーい!」
なんですと!?
運転手は耳を疑いました。連れて行け、と言ったにもかかわらず、行きたくない、と?
こうやって、男女の仲というのは壊れていくものだなあ、と感じ入る運転手。
500メートルを進むのに10分かけて、ようやくけやき坂の入口にたどり着きました。
けやき坂。やはり電車で来たほうがゆっくりできそう。
するとミチコさんは一転して、
「きゃー、きれーい!」
白と青のLEDで、細かい光の粒がまき散らされたかのようなイルミネーションです。
しかし、去年は路肩に停まれたけやき坂でしたが、今年は完全駐停車禁止になったようで、道の両サイドには緑色
のポールが置かれ、停まっている車もありません。そのせいで、あっと言う間に通り抜けてしまいました。
「あーきれいだったねー、じゃあ、帰ってごはんにしましょう」
ミチコさんが満足したように言いました。
しかし、運転手は国道246号に出ると、渋谷の方向へとポンポの足を向けました。表参道がイルミネーションを
復活させたというニュースを思い出したのです。
表参道の新しいイルミネーションは、けやき並木に電飾をつけるのではなく、行灯型の大きなライトを通り沿いに
並べたもの。しかし、けやき坂のきらきらを見た後では、どうしても地味に見えてしまいます。
心なしか通りを歩く人もクリスマス前にしては少ない感じ。ポンポを停めて写真を撮ることだってできたのです。
「今日はイルミネーションパーティだったね」
とミチコさん。一年後にまた、けやき坂に連れて行け、と言うのでしょう。
明治通りを走りながら運転手は、来年はどうか渋滞していませんように、と祈るのでした。 ■
表参道を走る。道は意外と空いていた。