寒そうなミチコさん。元気に走る女子大生。
03.30
お花見に行く
言い訳の数は山ほどあれど、決してさぼっていたわけではございません。ましてポンポに乗らなかった、などということがどうしてありえましょう。
運転手が日記をしばらく(かれこれ二ヶ月も!)書かなかったのは、ひとえにポンポでお出かけしなかった、というだけなのです。いえ、出かけなかったのは正しくない。ポンポで走りに行かなかったのです。ポンポで走りに行く、とは時間を気にしながら目的地に急ぐことではありません。周りの景色を楽しみながらのんびり行くこと。それがポンポのお出かけです。
お出かけしなかった間、ポンポは運転手の仕事のお手伝いをしていました。
撮影の機材を運んだり、ミチコさんの花ねこが詰まった段ボールを積み込んだり。
土砂降りの雨の中を、トラックに水をぶっかけられながら走ったこともありました。寒い朝、ひたすら環七を市川まで走ったこともありました。それはとてもポンポとお出かけ、というようなものではなかったのです。ですから写真もまったく撮っていませんでした。
しかし、もう春。
暖冬だ、早咲きだ、などと騒がれながら去年とほぼ同じ時期に咲き出した桜を見るため、ポンポはミチコさんを乗せて出かけました。あ、正確には、『吉祥寺に買物に行くついでに桜を見る』ためですが、まあそれはいいでしょう。
運転手の住む埼玉県戸田市には日本に誇れるボートコース場があります。これは色とりどりのモーターボートがぐるぐるまわるものではありません。一人または数人でチームを組んでオールでボートを動かす競漕と呼ばれるもの。なんといっても、東京オリンピックで使われたボートコースだそうですから、なかなかのものです。コースの周辺にはいろんな大学の競艇部の艇庫が並んでいます。
そのボートコースに沿って桜並木が続いているのですね。運転手とミチコさんにとってお花見とはここの桜を見ることでもあります。
駐車場はあるのですが、それを通り過ぎると広い広いボートコースに出ます。コースが東西に伸びているので、西を向けば落ちかかる太陽の光が水面に反射して美しい。ボートコースの周辺には商業施設もなく、お花見客が少ないのも撮影にはちょうどよい。
しかし、この日は風が冷たい日でした。
「はい、じゃあ、そのままちょっと左を向いてください。そうそう」
運転手がミチコさんにあれこれ注文を出しますが、ミチコさんは「寒いよー」。
それをなんとかなだめながら、写真を撮ります。
風で桜の枝がわさわさと揺れますが、まだ七部咲き程度なので、散る花びらはほとんどありません。
「寒い寒い」
写真を撮る運転手も寒くなってきたので、ポンポの中に逃げ込みました。
暖房の効かないポンポですが、陽射しがあれば車内は暖か。その熱がなくならないうちに、本来の目的地である吉祥寺に向かったのでした。 ■