信号待ちの空に飛行船!
04.21
飛行船を見に行く
スバル360に乗っていながら、鉄道が好き、飛行機も好き。もち
ろん船も。(時間があるなら離島行きの船に揺られてみたい)
要するに乗り物好きな運転手。子どものときからの病的趣味は大人
になっても治るものではありません。
さて一年ほど前に、飛行船が地元埼玉に運行基地を持っていること
を知ってから、飛行船が気になりだした運転手。それが『日本最大の
飛行船』であるならなおさらのこと。飛行船は飛行機とは違います。
空を泳ぐ(飛ぶ、というよりはそう言いたい)飛行船を見つけると、
おお、となぜか嬉しくなってしまうのは飛行船の魅力のなせるわざ。
ところがこの飛行船、『ツェッペリンNT』にはこの三ヶ月間会って
いません。年明け早々に定期点検のために、遠く九州は鹿児島へ行っ
てしまったのでした。飛行船のいない飛行場へ行っても、ゾウのいない
動物園に行くようなもの。なんとつまらないことでしょう。
というわけで、この日運転手が運行基地であるホンダエアポートに向
かったのは四ヶ月ぶりにのことでした。
そう、ツェッペリンNTが帰ってくるのです!
これはぜひともお迎えしなければ、ということで運転手は飛行船の
会社のサイトで到着時刻チェックしてからポンポで出かけました。
<いいんですか、もう12時半ですよ>
もうすぐイベントがあるため忙しいミチコさんの代わりに茶色オオ
カミが助手席に座りながら言いました。
「飛行船が着くのは14時半だから大丈夫だよ。今までの経験から一
時間半あれば着く」
運転手は自信満々です。
四月も下旬。今日は初夏を思わせるような暖かさ。ポンポの窓を開
けて新大宮バイパスを快調に走り……ませんでした。電光掲示板に
『渋滞1キロ』の表示。どこからどこまでが1キロなのか、のろのろ
運転が続きます。
茶色オオカミが肩をすくめるようにして、
<だーから、炒飯作って食べてる場合じゃなかったんですよ>
「……」
お昼ごはんは忙しいミチコさんの代わりに運転手が炒飯を作ったの
です。
<余計なことにヘンにこだわる性格ですね。さっさと出かけりゃよかっ
たのに>
「まだ、間に合う」
運転手がそう言ったときでした。上空に浮かぶ飛行船!! まだ大宮
さえも通過していません。
「予定時刻より早いじゃないか! 急ごう。茶色オオカミ君、パトライ
ト出して」
<そんなもん、ありませんって>
スバル360に赤色回転灯をつけても威圧感ゼロ。誰も道を譲ってく
れないでしょう。運転手はとりあえず道を急ぎます。
<制限時速は守ってくださいよ>
「分かってるよ」
新大宮バイパスを時速50キロで『激走』。
しかし、再び飛行船を発見したのは、荒川にかかる県道51号線の開
平橋を渡っているとき。かなたの地表近くに浮かんでいます。
<あー、着陸態勢ですなあ>
ちらりと見やれば、木立の中にその白い船体が隠れるときでした。
もう間に合いません。
突如、ポンポは菜の花が咲き乱れている小道へと入って行きます。
<あれ、どこに行くんです?>
「寄り道して写真を撮るの」
間に合わないなら、ポンポの写真を撮ろうと考えた運転手。あぜ道の
ような草に覆われた細いところをポンポは揺れながらゆっくりと走りま
す。
誰も通らないような細い道の、若葉の緑と黄色の菜の花に囲まれたそ
の空間はポンポのために用意された場所のように思えました。さっそく
カメラを取り出す運転手。
<もっと計画的に動いたほうがいいと思うんですがねえ>
はいつくばったり、土手に上ったりして写真を撮り続ける運転手を見
ながら、茶色オオカミがあきれたように言います。
「偶然の出会いを大切にしてるんだよ」
飛行船の着陸シーンを撮れなかった運転手は負け惜しみのように言い
返しました。 ■
ポンポだから通れる道。
菜の花が流れ過ぎる道。
そこはこんな場所。
ようやくホンダエアポートに到着。ツェッペリンNTと久しぶりの再会。
