国道246号線の切通し。静岡まではまだまだ。
11.01
岐阜へ飛行船を撮りに行く(1)
飛行船を追いかけて広島までも行ったことがある運転手。
興味のない人からすればまったく理解できないことでも、運転手にとってもみれば重要なことらしい。
ふだんは埼玉のホンダエアポートにいる飛行船なのですが、たまにホームベースを離れて遠くへ行くことがあります。
先日、飛行船はNHK・BSの番組中継をするため、名古屋へ行ってしまいました。
名古屋(正確には弥富市)を係留値にして、木曽川から岐阜の町へと飛ぶのです。
魅力的な企画なのですが、飛行船がいつもの飛行場にいないというだけで、運転手はなんだか落ち着きません。一日に何回も飛行船のサイトを見てしまいます。
そう。結局は行くしかないのです。というか、最初から行くことに決めてました。
<また、出かけるんですか>
肌寒そうにしている茶色オオカミが言いました。
去年、九州に行ったいらいのロングツーリングだからね、楽しみにしてたんだよ。
<エンジンをいじった後で、ちゃんと走れるかわからんのに、いいんですかね>
こないだは群馬まで往復したじゃないか。
<岐阜まで、その2倍……>
走るとも。
とは言ったものの、長距離を走るのはやはり緊張します。
去年、九州へ行ったときには、東京〜名古屋は二日がかり。それが今回は日程の都合で一日で行かなくてはいけません。明日は飛行船が飛ぶことになっています。それを撮りたい。
ともかく朝早く出るにこしたことはありません。が、こういうときに限って前日の仕事が終わらず、結局寝たのは午前3時。そして目が覚めたのは朝8時。朝五時にセットしていたアラームはいつのまにか沈黙していました。
<あーあ、だから言わんこっちゃないです。まったくムダな努力でしたな>
茶色オオカミは優雅に新聞を読みながらコーヒーを飲んでいます。僕にもくれよ。
しかし、環八の渋滞が気になる運転手はコーヒーも飲まずに家を出ました。
朝9時30分。ポンポは環八を走り始めました。
予想通りというか井荻トンネルを抜けたところでさっそく渋滞。それでも1時間ちょっとで国道246号線に入りました。
昨年は国道1号線にこだわって箱根越えをしてしまった運転手。あの急坂にはこりごりなので、今回は御殿場回りで静岡に出ることにしました。
穏やかな晴れの日、と思ったら…… (松田町)
雨が降り出してきました。
山間をゆく国道246号線。
静岡県に入った。(小山町)
厚木市12時20分。秦野市13時30分。いつもの通り、一時間ごとに休憩をするポンポ。ちょっとずつ西に進みます。
松田町を過ぎて山越えですが、勾配はそれほどでもありません。
これならミチコさんを隣に乗せても上れそうだな。
<あ、またけんかの火種になりそうなことを……>
山を上って行くにつれ、晴れていた空は次第に曇り、静岡県に入ったあたりで、真っ黒な雨雲に覆われてしまいました。
小山町14時50分。
<そういえば、九州に行ったときの初日も雨でしたな。それもけっこう嵐な感じで……>
苦あれば楽ありって言うだろ、そういうことなんだ。
<わたしゃ、ポンポくんのほうが心配ですよ>
ポンポは雨の中を慎重に走ります。カーブで滑って……、なんてことにはなってほしくありません。
気がかりな雨でしたが、御殿場を過ぎ、沼津の町にさしかったところで雨はあがりました。
沼津市16時30分。あたりが暗くなってきます。空いてると思っていた国道1号線が渋滞しています。
富士市17時40分、静岡市19時20分。島田市20時10分。
静岡県には国道と並行してバイパスが走っています。急いでいるポンポも走るのですが、これが2車線しかない対面走行のバイパス。ふつうのクルマなら時速80キロぐらいで走るのでしょうが、ポンポは60キロ。後ろから大型トラックがひたひたと追いかけてきますが、追い越させる場所もなく、つねにトラックを十数台したがえて走り続けることになってしまいます。
<あー、後ろのトラックがさっきからぴったり後ろにくっついて……、いかにも追い越したそうですけど?>
だめなんだって。路肩がないんだもの。
<いつ追突されるんじゃないかと思うと、わたしゃ毛が縮みそうですよ>
少しは態度が小さくなっていいかもしれないね。
浜松に入ってバイパスは終わりました。浜松市21時50分着。
浜松から名古屋までは約100km。なんとか明日の朝までには着けそうです。と思ったら休憩時間がだんだん長くなってきました。浜松で1時間休憩。
浜名湖を渡って豊橋市に着いたのは24時。ポンポの中でちょっと寝ることにします。茶色オオカミくん、ちょっとジャマだよ。
気がついたら三時間以上も寝てました。
ポンポの外に出て体を伸ばして出発。岡崎市4時40分。ここからはもう休憩はないでしょう。名古屋までノンストップで行けそうです。
刈谷市を過ぎたところで国道1号と別れ、国道23号線へ。四日市方面へ向かう道です。空が明るくなってきました。
飛行船は弥富市の海の近くに係留されています。地図を見ながらコンテナを載せたトレーラーが行き交う道を走るポンポ。そして、
「あ、いた!」
飛行船の白い船体が薄いグレーの雲の下に見えました。
これに会うために一昼夜ポンポで走ってきたことを思うと、感慨もひとしおです。
<なんとか無事に着いてよかったですな>
さすがポンポだね。さすが運転手。
<二つ目が余計ですな。ところで、大事なことをお忘れじゃありませんか>
何だい? 朝ごはんのことかな。
<……それもありますが、帰り道があるってことをお忘れなく>
なるほど。
日が暮れた国道1号線を走る。
深夜の道は大型トラックばかりが轟音たてて走り去る。豊橋市で。
夜が明けてきた。国道23号線へ。
埋め立て地の中に飛行船を発見。ようやく会えた。
