
浜松へ向かって国道1号線を走る。
11.06~07
岐阜へ飛行船を撮りに行く(3)
爆睡していた運転手はようやくポンポのシートから体を起こしました。
雨は小降りになっていて、黒く濡れた国道を、通勤に向かう車や、夜通し走って来たトラックが列をなして右に左に走って行きます。
昨夜は9時か10時頃に、国道1号線沿いの(おそらく安城市あたりの)どこかのコンビニの駐車場にポンポを停めた運転手は休憩どころかそのまま寝入ってしまったのでした。
夜のうちに浜松ぐらいまで走りたかったのですが、雨の降る夜、眠い目をこすりながら運転するのほうが危ないのですからしかたありません。
コンビニでホットの缶コーヒーを飲んでからポンポは走り始めました。
<ふわあ・・・、っと。今日はこの雨じゃあ、飛行船は飛びそうもありませんな>
茶色オオカミも寝不足気味。
まあ、ここにいてもしかたないからとりあえず浜松までは行こうよ。
ポンポは国道1号線を来たときとは反対に走ります。道は平坦なように見えて、小さな峠がいくつか続きます。
豊橋を抜けて浜松に入る前は汐見坂という小さな峠を越えます。坂を下りきったところで、ポンポは浜辺に出ました。
飛行船の飛ばない曇り空のしたで太平洋の波が砂浜にいくつもやってきます。海辺にはサーファーの姿がちらほら。黒いウェットスーツが波間に見え隠れするボードの上で揺れていました。

汐見坂付近の海。
ポンポはさらに走ってお昼過ぎに浜松到着。途中でインターネットカフェの看板を見つけて、昨日ネットに接続できなかったぶんをここで取り戻します。運転する時間よりもネットの時間はあっという間に過ぎて、ネットカフェを出たのは日が暮れかかるころでした。
<明日は飛行船は飛ぶんでしょうかね>
飛ぶと思うよ。名古屋からホンダエアポートに戻るんだ。
<戻ると言いましても、どこを通るのかご存知なので?>
いや、でも……。
<でも?>
御前崎は通るんじゃないかなあ。
<自信は?>
ないけど。
御前崎を飛行船が通ってくれたら、青い海をバックに飛行船が撮れるだろうともくろむ運転手。
かくしてポンポが夜を明かしたのは、浜松から御前崎に通じる国道150号線にあるコンビニでした。
* * *

御前崎にて。
朝起きるなり、ポンポは御前崎に向かって走り始めました。
予定では、飛行船は弥富市の係留地を9時に離陸することになっています。ですから、飛行船が御前崎を通るとして、離陸時刻の9時に御前崎に着いていれば間違いなく撮れることでしょう。
《御前崎灯台》の標識に従って海を目指すポンポ。今朝も雲が低く流れていて青空が見えません。御前崎には8時過ぎに着きました。さて、気になる飛行船。この時点でどのルートを飛ぶのかという情報はありません。
9時になるのを待って確認のために『日本飛行船』に電話をした運転手はがっくりと頭を垂れました。
茶色オオカミが不思議そうに、
<どうしたんで?>
飛行船は御前崎を通らないそうだ……。
名古屋を出た飛行船は渥美半島を経て、浜松から島田、静岡、清水と飛び、沼津方面へ向かうのだそうです。
となれば御前崎にいても飛行船はいつまで経っても見えません。ゆっくりなようで意外に速く飛ぶ飛行船のこと。ポンポは急いで東に移動します。
<無理だと思いますからあきらめたらどうです? さっさと帰りましょうよ>
いいや、がんばる。
ポンポは国道150号線を離れて、東名高速の吉田ICへと向かいました。
<高速道路なんて、わたしゃ死にたくないですよ>
ミッレ・ミリアの帰りだって走ったじゃないか。


いざ、東名高速へ。
ポンポは吉田ICから静岡ICを目指して時速60kmで走り出しました。
天下の東名高速は今日もトラック銀座。後ろからあっという間にポンポを追い上げてきてはウィンカーを出して追い越してゆくトラック。そのなかでぴったり3メートル後ろにくっついて離れないトラックがありました。
<また煽られてるじゃないですか>
ポンポはこれ以上速く走らないの。
ついにそのトラックはしびれを切らしたのかポンポの左側すれすれのところを追い越してゆきました。思わず左にハンドルを切って路側帯に逃げるポンポ。
<あぶないですなあ。今度という今度は哀れ高速道路の鉄くずとなるかと思いましたよ>
過去に大火災事故のあった日本坂トンネルも無事通過。安倍川を渡って静岡に入りました。
<どこへ行くんです?>
日本平。
大学時代の四年間を過ごした静岡の町。地図を見なくても勝手が分かるのでありがたい。ポンポは日本平の坂道を2速で上りきり、運転手は山頂に立ちました。
清水港の青い海のバックに大きな富士山がそびえています。頂きには白い雪。やがて東の空に小さく飛行船の姿が現れ、静岡の町の上空を通過し、富士山の方角へと白い点になって消えてゆきました。
<ああ、やれやれ。これで飛行船の追っかけもようやく終わりだと思うとほっとしますよ>
茶色オオカミが日本平の駐車場で買ったミカンを食べながら言いました。
そんなにたいへんだったかなあ。
<そりゃもう、この小さなクルマの中で夜明かしすること6日間ですからね。今夜はようやく体を伸ばして寝られるってもんです>
じゃあ、今度は《一ヶ月》に挑戦してみようか。
そのうちポンポに寝泊まりしながら日本一周をするのも面白そうだと考える運転手です。そのうちスバル360キャンピング仕様車ができるかもしれません。
日本平を下りると早くも日が傾いてきました。日が暮れるのがずいぶんと早くなったものです。
ポンポはライトを点けて、再び国道1号線を東に向かって走り始めるのでした。

日本平の坂道を上る。

旧国道1号線富士川町。町並みの向こうに富士山が。

富士川のほとり。ここから家まで5時間かかりました。
