電柱男





半分泣きべそをかきながら壊れた自転車を必死に直そうとしてる少女を目にして
買いもの帰りのAKさんは、ほっとけない気持ちにかられて思わず少女に声をかけた。

「おじょうちゃん、だいじょうぶよ、おばちゃんが、ちゃんとしてあげるから!」







とりあえず傾いたサドルを戻して、フレームに触っている車輪を引き離し 

「さぁ、おじょうちゃん、これでどうかな、ちょっと乗ってみて!」

少女はやっと安心したかのように、
「おばちゃん、ありがとう。まだガタガタするけど、なんとか一人で乗って帰れそう」


「でも心配だわ、さっきそこの電柱の陰からサングラスの男がおじょうちゃんを見つめていたような気がするし、
もうこうなったら乗りかかった船、おばちゃんが家まで送ってあげるから。
それよか、おじょうちゃん、自分ちの電話番号教えてちょうだい。お母さんが心配しないよう携帯で連絡してあげるから



 「わたし、そんなの覚えてないよ。それにケータイって知らないもん」


こうして二人はガタゴトと少女の家へ向かったが、
AKさんは進むほどに、少女に、まわりの景色に、不思議になつかしさを覚えた。







やがて夕日も沈み、町並みに明かりが灯り、夕餉の匂いが鼻をかすめる。

少女は話しかける。

「おばちゃんって、とってもやさしいんだね、わたし、大きくなったら、おばちゃんみたいになりたいなぁ」

「困ってる人に、当たり前のことじゃない。 また、どっかで会ったら、おばちゃんに声かけてよ!」


そうこうしてるうちに、少女が叫んだ。


「おばちゃん、ありがとう!この先に見えるのが、わたしのおうち!」


AKさんは、それを見て、ハッと気付いた。これは昔の実家じゃない!
改めて少女の顔をまじまじと覗き込んだ。と・・すると、これはまぎれもなく幼い日のAKさん自身!

玄関を開けるのも、もどかしく、居間に飛び込んだら、昔のままの姉たちに、若き日の父母の姿が・・・そこにそのままんま。 

少女は、お母さんにしがみついて、
「このおばちゃんが、困ってるわたしをたすけて、ここまで送り届けてくれたの」

父母は
「これはこれは、どこのどなたさんがぞんじませんが、ご親切にありがとうございました」



・・・ヤダァ、わたしあなたの娘じゃないの!・・・と出かかる声をグッとこらえて、

「おじょうさんもこれでもう一安心、おじゃましました」とすかさずケータイ写真を隠し撮り、

「せめてお礼にお茶など!」の声を背にして家路へ急いだ。


ところが、来るときは少女についてきたからよかったものの、帰り道はさっぱり。 
二股道で迷っていると右の道の電柱陰でライターの火が3回点滅。

「そっかぁ、コ って合図なんだ」





その後も道が分かれるたびに、電柱陰の点滅に助けられ、やっとAKさんは無事わが家にたどり着くことができました。




わが家近くの電柱の暗がりに、ポッポッッポッッとライターの火影に、
あのサングラスの電柱男の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。




 慌てて家に駆け込み、先ほどの携帯写真をのぞいたら、そこには進入禁止の交通標識が写っているだけ・・・・
もしかして過去と現在の境目に迷い込んでしまったのだろうか?・・・・


それにしても、あの電柱男は、いったいストーカーなのか、それとも守護神・・・・だったのか?

そして最後の5点滅は
「オ。 もしかして?







9月生まれの方に贈る物語です、そう、あきさんとラベンダーさんに!  リンデ 2007.9.23




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 2007.9.30 アップ