冬の夜は早々に訪れます。

今夜も暖炉に火をいれて、窓から射しこむ月明かりを感じていると、懐かしい気持ちが膨れ、居てもたってもいられぬ情熱に突き動かされ、荷造りを始めてしまった兄・リンデ。

旅の始まりです。

古い地図を引っ張り出して見てみると、所々、千切れていたり、虫食いになっていたり。
頼りない地図に様変わりしていましたが、無いよりはずぅーとマシ。
ナオミ姫からの若葉色の手紙を上着の内ポケットにしまい、   
途中;古い友人にも会ってくるつもりで、手土産にワインと
菩提樹の葉を幾重にも紡いだ髪飾りをバッグに詰めました。

妹たちは寝入っているようです。
足音を忍ばせ階段を降りると踏み板がギシギシ鳴ります。
妹・レナが起きてしまうのではないかと気にしつつ玄関ドアを開けると、フクロウがホホォーと鳴きました。




月明かりの下を足早に歩みを進めていると、ぽてん、ぽてん、という音がします。
その音は、リンデが立ち止まると同じように止まり、また歩き出すと、ポテンポテンと音をさせて追ってきます。
後ろを振り向くと、なんと、リンデ家の門番・ハッチーでした。

「レナお嬢さんからいわれて付いて来ちゃいました。」と茶目っけたっぷりに言いました。


この地域は、トンネルを通るたびに気温が上昇する不思議な地域。
幾つものトンネルをくぐって行くと、かなり汗ばむほど南下したようです。

勢いで歩き続けて来たけれど、さすがのリンデもグロッキー寸前です。
ちょっと草叢で一休みと思いきや、「危ない!!」という声で我に返りました

「そこは毒蛇たちの棲みかですよ。気をつけなきゃ!」

そうハッチーにたしなめられたものの、しかし、この立て看板こそが、かつてのワイン好き魔女の新居への入り口だったのです。

「魔女に会って行こうな、ハッチー?!」



  2007.2.14 創作 ぷちろーど・あき