「ピンポ〜ン!宅配でーーす!割れものなのでご注意ください。」
荷物を受取ってラベルを見れば、「ワイン」と書いてある。
差出人は、空欄になってる。
「なんだか妙だなぁ〜」と訝しく思いながら包装紙を破り、中のワインを取り出した。
ワインはプチプチの緩衝材で覆われていて、メッセージが付いていた。
「あなたの生まれ年のワインです。 感謝の気持ちを込めて。 チュンより 」
このメッセージを読んでも、送り主に心当たりはなかった。
チュンという外国人の知り合いもいない。
それにワインの思い出というと、あまり良いものが浮かばなかった。

ワインを最初に口にしたのは、たしか20歳の誕生日祝いで、姉が連れて行ってくれたフランス料理店だったと思う。
4歳年上の姉は、大学も卒業し社会人として意気揚々としていた。
当時の姉は、お給料の一部を家に入れてはいたが、9割はお小遣いだったはず。
嫁ぐ気配もなかった頃で、貯蓄よりも青春を謳歌するために使い、ときには妹のために御馳走もしてくれたのだ。
かなり、イイ姉だと思う。
そのイイ姉が、20歳の祝いにロゼ・シャンパンを頼んでくれた。
「綺麗なピンク色だね・・・プワプワ泡がたって・・・」
細身のグラスは脚も長く、どこを持っていいものやら迷いつつ、グラスの脚の真ん中あたりを慣れない手つきで持ち、すぼまったグラスの縁にタコのように唇を尖らせて一口流し込んだ。
姉は、慣れた様子で飲み口を指先で拭い、軽くテーブルに置きながら言った。
「どう、美味しいでしょ?! これからは、たまに食事に来ようね。」
じつに妹思いのイイ姉である。
初めての発泡酒は、私の想像を超えていた。
アルコールだということを忘れていた私は、アッという間に飲み干した。
「あらっ、けっこう飲めるじゃない。じゃ、次は赤ワインを頼もうね!」
アルコールにめっぽう強い姉は、妹もなかなかイケる口だと誤解し、赤ワインを追加した。
姉の声が遠のいていく。
こってりした肉料理を口に運びながら、「口の中がサッパリするね」などと赤ワインもゴクリ。
冷汗が出てきた。
店を出るころ、「頭イタイ・・・・・・」と呟いた私。

苦い思い出のワイン。
思い当たらぬチュンさんからプレゼントされても、ちーーーっとも喜べなかった。
それよりも、嫁いだ姉を思い出していた。
「お姉さん、どうしているだろう・・・今年のお正月もワインやお酒を開けたのかな。」

冬の日暮れは早い。
カーテンを開けたらチラチラ雪が舞っていた。
ねぐらに帰るのか、数羽の雀のさえずりが聞こえた。
「いつも パンを ありがとチュン」
「エェッ、ま、さ、か・・・チュンって・・・ツルの恩返しならぬ、スズメの恩返し?」

    
2008.1.13 from あき(ぷちろーど) |
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