アプチ島

ほのかに薫る梅の香に鼻孔をくすぐられながら散歩していたら、くしゃみをひとつ。
あれっ、誰かが僕を思い出してる?
そうそう、思い出といえば・・・・・・

 みんな元気かなぁ〜   どうしてるだろぉ〜

         
        
アプチ島を旅したのは、20年以上も前のこと。
旅行バッグの中に、抹茶茶碗と茶筅をしのばせ、現地の人たちとの交流を楽しもう、とワクワクしていた。

アプチ島には、話し好きなアチ族と、無口なプチ族が暮らしていた。
その両族と交流し、巧く仲良くなれたら、宝箱について詳しく聞きたいというのが本音だった。

宝箱には、何が入っているんだろう。
おとぎ話じゃないんだから、箱を開けたらボワンと煙が出て、お爺さんになっちゃう、なんてコトもないだろう。


話し好きなアチ族は、寝る間も惜しんで他愛ない話題を延々と話して聞かせてくれた。
相づちをうつ首が痛くなるほどだった。

無口なプチ族とは、にらめっこ状態が続き、瞬きを忘れ、ドライアイになりそうだった。


宝箱のことを話題にできないまま、数日間が過ぎた。
僕の旅行日程にも限りがある。
意を決して、当たって砕けろの精神で、アチ族とプチ族の両族に思いをぶちまけた。



意外なことに、あっさりと宝箱のことを話してくれた。


「あったよ、、たしかに、アプチ島に宝箱がいくつも埋められていたんだ。だけどさ、ぜんぶ空っぽだったんだ。」

「煙だったって噂もあったよ。でも、本当のところは誰も知らないみた〜い。」

「本当にそんな昔話を信じて、ここまで旅してきたの?」

「いつ帰っちゃうんだよ。。。寂しくなるなぁ〜、ツマラナクなるなぁ〜。」



そんなコトを口々に言い始めたアチ族とプチ族に、情が移り始めていた。
人を疑うなんて考えもしない両族の純粋な気持ちが嬉しかった。

頷き疲れたことも、ドライアイになりそうだったことも、忘れがたい思い出。
アプチ島で見つけた僕だけの宝箱に、『
思い出』がいっっぱい詰まってる!


そう、そうなんだ! あの島の宝箱探しは、大成功だったんだ!
旅の交流にと持参した抹茶茶碗と茶筅の他に、たくさんのお土産で、心も旅行バッグもいっぱいにして帰って来られた。


     

アプチ島のみんなと約束したんだ。
明るい春の陽光のように、「
笑顔を忘れないでいようね。


 みんな、元気かなぁ〜  笑ってるかなぁ〜

                                     


おわり

                          2011.2.13(日)  作: ぷちろーど@あき