桜ちゃん 





桜ちゃんが、まだお母さんのお腹に居た頃、お父さんがTVでボクシングを観ていると、一緒になってお腹の中でボコボコ叩き、回し蹴りをして反応したんだって。
男の子が欲しかった両親は
「こんなに元気のいい子は、男の子に違いない!」と大いなる期待をしたらしいけれど、生憎、桜ちゃんは男の子の証であるポチッと可愛いシンボルを付け忘れて、女の子として誕生してしまった。

              


両親は少々ガッカリしたらしいけど、愛情を惜しみなく注いでくれて(たぶん)、姉妹たちからも可愛がられ、桜ちゃんは蝶よ花よと順調に育つはずだった・・・がしかし、長女の愛情はちょっとばっかし屈折して違ってた。

お姉ちゃんの名前は「緑ちゃん」。
桜ちゃんが大人なしくTVを見ていると、桜餅のように柔らかい桜ちゃんの可愛いホッペを、緑ちゃんはいきなりキュッと捻りを入れてツネルのを楽しみとしていた。
桜ちゃんは
理不尽な姉の愛に『痛い!』と大声で泣く日々だった
そう、長女の緑ちゃんの愛情は、かなり痛かった・・・。



次女の名前は夏ちゃん。
ひょうきんで、面白い事をして桜ちゃんとたくさん遊んでくれたけど、身体より頭が大きい乳児の桜ちゃんを笑わせすぎて、桜ちゃんはバランスを崩し、弾みでお風呂の焚き口に頭から転げ落ち泣き叫んだ。
これも、かなり痛かった・・・。



桜ちゃんが小学校に入学すると、不思議な体験をたくさんした。

知らない先生が、ニコニコしながらと寄ってきて
「こんにちは、緑ちゃんの妹ね♪」と話しかけられたり、通学路をお友達と歩いていると、夏ちゃんのクラスメートが何人も声を掛けてきて「へぇ〜夏ちゃんの妹ってお前かぁ〜」「えっ、どれどれ…ふぅ〜〜ん」と言いながら、ジロジロ見ては桜ちゃんの周りを一周して通り過ぎていった。
特に夏ちゃんの親友と名乗る『涼ちゃん』は、毎日のように桜ちゃんの前に出没し話しかけてきた。


涼ちゃんは、いつも忍者のように神出鬼没で、学校の高い塀に仁王立ちになっていたかと思うと、ペンペン草をペンペン鳴らしながら桜ちゃんに話しかけ、いわゆる優しいガキ大将・わんぱく盛りと言った感じがした。
でも、桜ちゃんにしてみたら、上級生のお兄ちゃんはちょっと怖かったから、小走りに逃げる毎日だった。

その涼ちゃんと思い出を共有するなんて、小1だったこの時はまだ分からなかった。
時は過ぎ、そんな桜ちゃんも小3の春休みを迎えた或る日のこと。
あの忘れられない事件は起きた。


つづく


2002.2.14UP