| 桜ちゃん |
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じつは、涼ちゃんはお父さんの仕事で二度転勤していた。 もともとは、桜ちゃんちの近所に住んでて、 姉の夏ちゃんと幼稚園も一緒で、3歳年下の桜ちゃんにも優しく、よく遊んでくれた。 ところが、桜ちゃんが3歳になる頃、他の土地に引越すことになり、数年後に、また桜ちゃん家の近所に戻ってきたのである。 だから、涼ちゃんは、桜ちゃんをよぉ〜く憶えていた。 でも、当時3歳の桜ちゃんは憶えていなかった…… |
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月日は流れ、桜ちゃんも小3になった。 常日頃、お姉ちゃん達の綺麗な自転車に乗ってみたかった。 お母さんに自転車に乗りたいと話すと、物置から小型の古く錆付いたボロ自転車を出してくれた。 「エッ、錆びてる〜」でも、嬉しかった。 初めは補助輪を付けて、電柱から電柱までを行ったり来たり。 「楽しいぃ〜♪」桜ちゃんは風を顔に受けて、気分はパラダイスだった。 次に、補助輪を外し、お母さんに荷台を持っててもらい、ペダルを踏んでみる。 ヨロヨロ、フラフラ…何度やってもフラフラ、ヨロヨロ。 桜ちゃんは粘り強く練習をした。 そして、ついにスイスイ滑るように乗れた! 心に羽が生え、春休みには友達のYちゃんと早朝から自転車遊びに興じるまでになった。 楽しい無我夢中の春休み最終日。 桜ちゃんはYちゃんとちょっぴり冒険がしたくなった。 この日は両親だけが早朝から出掛けることになっていた。 長女の緑ちゃん(中1)は、妹達の面倒をシッカリお願いされて、朝から責任感の塊になっていた。 そんな姉の真剣な想いをよそに、桜ちゃんはいつもより強くペダルを踏んでしまった・・・。 |
| 冒険は楽しい♪緑が目に眩しい春先である。 坂道だって何のその!行ったことの無い脇道、裏道にドンドン入って行く。ワクワクッ、ドキドキッ… 林の奥から小川のせせらぎが聞こえる。ちょっと自転車を降りて探検しよう! 「あっ、大きな貝ガラ見ぃ〜つけた♪」「綺麗な小鳥が飛んでいくぅ〜♪」 「お腹が空いたね、お家から持ってきたドーナツと飴、食べよ♪」 |
| こうして桜ちゃんは、どんどんお家から離れて見知らぬ土地へと引き込まれて行った。 行きはヨイヨイ、帰りは怖い…陽が傾き、来た道を戻って帰ろうにも、来た道が分からなくなっていた。 駄菓子屋のおばちゃんに、「ここは何処?」と聞いてみると・・・ 「えぇぇっーー電車で二駅先まで来ちゃってる!」「ゲゲッ…」とYちゃんと顔を見合わせた。 おばちゃんは、「大通りを行けば、間違いなく帰れるはずよ。気をつけて帰りなさいよ。」と言った。 |
さぁ〜て、トラックがビュンビュン走る大通りはガードレールも歩道もない。 来た時の楽しさの影も失せ、「日暮れまでに帰らなきゃ!」と今はひたすら帰りたい一心の二人。 でも、心の動揺でバランスが崩れ、桜ちゃんは大きく転んだ。 「ガチャン!! アッッッ、痛い。膝を擦り剥いた・・・サドルも曲がっちゃった〜」 半べその非力な桜ちゃんは、曲がったサドルを直せないまま走り、真っ直ぐ走れず蛇行して車道に出てしまった。 その時、後ろからは大型ダンプのクラクション「ブヮブブゥッーー!!」 桜ちゃんは怖くて立ちすくんだ。 遠くから涼ちゃんが見ているとも知らずに・・・ |
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2002.2.28 UP